劇場公開日 2020年2月7日

ロニートとエスティ 彼女たちの選択 : 映画評論・批評

2020年2月4日更新

2020年2月7日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにてロードショー

どんな生き方を望むのか、それを貫く覚悟はあるのか? 普遍的な、私たちの物語

良い映画は普遍的だ。遠い昔、遥かな未来、はたまた宇宙の果ての出来事を描いていても、そこに私たちの物語が見出せる。「ロニートとエスティ」もしかり。ロンドン北部のユダヤ教超正統派のコミュニティという特殊な宗教的環境を背景にしているが、閉鎖的な社会の掟に順応できない人間の葛藤をみつめたドラマは、どの時代、どの場所のものであってもおかしくない。たとえば、コミュニティで生まれ育ったロニート(レイチェル・ワイズ)とエスティ(レイチェル・マクアダムス)の若き日の恋の逸話は、ケニア映画「ラフィキ ふたりの夢」とシンクロする。

戒律に反する同性愛が発覚したとき、ロニートとエスティは対照的な道を歩む。ロニートはコミュニティを出てアメリカで自立。一方のエスティはコミュニティに残り、次期指導者と目されているドヴィッド(アレッサンドロ・ニヴォラ)と結婚する。そんな2人の運命が、ロニートの帰郷によって再び交錯。そこから試練が始まる。

ロニートは、排他的なコミュニティからよそ者扱いされることに耐えなければならない。エスティは、再燃したロニートへの愛と現実の生活の狭間で苦悩する。が、2人にとって、その試練は、自身の本心を見直すチャンスにもなる。いま自分は幸せなのか、どんな生き方を望んでいるのか。そして、その生き方を貫く覚悟はあるのか。自分が何者かを明確にし、人生の立ち位置を再確認する。セバスティアン・レリオ監督の前作「ナチュラルウーマン」で主人公が立ち向かった問題に、ロニートとエスティも向き合うのだ。

殺風景という言葉が似合う寒色系の映像は、コミュニティの抑圧された空気を雄弁に物語っている。その色合いと呼応するように、ロニートとエスティ、そしてドヴィッドの人生の転機をみつめたドラマのクライマックスも、「映画映え」を狙った劇的なものにはならない。なぜなら、これは通過点に過ぎないから。これから幾度も転機を迎えながら、彼らの人生は続いていくだろう。私たちの実人生が、特に劇的でもない節目を重ねながら続いていくように。そんなふうに感じられる映画は、良い映画に決まっている。

矢崎由紀子

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