「日本の今だったら」リチャード・ジュエル 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)
日本の今だったら
1996年のアトランタ五輪中の爆破テロ事件を題材にしたイーストウッドお得意の「事実に基づいた」物語。「ハドソン川の奇跡」に続いて、ヒーローともてはやされた一般市民が、公権力やマスコミによって、疑惑の対象にされていく。
たぶん実際にそうだったのだろうが、法執行官に対する共感から、FBIに迎合的な態度を示す主人公には、ハラハラするし、かなりイライラする。チャラい感じの弁護士役のサム・ロックウェルは、すごくいい味わい。母親のキャシー・ベイツが息子の無実を訴えるシーンが一番のハイライト。
枝葉を落として、簡潔、淡々と描く熟練の語り口だが、ハドソン川が90分で描いたのに比べると、薄味の割には2時間強はちょっと長い。
見終わって思ったのは、これが日本の今だったらどうなるだろうということ。FBIの任意捜査(しかも、騙して)の時に「弁護士と話をしたい」と言って、たまたま連絡を取っていた弁護士のアドバイスがあったから、何とか次につながったが、弁護士が一般市民にとって身近でなく、捜査機関も接見を制限したがる日本の現実(例の人のことも思い返しながら)からは、物的証拠もなしに逮捕、起訴、裁判へと持っていかれることもあり得る気がする。(かつての冤罪事件がまさしくそうだったように。)
メディアスクラムも、かつてよくテレビのワイドショーで観たものだが、今だったら家に押し寄せることがなくても、SNSで一般市民が好き勝手に拡散するんだろうね。
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