「その先で見出す思い」WAVES ウェイブス 室木雄太さんの映画レビュー(感想・評価)
その先で見出す思い
公開延期後に優先順位が下がってしまい、とうとう見逃したと諦めかけていた本作を、そのまま観ずに終えていたら一つの大きな感慨を享受せぬままだったという事であり… 今年の期待作、やはり反響が大きい話題作だけの事はあった訳だ。
兄と妹、物語のA面とB面、主人公が異なる構成が、新たな別視点で後半を没頭させられた要因だ。喜怒哀楽全てに、独特な輪郭を浮かび上がらせる演出と特徴的なカメラワーク、楽曲の選定と散りばめ方や効果的なフォーカスにセンスが光る。トレント・レズナーがスコアを担当していた意外性、同時に振り返ると妙な納得も植え付けられた訳であり、やはり彼の仕事は秀逸で幅が広い。登場人物や土地柄の絡みで、現代を代表するラッパーの楽曲使用は、すんなりとフィットする事に納得も、個人的にはAnimal Collectiveなど、他所の作品と一味違うラインナップが新鮮だった。絶頂から一転、深い哀しみを内包した作風で、ここまで多様性ある音楽を選び抜いた監督の思惑に脱帽し、全く新しい感動へと結び付く所以である。是非とも、LPでアルバムが出る事を期待したい。
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