劇場公開日 2021年10月30日

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「老後生活への一つの提案」老後の資金がありません! おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0老後生活への一つの提案

2021年11月1日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

単純

幸せ

予告で見たコミカルな雰囲気にひかれた、小学生の甥っ子を連れて鑑賞してきました。小学生でもわかるシンプルなストーリーのおかげで、甥っ子も楽しめたようです。でも観客は、老後の資金が現実的な悩みと思われる、中高年層が圧倒的に多かったです。

物語は、夫と二人の子供と平凡に暮らす篤子が、義父の葬儀、娘の結婚、義母との同居、夫の失業と、次々と押し寄せる金銭問題に奮闘する姿が描かれます。決して他人事ではないところが、見る者の共感を誘います。奇しくも半年前に父を亡くした自分も、その葬儀費用の高さに驚きました。友近さんほどではないにしても葬儀屋の言葉巧みな誘導、父への思い、多少の世間体から、なかなか「安物でいいや」という気になれなかったのも事実です。もっとも、お経代だ戒名代だとほぼ言い値で何十万円とふっかけてくるお坊さんのほうが悪質な感じがして、若干の殺意を抱きそうになったのは秘密です。

主演の天海祐希さんは、きれいすぎて生活苦が伝わってこないのは難点ですが、抜群の存在感とコミカルな演技で笑いを誘います。もう一人のキーマンである義母の芳乃を、草笛光子さんが貫禄の演技で魅せてくれます。特に、終盤の大団円とも思われるシーンでの二人の演技には目頭が熱くなりました。脇を固める、松重豊さん、柴田理恵さん、若村麻由美さんらも、実におさまりのいい役どころで、持ち味を発揮していたと思います。

それにしても、老後の生活は確かに心配です。作中では、2000万円どころか4000万円も必要だと言っており、目の前が暗くなります。そんな悲観的な未来しか見えない人たちに、本作は現実的な一つの老後生活生を提案しているような感じがしました。見栄や形式、既成概念や固定観念にとらわれず、自分なりの幸せを見つけ、大切なお金はそこに使うのがよいのかもしれません。とはいえ、やはり老後の生活は悩ましいですね。

おじゃる