劇場公開日 2020年1月17日

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「規律を重んじて慎ましく暮らす心優しい男の受難劇(滞納はご愛嬌)」リチャード・ジュエル ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0規律を重んじて慎ましく暮らす心優しい男の受難劇(滞納はご愛嬌)

2020年1月25日
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鑑賞方法:映画館

テロの爆弾を発見した警備員リチャード・ジュエルは、FBIの杜撰な捜査で、容疑者にされてマスコミからも疑われる実話。

イーストウッド監督の相変わらずの巧さ。音楽も必要最低限にしか奏でないので、最初は淡々と進行しながら、爆弾テロの予感を徐々にサスペンスとショックに向かって、巧みに誘導してゆく演出で、観客の心掴み、そこからジョエルとワトソン弁護士との友情も抑制されたタッチで描く。

リチャード・ジュエル役を演じる、ポール・ウォルター・ハウザーが、規律を尊んで、うざがられ気味の心優しい男を、ハマり役で好演。

ポール・ウォルター・ハウザーは、「ブラック・クランズマン」KKK団員や「アイ・トーニャ」の妄想ニートと同じ階層の問題のある人物をタイプキャストを演じていた人だか、風貌が同じで、思想や性格は全く違う。

その真っ直ぐな人の良さと優しさ故に、FBIの連中から罠にかけて、証拠偽造にハマりそうになるなどの危うい面やあまりの重圧に胸を押さえて苦しむ姿がサスペンスを呼ぶ。

恐ろしい事に、リチャード・ジュエルがその見た目や環境や性格の為に、疑惑をかけられても仕方ないとの意見を一部のレビューで拝見して暗澹たる気持ちにもなった。
自分の価値観のみで、イケて無いから冤罪かけられてやむえないと考えは、パワハラやモラハラをしてる人達と同じで、その自分の加害性を全く理解できないのであろうか?この映画はその危険性を訴えているのに。

そういえば、映画のFBI捜査官も最後まで自分達の過ちを認めずにいた。

FBIの捜査も、「羊たちの沈黙」などで、認知された特定プロファイルで、第一発見者のリチャード・ジュエルを、物的な証拠もなく容疑者と認定して追い詰めるサマは、本当に恐ろしい。

ワトソン弁護士や記者が、出来る範囲の裏付けもしないとは!天下の連邦警察とは!杜撰すぎる。

6年後に再会したジョエルとワトソン弁護士の素っ気ない雰囲気なのに絆を感じる、ラストも良かった。

ワトソン弁護士役のサム・ロックウェルも「スリー・ビルボード」の保安官とは、うって変わって頼りになるスニッカーズが好物な弁護士好演。

アメリカでは、内容が一方的だ!などの批判もあるし、地味な作風の良作だが、個人的には「アメリカン・スナイパー」にあった戦場でのスナイパー同士の対決などのケレン味もスパイスとして欲しかったと思う。

例えば、リチャード・ジュエルの長距離射撃の腕を生かして、彼を疑う記者のピンチを救う場面があるとか。(その時に、ジュエルがハワード・ホークス監督の「ヨーク軍曹」と同じ仕草で照準をつける場面を盛り込むとシネフィルが嬉ションします)
または、テロリストに爆弾を仕掛けられたスニッカーズを食べようとしたワトソン弁護士に、ジュエルが気付いて、投げ捨てるとテロの犯人のいる場所で爆発して、それがきっかけになり逮捕されるとか。
どうですか?ダメか?

ミラーズ