劇場公開日 2020年1月17日

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「90歳の巨匠が現代社会に一石を投じる! 今だ衰えを知らぬ制作意欲に感涙。。。」リチャード・ジュエル リオさんの映画レビュー(感想・評価)

4.590歳の巨匠が現代社会に一石を投じる! 今だ衰えを知らぬ制作意欲に感涙。。。

2020年1月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

今年は早くも 「パラサイト」 一択かな~と思いきや、ところがどっこい巨匠健在 !!

正直、 昨年の「運び屋」が名作すぎたばっかりに、「運び屋」はある意味でイーストウッドの集大成かな・・・なんて勝手に想像してたのだが、いい意味で、本当にいい意味で裏切られた思いだ。明らかに名作ですわ。

今年が90の大台ですか。この歳になっても、毎年毎年コンスタントに名作を発表し続けられるのって、クリエーターとして本当にすごいことだと思う。 ( 生涯15万点近くの作品を残した多作の巨匠ピカソは91歳で無くなるまでの晩年、毎日日記をつけるかのごとく作品を作り続けたって聞いたことがあるけど、老いてなお衰えることを知らない製作意欲の源とはこれ如何に? )

ともかくイーストウッドって監督は、映画(そして音楽)をとことんまでに愛しているってことが作品の節々から伝わってくる。 そして作品を観る度に、「人」とその人生を描く監督なんだなーって感じる。 本作しかり、 昨年の「運び屋」しかり、 2018年「パリ行き」、 2016年「ハドソン川」、 2015年「アメリカン・スナイパー」、 2014「ジャージー・ボーイズ」・・・ 。ここ最近は実在の人物をテーマにすることが多いから特に顕著だけど、過去の作品も全部そうだと思う。 (因みに「アメリカンスナイパー(米国内限定公開日)」と「ジャージー・ボーイズ」の公開年は同じ2014年! この名作 2作品が同年内に公開って、どんなバイタリティーだよw)

前置きが長くなったが、本作「リチャード・ジュエル」である。
「ハドソン川」、「パリ行き」、が名も無きヒーローシリーズだとしたら、本作の主人公も「不遇の運命を背負った小市民のヒーロー(おでぶちゃん)」である。(「運び屋」は名も無きダークヒーローってとこか?)

そして一つ気づくのは、本作ではこれまでの「人」と「人生」に加えて、「社会問題」が描かれてるということ。イーストウッドが描く、権力への警鐘、情報化社会に一石を投じるアンチテーゼである。
また話がそれるようだが、ふとカルロスゴーン問題が頭をよぎった。 ゴーン氏がカネの亡者だったかどうかはいったん置いといたとして、この事件における日本の検察制度の問題点についてはほとんどのメディアは大きく取り上げていないように思う。さらに、ソーシャルメディアの時代においては、メリットも多い一方で「世間のムード」が本質を見誤らせる力を助長しかねないのではないか? イーストウッドが描く問題提起を深く噛み締めつつ、名作に涙するのであった。

それから、弁護士役のサム・ロックウェルの名演も見所の一つ。
個人的には、 「リチャード・ジュエル」 ⇒ 「ジョジョ・ラビット」の、サム・ロックウェル二立てだったのだが、スリー・ビルボードでの怪演も記憶に新しい彼の油の乗った名演が光っている。(上記2作品での彼の役どころは両極端であるw)
また、主演の ポール・ウォルター・ハウザーについては本作が初主演とのこと。全然気づかなかったのだが、「ブラック・クランズマン」や「アイ・トーニャ」など最近の話題作にも特徴的な役どころで助演しているのですね。

最後に本作における忘れられがちなテーマをもう一つ。
「 スニッカーズ 」 が繋ぐアメリカ男の硬い友情・・・。
やっぱ、 イーストウッド作品はいいわ~。

リオ