生きちゃったのレビュー・感想・評価
全84件中、61~80件目を表示
もう鼻水たらして泣くしかない
“試された”感のある作品
ストーリーは重い。妻の不倫、そしてその後に起こる悲劇の数々。
これが現実なら、とてもじゃないが正気ではいられない。
仲野太賀、大島優子、若葉竜也が三者三様の立場で熱演しているので、
演技自体にも自然と見入ってしまう。
そう、最初は『この映画は、ずいぶん重いなあ』と思いながら見ていた。
しかし、途中で『あれ?この映画、重いテーマの中に、失笑程度のコメディ入れてきてないか?』
と思うようになる。
中華屋さんでの写真撮影とか、『大麻止めろ!』とか愛娘が飼っていた犬が彼女の体と同じくらい
大きいとか、あとライブ鑑賞シーンとか(そんな真顔で見るライブじゃないだろ!)。
ラストシーンも親友同士泣きながらの名シーンだが、なんか不器用な人物像が浮き彫りになっていて、微笑ましくも思えた。
随所随所にこう言った笑いのシーンがあって、
この映画は実は、絶望的な状況の中に笑いを入れたブラコメ要素もあるのでは、
と勝手に解釈していた。
タイトルを考えても『生きちゃった』はこのあらすじに対してちょっとチープで、
なんか人間臭い。
そしたら何か、この映画は観る側の解釈が試されているのでは、
と個人的には思った。
こういうの、嫌いじゃないです。
とっ散らかって、早送りしていて、うじうじしている。人生って俯瞰で見るとそうなんだろうけど…な作品です。
なんとなく気になってた作品ですが、重い腰がなかなか上がらすここまで観賞に至りませんでしたが、たまたま京都に行く機会があって、新しくなった「京都 みなみ会館」で観賞しました。
で、感想はと言うと、なかなか難しい。
物語の内容も暗いし、光が見えない。
主人公の厚久の性格をそのまんま表した様な感じでうじうじした感じがむず痒い。
いろんな事を散りばめながら、結局はそこに意味が無い。
正直合わないと言えば、合わないかも。
尺も91分なのに、間延びしている感じがしている。
きちんと説明しなくても観る側にある程度の解釈と判断に任せると言うのは分かるけど、必要以上に説明無しと言うのはどうなんだろうか?
仲野太賀さん、大島優子さん、若葉竜也さん、毎熊克哉さん、鶴見辰吾さん、嶋田久作さんとなかなかな布陣でキャスト陣は申し分無し。
だが、いろんな部分の伏線的なのを張り巡らしている様であっても最終的にとっ散らかったままに感じる。
主人公の不安定さを描き出す為にいろんな事を散りばめたにしてもどうなんだろうか?
もうそこに尽きるんですよね。
それがかなり思わせ振り過ぎて、3人がパピコを分け合う最初の道草のシーンがなんか雲って見えますw
肝心な所で物語を半年ずつに飛ばすのも正直謎。
全てを見せる・説明する必要性はなくても、半年の中でいろんな物がある筈なのに何故か描かない。
その割にいろんな面白いと言うか、良い描写があるだけに残念。
「愛を言えない男」仲野太賀さん演じる厚久は言えない・伝えない以上に何をやりたいのかが分からない。
不器用と言えば不器用。純粋と言えば純粋。
でも、肝心な事がきちんと伝えない、やらないのはそれは駄目としか言い様がなくて、厚久が悪い訳ではないが、厚久のだらしなさが小さな切っ掛けになっている。
自身の不器用さに相手が分かってくれるとは思ってないにしても、どうもそこに甘えている。
そこに「日本人だからかな?」もちゃんと伝えない事をそういう風に言ってしまうと元も子もない。
逆にそれ言うと自分の性格を原因を棚上げしている感じで観ている側は「それを言っちゃあおしめえよ」となりますよw
そんな不器用な人間を仲野太賀さんが熱演しているだけに、正直惜しい。
仲野太賀さんだから、こうなったのかな?
もっと演技力の乏しい役者が演じていたら、もう少し観る側に優しい脚本になっている様にも思えます。
「愛を聞きたい女」大島優子さん演じる奈津美は厚久の犠牲になっている様にも思える。
厚久の不甲斐なさに嫌気が指して、厚久と離れる所から、奈津美の転げ落ちる様が痛くも悲しい。かと言ってそんなに同情もなんか出来ないんですよねw
最初、奈津美を大島優子さんが演じていると言うのに全然気が付かなくて、エンドロールで気が付いたくらい。
良い意味で枯れた感じを醸し出しててw、個人的にはAKB時代の雰囲気から脱却している。
でも、ホントAKB時代から考えたらかなり身体を張った演技をしてます。奈津美の濡れ場やデリヘルのシーンを考えたら、かなりドキドキしますねw
「愛を見守る男」若葉竜也さん演じる武田は正直立ち位置と言うか、意味が理解し難い。
必要かと言えばそんなに必要じゃあない感じ。
武田が居る事で厚久の精神的支柱になってるが、厚久の甘えの元にもなっている感じ。
確かにいろんな要素の中で武田が居る事で膨らんでいる部分もあるけど、武田が居なかったらもう少しシンプルに厚久の物語も成り立ったのではないか?とも思えます。
石井裕也監督は様々は作品で良作を産み出しているのに、脚本を担当するとどうも…な感じです。
でも、監督のやりたい事や描きたい事は全く分からない訳ではないので、そこを整理する人がいたら大分変わってたのかな?
脚本補助とは言いませんが、そんな人を配置していたら変わっていた様にも思えます。
とっ散らかって、早送りしている物語。
人生って俯瞰で見ると結構そういう物なのかも知れませんが、それなら、厚久の性格をもう少しきちんとしておかないと幾ら映画と言えばかなりしんどいw
厚久の性格の面倒くささがこの作品の核なんですが、観る側にもかなり難しくもしんどい作品です。
そこをどう理解するかなんですが、個人的にはノリ難い作品です。
絶対に自分の意思を伝えないといけない時ってあるよ
ただただ、厚久・仲野太賀のたくさんの今まで言えなかった思いが溜まりに溜まってはちきれそうになって、もう言葉でもだし、涙からも溢れ出さずにはいられなくなってしまった、泣きの演技がたまらなかった。観てる方が嗚咽してしまった。
厚久の周りでいろんな不幸が続いたけれど、人はみんなそれぞれが何かを取捨選択して生きているわけだから、その道を選んだのもその人自身。誰のせいとかないんだよ。
ただ、彼が何か行動することで人を傷つけてしまうのが怖くて、何も言わない、しない事を選んだのは優しさではなく、自分の保身でしかない。生きるということは、お互いに傷つきあいながら、人を思いやることを学ぶんじゃないか。やはり、人は言葉で伝えなきゃいけない時があるんだと思う。
見方を変えれば、今までの出来事は厚久はすずちゃんのために生きなさいという意味だったのかもしれないし。
とりあえず、大切な人には生きている内にちゃんと思ってることは伝えよう。
あー、北村有起哉さん、人を虫ケラのように見下した演技最高でした!怖すぎでした。
映画館で観て良かった。
テーマは深い
感情に蓋をして相手と自分を思って話さない事はどうなんだろうか?
本音で話していたら拗れない部分もあったのではないか?
観客だけがこの話を知っている感じはテーマとしてはいいと思う
ただちょっと、状況を作り出すための強引な脚本とも
捉えられかねない感じがしたかな
まぁ、昨今の不倫話は芸能界からよく耳にするが
現実にあってもおかしくない話ではあると思う(途中まで)
不倫きっかけで落ちて行ったのは不倫された主人公に思えたのだが
不倫した元妻を囲む状況も悪化していく・・・
言わないことによって、事実を知らないことによって、悪化する物語
それがこの映画のテーマだったんだろう
しかし、原題直訳のタイトルの方が良かったんじゃないのかなぁ?
何故こうゆうタイトルになったのかが謎な感じがした
最後は流れを断ち切って語ろうとするが果たして断ち切れたんだろうか?
そんな疑念をなぎかけて終わっている
個人的にはキャストも演技も悪くなかったと思うが
カメラのブレが気になったな
室内のシーンとか据え置き出来なかったの?って聞きたくなる感じ
まぁこの監督さんの作品観たの初めてだったし次に期待かな
これは、、強迫性障害か発達障害の話なの?
これは評価が難しすぎる。
意味のわからないシーン、手持ちカメラで酔う、胸糞悪いキャラクター。
特に、手持ちカメラは本当に苦手。
必要なシーンもありますが、意味の無い室内のシーンで手持ちカメラは本当に酔う。
最後の15分くらいまでは、なんてつまらない映画なのかと思っていました。ここだけ考えれば★1。
最後の15分でようやく理解出来る話になっていきますが、それでも★2か3止まり、普通には他者に勧められません。
良いのは3人の演技。
なんとも醜い部分な、情けない部分など、3人とも素晴らしい。
ただ、演技が良くても、ストーリーと訳の分からないシーンは苦痛でしかない。
気になったのは、
・白線を踏んで歩くシーン
・どこか一点を見つめているシーン
・脈絡とは違う答えが返ってくるシーン
・酷いことがあっても泣けない
てす。
これは、強迫性障害か発達障害のような気がします。もし、このようなことが前提になっているなら、意味のわからないシーンも、コミュニティ不足で傷つく事も、ようやく全体が理解できます。
ここに思い当たると、最後のシーンが、より際立ちます。
自分にも、少しだけそういう「個性」があるので、一気に理解出来る話になる。
そうであれば★4、そうでなければ★2かと。
評価が難しすぎる。
たしかに晴れ晴れする映画ではないが、こういった日本的な映画があってもいいかな 不幸のかたちはいろいろなんだし
主役は誰なんだろう。
もちろん、太賀(厚久)なんだろうけど。
お兄ちゃんが謎なんだよね。
おそらく障害のあるお兄ちゃんとおじいちゃんとの三人の思い出が厚久にはとても大事なんだと思う。親は必死過ぎて、子供たちに寄り添うことができなかったから、おじいちゃんはキーパーソンだったのではないか?
幼い時にいろいろあると、感情が麻痺して、泣けない人格が形成される。それをアレキシシミアというらしい。自分の人生にリアリティーがなくなり、相手任せになる。嘘をついている訳ではないけど、他人からすると自分の意思が欠如しているように見える。
そんな彼が幼なじみの奈津美に同情して、婚約者を捨ててしまった。人生は思い通りにはいかない。婚約者も自分に自信がないタイプだった。奈津美役の大島優子の感情の吐露のしかたや表情はものすごく好演だったと思う。厚久が奈津美と別れたと知った兄の行動は完全に異常なのだが、両親はむしろ刑務所に入った長男に安堵しているようだった。ラーメン屋で記念撮影したり、刑務所が見える公園で親子三人で記念撮影したり。
唯一、武田の厚久を支える存在がぶれない。奈津美と厚久、武田(若葉竜也)の3人の中学時代、グリコのパピコ(コーヒー味)のエピソードが独特の悲哀をかもしだしている。二人は以前からなんでも他人に譲ってしまう性格なのだ。それが、デュオでのデビューは諦めたが、中国語と英語を習い、一発起業しようと行動を起こす。そのなかで、思ったことを言えない気の弱さを日本人だからだと自分自身を納得させる厚久。たしかにそのとおりかもしれない。
謎のお兄ちゃんは太賀のもうひとつの人格で二人で一人前のような気がした。
映画の感想は人それぞれで、そんなふうに思った人もいるということで。
演技はリッチ、話はチープ
予告編観て私の期待心を盛り上げたのは、 そのストーリーでも演出でもなく、演者のチカラだったのだなぁ、と本編鑑賞して痛感しました。
えー、
「なんじゃ、そりゃ?」
でした。
結局、何?全てを壊したのは
あなたのその特色なの?
本当の事を口にだすことができないって
障害なの?
性格なの?
なんなの?
それで二人死ぬか?
何故そーなの?
そこがわからんから、物語に厚みがない。
すごーく軽い種明かしなんだな。
てかさ、そこ描かないで何描くのさ?
薄い。重く見せよう、何かあるようにみせよう
ってカッコつけ演出と構成なんだよな。
そーいう人がいたら、そーなるわな。って
話なの?
なんなの?
ちゃんと背景決めてんの?石井さん。
俺がホントの事言えないから、言えるかな?
エーーーン(T . T)
ってなんだよ。ったく。
全くもって、演者の熱演、好演がムダに。
「言えない」が生む、悲劇
けっこう残酷なストーリーをあまりにも淡々と「半年後」で飛ばしながら見せられるから、途中まではちょっとついていけないな、、とあまり話に入り込めず。ぜんぜんしゃべらない太賀くんは何を考えてるからさっぱりわからないし。
でもメインビジュアルにもなっている最後のあのシーンはやっぱりインパクトあった。あそこで爆発するために今までモヤモヤさせられてたのかなー さすが太賀くん。
大島優子ちゃんもよかった!奥さんのことを大事に思ってる、ただそれだけのことを言葉にできなかったために起きる悲劇。この映画のテーマを体現する役だった。
予告や前情報はないほうがベター
役者も監督もテーマも好みで、これは映画館で絶対一人で!と思って観賞。
期待しすぎちゃったかな?『夜空は~』の観賞時ほどの心にくるものがないのは、
壮絶で泣けるんだけど省略された感があるからなのかな…?
短期間で脚本から撮影まで一気にやったとインタビューで見てたので、もう少し練ってほしかったなーという印象。
同じ子をもつ親としては見てられない悲しすぎる展開で、心が苦しくなる。
大事なテーマがその悲しみを越えてこない印象。
ラストの熱量に至るのに、いくつかチャプター飛ばしてないかい?とも。
想いを口に出せないけれど伝えなくてはならない時って人間にはあるよね、
どんなに濃い時間を過ごしたとしても、そうでないとしても、人は死んでしまえばそこに生きていたことすら本当か信じられなくなること。
そして失ってからではもうどうにもならず、言葉にしなくては相手には伝わらないこと。
そんなことがテーマと捉えた。
婚約者の告白、
お葬式の犬の影絵、
優子の無念。
ラスト。
どれも涙が溢れた。
あと、ライブでのれない人(抵抗ある人)、結構いるよね(笑)
子役のすずちゃんが自然体で抱きしめたくなる。
大島優子が殺される展開を、公式サイトのインタビューで明かしちゃうのはどうなのよ?
監督の伝えたいことを伝えるためには、お兄ちゃんが殺人しちゃわないといけなかったのかな?
なんで予告で大事なとこ全部見せちゃった??とも。
ラスト、おぉ~~ここで終わったか!!!と
すずちゃんと抱き合えたかな。エンドロールの音が明るく感じたので、きっと悪くない未来でありますように。
あとは、デリヘルはやってはだめということがよくわかりました(笑)
俺が泣けないのは、日本人だからかな?
凄い映画観たよ、凄いよ…
タイトルみて、どんな映画かは想像出来なかったのでまずそこから知りたくなった映画。
そして石井裕也作品は絶対観たいのでみにいきました。「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」の時も思ったけど、石井裕也監督は映画を撮るたび撮るたび、新しい映画、それもすごく魅力的な映画を観せてくれるなぁと脱帽する。石井裕也っぽさはあるんだけど、日常的な生活やリアルな感じを撮るのめちゃくちゃ上手いんだけど、登場人物一人一人、なんか全く新しい感じがする。この映画も超凄かった。
フラットな気持ちで思い出すと、割とトラウマ映画寄りの内容ではある。今かなり自由に気ままに暮している私だから百歩譲ってこんな感想を書けるけど、家族スタイルや経験、どんな人生歩んでるかによっちゃこの映画は辛過ぎて観れない人も多いだろうな…。そう簡単に「あ〜良かった、良い映画だった」という感想を人に言いづらい展開と内容ではあった…んだ…けど…映画として作品として、素晴らしいものだった…。
ストーリーは言わないとして、俳優陣良かった。太賀も若葉竜也も大島優子も他のキャストも全員レベルが…。作品の空気感とか俳優陣の演技力が桁違いに良いとそれだけでまだ何も起きてなくても引き込まれる映画にもうカテゴリーされちゃうね。ストーリーと相まって、人間の感情や考えって、当たり前だけど喜怒哀楽だけじゃあないんだなと痛感させられる。繊細。繊細過ぎて、何かが1ミリでもズレたり、小さなすれ違いや勘違いで、次に何が起こるのか…数日後に、半年後に、5年後に、何が起こるのか分からないね。今年はそんな事考えたり反省したりする事が多い年ではあったし(私が)、この映画見て更にその思いが強くなった。教養がすごいわ…。
話の展開はかなり抑揚があるなあと思っていたけれど、ラストシーンまでためてためて作った空気感のおかげで最後、頭がパーンなったというか…映画の魅力が最大MAXになった、限界値超えた。
太賀・若葉・大島は幼馴染みの設定。
色々展開が凄すぎる、過激過ぎる、信じられないぐらい辛過ぎる、でもある意味現代の闇を如実に描いてるような気もするストーリーなんだけど、私にとっての一筋の光は厚久(太賀)と武田(若葉)の関係値だった。それがあったから、この映画を最後まで観れたし、厚久が今後の人生どんな風に過ごすのか考えようとするだけで怖いんだけど、武田がいることが変な話ほっとする…ような気がする。
あと、やっぱり俳優って演技が上手いと勿論すっごく良いんだけど、その人の生まれつきもってる人柄や人生から滲み出る何かが演技にも雰囲気にも出て来る瞬間鳥肌がたつぐらい感動するなぁ。と思いました。
そういう意味では、物語や悲しみに対する涙だけじゃない涙がぼろぼろ出て来る時間だった。
もうその役の人間が取り憑いた人達しか出て無い映画であり、そういう人達を生み出す脚本と監督とスタッフ・俳優だったんだろう。
凄いもん観たなぁ…。凄い良かった。
人生は辛いことが多すぎるから
なんか予想外にどの人物にも共感出来ず
見ていて色々とツッコミたくなる内容。
ま、そういう映画もたまには良いんじゃないかな?
大切な人に言いたい事が言えない主人公·····
人の気持ちとか、上手くいかなくてどうしようもない感情とか、目に見えない空気感とかを想像して相手に寄り添える大人になれる様に、こういう作品を観て色々意見言うのも良いよね。
爺ちゃんて、本当に居たのかな?
なんて、普通は思わない様な事だけど、
思い出と想いが入混ざって
記憶と記録が混在して
リアルとバーチャルの境も分からなくなってく
そんな時代なのかな?って、、
仲野太賀さん、若葉竜也さん、大島優子さん
感情あらわな演技で素晴らしかった
共感こそ出来ないけど、泣いちゃいました。
脚本は別の人にまかせた方がいいんじゃ
どんな映画なのか良く解らず観てたんだけど、最後の方にきて『愛する人に本当の気持ちを言えなかったらどうなるか』って映画なのかなって思った。答えは『みんなが不幸になる』なんだけど。
説明を極力排してるんだよね。仲野大賀がちゃんとコミュニケーション取らないから、小さなすれ違いから悲劇が連鎖してくんだけど、そこの事情の描写をほとんどやらないの。
この脚本から登場人物を演じろって言われた役者は大変だったろうなあ。
それでも大賀と若葉竜也はなんとかしちゃうんだよね。役者すごい。
大島優子はしんどそうだった。そもそも元気あふれる女の子の役が向いてるから、少し疲れた影のある役が難しいよね。さらに説明がほとんどない、この人物の心情を解らせるのは、誰がやっても超難しそうだし。
まあそんなわけで、最後まで説明は入れずにやってくんだけど、それでもなんとなく観ちゃうのは、やっぱり監督すごいなと思った。
「でも脚本は別の人に任せた方が」と思ったんだけど、《夜空はいつでも最高密度の青色だ》も石井監督が脚本書いてるんだね。それなら、やれるはずなのに、この作品はちょっとムチャという気がしたな。
いつか彼らの歌を聴いてみたい
太賀改め仲野太賀が演じる山田厚久が何度か言う「日本人だからかな」という台詞が印象に残る。「自分でも分からないんだ」でもよかったところを敢えて「日本人だからかな」にしたところに、本作品を紐解く鍵がありそうだ。
主人公の厚久(あっちゃん)は「本当のこと」が言えない。「本当のこと」とは文字通り嘘偽りを振り捨てた純粋な本当のことであり、本当のことを言えないのはあっちゃんの考えでは「日本人だからかな」ということになる。
「本当のこと」は大抵の場合、出来れば言いたくないし、出来れば聞きたくないことだ。言えば誰かが傷つくし、自分の立場も悪くなるし、不利益を被るかもしれない。誰にも害がないとしても、好きだとか愛しているとか歯の浮くような台詞はスケコマシみたいで言いたくない。あっちゃんという人間はそうなのだ。少なくとも日本語では言いにくい。今は好きでも明日になれば好きではなくなるかもしれないし、来年はもう愛していないかもしれない。死んだじいちゃんが本当に生きていたという実感さえあやふやだ。時が流れれば人は変わり、忘れていく。
あっちゃんは夫だ。奈津美のことは大切に思っている。好きでも好きでなくても、愛していてもいなくても、妻と娘のために大きな家を立ててやりたい。幸せな暮らしをさせてやりたい。それが大切に思っているということだ。しかし家を建てるほどの仕事はしていないし、高校時代の夢もまだ叶えられそうにない。いい加減な約束はせず、時が来たら黙って家を建てよう。それがあっちゃんの矜持なのだ。
しかし奈津美には分からない。夫のあっちゃんに好きだと言ってほしい、愛していると言ってほしい。大事に思っているならそう言ってほしい。自信のない奈津美は自分は愛されていないのではないかと常に疑心暗鬼だ。あっちゃんの無言の思いは奈津美には決して伝わらない。そして口先だけのクズ男に人生を投げ出してしまう。
奈津美は洞察力と想像力が乏しく、ものごとの表面だけしか見ることができない。無口なあっちゃんの真意は理解できないし、あっちゃんの苦しさも想像できない。自己中心型の性格で自分だけが苦しんでいると思っている。被害者意識だ。自分が苦しいときは人も苦しいということが分からない。自分を苦しめたのはあっちゃんで今度はあっちゃんが苦しめばいい。しかし人のせいにしているうちは人生は浮かばれない。奈津美は堕ちていく。どこまでもどこまでも堕ちていく。
奈津美の人生を引き受けると決めていたあっちゃんは、大きなダメージを受けてしまう。しかしあっちゃんはそれでも泣き言ひとつ言わない。ただ黙って耐える。すべてを見てきた親友の武田にはあっちゃんの気持ちが辛くて仕方がない。全部を投げ捨てて逃げ出せば楽になるのだが、それができないあっちゃんの性格が武田には辛い。辛いが、あっちゃんがそういう性格だから友達でいたのだ。武田にとって世界で一番信用できるのがあっちゃんという男なのである。
男と女の間だけでなく、人と人との間には深くて暗い河がある。「本当のこと」を言ったとしても分かりあえるとは限らない。寧ろひとりひとりに個別の「本当のこと」があるから、それを言ったとしても関係が悪化こそすれ、理解されることはないだろう。だから人は「本当のこと」を言わない。
誰もが他人とは違う人生を生きている。だからたとえ家族であっても、たとえ愛し合っていても、究極の部分では分かり合えることはない。それを知った上で人と付き合う。それを「粋(いき)」という。「粋」とは諦めを前提とした精神的な余裕のことだ。それをあっちゃんは「日本人だからかな」と表現する。芭蕉の「わび」や「さび」に通ずる精神性だから、日本人に顕著に表れる面もある。あっちゃんの「日本人だからかな」は当たらずと言えども遠からずなのだ。奈津美にあっちゃんの「粋」は伝わらなかった。
役者陣はみんな好演だと思う。仲野太賀はすべての感情を内に秘めてまるで禅問答のような表情のあっちゃんを熱演し、大島優子は性格が壊れて堕ちていく奈津美を思い切りよく演じていた。武田を演じた若葉竜也の演技も秀逸。
将来の海外公演に向けて英語と中国語を勉強するあっちゃんと武田。もう高校時代とは違う。しかし熱は失っていない。あっちゃんと武田が人生の試練を経てどのような曲を作るのか。自分も映画の世界に入って、いつか実現するかもしれないコンサートで彼らの歌を聴いてみたい気がした。
どうしちゃった
すべてが記号に見えた。途中差し込まれるふざけた描写が良くも悪くも石井監督らしい作風なんだろうなと。
よくわかんないテレビ番組に出てる、変なアーティストのライブに行く場面がそれだろう。
主人公の父母と、兄の鑑別所に行く場面もオフビートさが前面に出てきて、作品全体の主題やラストシーンの熱量からぜんぜんあわなかった。
大島優子はよくなかった。
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