劇場公開日 2020年1月17日

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「イーストウッド監督にはいつも襟を正される。」リチャード・ジュエル 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5イーストウッド監督にはいつも襟を正される。

2020年1月19日
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鑑賞方法:映画館

『イーストウッド監督の映画に通底するもの』
この映画を観て確信しました。
クリント・イーストウッド監督は『仕事に真摯に取り組む人』そして『仕事として引き受けたことは当たり前のようにきちんとすること』への関心と敬意と感謝の気持ちが本当に強いのだと思います。
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以上は『運び屋』の時のレビューですが、今回も『仕事』というもののあり方や取り組み方について、説教臭さを微塵も感じさせないさり気なさで見事に教えてくれました。
リチャードは、アメリカの正義を信じており、その執行に携わることこそが自分の使命であり、それを実現できる仕事への憧れと誇りを強く持っている。
その無邪気さは、『ジョジョ・ラビット』の少年ジョジョがヒトラーに憧れているのと変わらない。
だから、ワトソン弁護士が呆れるほど、アメリカの正義の頂点に君臨する(と信じている)FBIにも独りよがりの親近感を抱き、妙に協力的になってしまう。
そのような純真さは備品係だろうが、警備員であろうが変わらず発揮され、その仕事でやれるべきことは労を惜しまずやり遂げることが誇りであり、リチャードにとっては正義の執行なのだと思う。
イーストウッド監督はそういうアメリカ人男性の無邪気さが好きだし、愛おしくて仕方がないのではないでしょうか。
そして、そういう危なっかしい男を強く優しく見守る母親的な女性の存在(男女の役割を差別的に決め付けるような意図は全くありません、あくまで構図として)。
アメリカ社会の歴史も現状についても何も知らないのになんとなく、『古き良き、世界中の若者が憧れていた頃のアメリカの原型』のようなものを感じてしまうのですが、全然違うのかな。

正義の執行などというと大袈裟ですが、どんな仕事においても、工夫ややり方は人それぞれですが、当たり前のように〝責任を持ってきちんとやり遂げる人〟は誰からも信頼されます。ワトソン弁護士の彼への信頼の根拠もそこにあります。
この事件においては、メディアもFBIも本来の仕事に求められる責任や誠実さを始めから欠いています。
終盤、リチャードがFBIに突き付けた言葉の大意。
こんなことがまかり通ったら、次の警備員はリチャードの二の舞いはごめんだと思って、責任を果たさなくなる。
正義の番人が〝正義の執行〟という仕事において誇り(=責任感)と誠実さを失ったら、誰が安全を守ってくれるのか。

正義や安全という言葉を社会秩序とか社会基盤などに置き換えてみると、我々一人ひとりへの問い掛けでもあります。

原発、電気・水道などの社会インフラ、物流・小売などの安定による食と物資の確保。
世の中のすべての仕事が、市井の人それぞれの責任感で成り立っています。
イーストウッド監督の映画を見た後はいつも、明日からもちゃんと仕事しよう、と襟を正されるのです。

グレシャムの法則
ハリソンさんのコメント
2020年2月1日

コメントありがとうございます。
今夜は、ナイブズアウト行ってきます。まだ、レビュー見てませんが、琥珀さんの評価高いのは確認しました笑

ハリソン
ハリソンさんのコメント
2020年2月1日

クリント・イーストウッド監督映画は、信念のようなものを感じます。信じてくれる人がいるすばらしさもこの映画は、見せてくれたような気がします。

ハリソン
kossyさんのコメント
2020年1月19日

正義感が強すぎると容疑者に…
世の中の矛盾はどこにでもあるんですね。
この映画を見て襟をただそうというより、信頼できる弁護士を見つけておかなきゃ ってことでした😆

kossy