「第一発見者は容疑者か?冤罪か?」リチャード・ジュエル クララさんの映画レビュー(感想・評価)
第一発見者は容疑者か?冤罪か?
1996年のアトランタ爆破テロ事件の実話をもとに描いたサスペンスドラマ。1996年、五輪開催中のアトランタが舞台。監督はクリントン・イーストウッド。
警備員のリチャード・ジュエルが、公園で不審なバッグを発見する。その中身は、無数の釘が仕込まれたパイプ爆弾だった。
警備員の仕事を一生懸命に行い、不審物発見で爆弾テロを未然に防ぎ、一躍英雄視されたのもつかの間、FBIによる、第一発見者が怪しいという無根拠かつ強引な捜査と、メディアによる犯人であるかのような報道。前日まで英雄だと持て囃していたテレビコメンテーターが、今日はあっさり「怪しいと思っていた」と手のひらを返した。そしてアメリカ全国民がメディアに踊らされ虚偽の報道を鵜呑みにしてしまう。
これは、まさに現代社会の負の連鎖。
マスメディアとSNSによって、出来事が虚偽でも事実でも関係なく、驚異的な速度で拡散されてしまう。この意味を上手く取り入れ巧みな技でメッセージ性も高い。90歳のイーストウッド監督の恐るべき時代感覚には脱帽だ。
「第一発見者が疑われるなら、警備員の誰もが不審物を見つけても通報せずに、自分だけの身を守り逃去るのが得策、ということになってしまう」というジュエルの言葉が胸に突き刺さった。
コメントする