劇場公開日 2020年6月12日

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「(古き良き)アメリカ。」ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語 ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0(古き良き)アメリカ。

2020年6月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ストーリーが一貫してあるわけではなく、オムニバス形式のようになっているので1回見ただけでは分かりにくい所がある。良さそうな作品だが今一つ納得できないので2回見たらようやく全体が分かった。四姉妹の個性の違いが丁寧に描かれていると思うが、映画の短いシーンだけではやはり伝わりにくい。原作は未読だがおそらく四人の人間性と言えるものを深く掘り下げてそれが魅力になっているのだと思う。小説のファンならすぐあのシーンだと分かるのだろう。映画では深みは表現しにくいにしても、一人一人が本当に愛おしくなるように描かれている。四人が反発しあいながらも相手を思いやる仲の良さにはじんと来る。
「若草物語」は仲の良い姉妹を描いた愛情の物語であるとともに、南北戦争時代のアメリカを描いた風俗小説でもある。なんとなく「古き良きアメリカ」と言いたくなるが、社会は差別や矛盾で満ちていた。マーチ家の慈善活動も崇高な行為であるけれど、今の時代から見ると「貧しい者」に対する「裕福な者」(マーチ家は裕福ではないけれど)の優越感の裏返しの「施し」ととられかねない。有色人種への差別は根強いし女性の社会的地位も低すぎる。主人公のジョーは当時は異端だろうけれど、抵抗にもめげず強い意志で道を切り開こうとする姿は本当に気持ち良い。物語の中(?)だけど幸せになって本当に良かった。

ガバチョ