栄光のマイヨジョーヌのレビュー・感想・評価
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臨場感200%の感動スポーツドキュメンタリー
この映画を観て、ロードレースもオージーも大好きになった。
勝利を自分だけのものにせず皆と分かち合う姿勢、絶望的な負傷や不運にも負けない不撓不屈の精神、遊びゴコロに満ちたファンサービス、外国籍の選手も入れることでかえって強くなったとコメントする心の寛容さ。実話とは思えないドラマチックかつ感動的な物語が臨場感あふれるレース映像とともに展開され、大画面での鑑賞満足度は満点💯です。
自転車を知らなくても楽しめる
私は趣味でロードバイクに乗ってるので色々興味深く楽しめた。
自転車を知らなくても、F1映画みたいに娯楽映画としてもおもしろくできてると思う。
ヨーロッパの様々な俯瞰の風景がどれも美しく、旅行をしてるみたいだった。
ドーピングとかのロードバイクのダークな話題は一切出なくて、ポジティブな明るく楽しい内容で一貫していて良かったと思う。
ライダー一人一人がドラマチックな背景を持っているんだなと思った。
そして最後に猛烈にオーストラリアに行きたくなった!(笑)
【新参のプロサイクリングチーム”グリーンエッジ”の選手・スタッフの結束していく姿を数々の感動的エピソードを絡ませながら描き出す。】
原題:”ALL FOR ONE”
サイクリング・ロードレースって個人競技じゃないの?と思った方がいるかもしれない。
が、長距離をチームで走るサイクリング・ロードレースではエースを(総合タイムで)勝たせるために、様々な戦略が取られる。
分かり易いところでは、先頭を走る選手が順番に変わりながら走る戦略。所謂一番披露する先頭をエースを除いた他の選手が交代で務めるという訳である。
今作は、オーストラリアで2011年に結成された”グリーンエッジ”が年々力をつけ、本場ヨーロッパチームに肉薄していく姿を様々なエピソードを絡ませて描いている。
それにしても、時速65キロで走るツーリングレースの危険さが、随所で描かれる。(私は、安全のため、40キロを上限としている・・・。)
ナポレオンも行進した、石畳の道を疾走するシーンは圧巻である。凸凹なので、転倒者続出。流血、骨折も茶飯事である。
又、選手たちを支えるコーチたちの存在もきちんと描かれているのも特徴的だ。
だが、今作の魅力はチームが年を重ねる毎に、3人の選手に順番にスポットを当てた作りであろう。
1.エステバン・チャベス(コロンビア出身)
グリーンエッジに所属する前、大怪我をするがプロサイクリストへの夢を諦めきれず努力し、グリーンエッジにスカウトされるも、異国人なので言葉が通じない中、笑顔を忘れず、ついに、ジロ・ディ・ロンバルディアという歴史あるレースで優勝する。
彼の両親が涙しながらインタビューを受ける姿は忘れ難い。
2.サイモン・ゲランス
プロになるには難しいと言われていたが、厳しい練習を積み、とうとうツールド・フランスでマイヨジョーヌを獲得。
が、印象的なのは彼が、ツールド・フランスで同僚のインピーにマイヨジョーヌを譲る場面だろう。それまで、ずっとチームの屋台骨として頑張ってきたインピー。戦略的な面もあったのかもしれないが、今作では数少ない漸く巡ってきたインピーのチャンスをサイモンが汲んだように描かれている。感動的なシーンである。(実際、口の悪いコーチは”ちょっと軽く”インピーを観ていた節がある。)
3.マシュー・ヘイマー <彼のシーンは今作の白眉であると思う。>
ずっと、チームをサポートする(先頭を走るとかね・・)アシストの立場で頑張ってきた彼が、レース前腕を骨折してしまったため、家に戻りトレーニングを地道に積んできたレースに出場し、”奇跡の優勝をする場面”。
コーチたちも含め皆で抱き合い大喜びをするシーンはこちらまで貰い泣きをしてしまった程である。
<新参のプロ・サイクリング・ロードレースチームが何故、短期間であそこまでの成績を残すことが出来たのか。
それはこの素晴らしいドキュメンタリー映画を観れば直ぐに分かる。
自転車を愛する者は必見。
スポーツを愛する人であれば、何らかの感慨を持って映画館を後に出来る作品である。>
「パリ〜ルーベ」に勝つということ
断片映像のつぎ合わせによる、「オリカ・グリーンエッジ」というチームの“宣伝作品”と言って良いと思う。
2017年という少し前の映画で、今はチーム名が変わったようだが、オーストラリアではUCIライセンスを与えられた初めてのチームだという。
S.オグレディや、コメンテーターとしてR.マキュアンといった懐かしい顔が出てくる。しかし、チームが違うために、C.エヴァンスなどは完全に黙殺されている(笑)。
なお、別府史之は一瞬だけ映るが、全く出てこない。
この映画は、一シーズンを通して、チームに密着するような作品ではない。
原題は「All for One」であるにもかかわらず、“エースとアシスト”という戦術の基本や、“逃げ集団とプロトン”といった戦略的要素を語ることもない。
そういうサイクルロードレースにおけるディープな要素は一切排除して、ひたすら人情面に訴えかけてくる、“感動”モノを狙った映画だ。
バックステージの話も、監督やスポーツ・ディレクターのコメントや、ユーチューブへ投稿した、といった話が中心だ。
映画は、チームが始動してまもない2011年から始まり、2016年で終わる。
取り上げられるレースは、“良いとこ取り”というか、ハイライトとなるものがほとんどだ。だから、時間がポンポン飛ぶ。
中堅チームであるため、“グランツール”の総合優勝を狙うのではなく、ワンデイ(1日)レースや、“グランツール”のステージ優勝を狙うのが基本。
実際、この映画もそうなっている。
チーム始動後、いきなりS.ゲランスが勝利した2012年の「ミラノ〜サンレモ」。
フィニッシュラインにチームバスが突っ込むという大失策の後で、チームTT(タイムトライアル)で勝ち、4ステージにわたって“マイヨ・ジョーヌ”を保持した「ツール2013」。S.ゲランスとD.インピーの2人で分け合う。
E.チャベスが、前半にリーダージャージを取った「ヴエルタ2015」。大怪我を乗り越えた後の勝利。
そして、クライマックスは、M.ヘイマンが勝った2016年の「パリ〜ルーベ」だ。自転車人生で、たった2回しか優勝したことがなかった男のビッグタイトル。
「新型コロナウイルス」の影響で、土曜の新宿ピカデリーは、いくらか閑散としていた。
この映画は、感染の危険を犯してまで、観るべき作品では全くない(笑)。
しかし自分は、クライマックスでは、不覚にも涙がこぼれてしまった。
この映画が良かったからではない。
クラシック・レースの中でも、最も過酷な「パリ〜ルーベ」に勝つということの素晴らしさに、胸が一杯になったからである。
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