ファーストラヴのレビュー・感想・評価
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芳根京子の感情表現の振り幅が圧巻
昨年10月公開の堤真一主演作「望み」の記憶も新しい堤幸彦監督。それまでは映画にせよテレビドラマにせよケレン味あふれるエンタメの作り手という印象が強かったが、前作そして今作ではそうしたケレンに頼らず、俳優の表情と台詞の演技から感情と心理を的確に表現することでストーリーを紡ぎ良質の劇を成立させる手腕に磨きがかかったと見受けた。
父親を包丁で刺殺した容疑で逮捕、勾留され裁判を控える女子大生・環菜役に芳根京子。環菜を取材し執筆する仕事を依頼された公認心理師(2019年に始まった国家資格で、原作の臨床心理士から変更された)由紀役に北川景子。環菜の母だが検察側の証人に立つ昭菜役に木村佳乃。テレビでもお馴染みの高好感度の人気女優たち3人による、テレビではまず見られない感情むき出しの鬼気迫る表情に引き込まれる。とりわけ芳根の感情表現の振り幅が圧巻で、環菜の心の闇の奥深さや終盤の法廷での“変化”を見事に演じ切っていた。
島本理生による原作小説は2016~2018年に連載されたが、昨今のMeToo運動に通じる問題提起も重い。啓発効果が期待され、特に男性は真摯に受け止めなければならない。
単純そうで、実は奥深い良質な「サスペンス映画」。役者陣の化学反応によって名作の領域に。
これまで多くの堤幸彦監督作品を見続けていましたが、本当に私が映画として好きなのは2006年の渡辺謙主演の「明日の記憶」くらいだったのかもしれません。
ただ、ようやく本作で、その記録を更新することができました。
多くの「サスペンス映画」では、どこかバランスの悪い面があり、キチンと人間像等が描かれていない印象でしたが、本作はかなり深いところまで描けています。
冒頭の殺人事件は、一見すると簡単そうな話でも、北川景子演じる公認心理師が「本の題材」として取材してみると、意外と深そうな「仮説」が見えてきます。そして中村倫也が担当弁護士を務め、北川景子と共に事件の真相を探っていきます。
ただ、芳根京子が演じる「父親殺しの容疑者」である女子大生は一癖も二癖もあるので、何が本当で何が嘘かは分かりにくい面があります。
ちなみに、面会室のシーンでは、特に北川景子と芳根京子による「ガラス越しの演技の応酬」が凄まじく、芳根京子の演技に圧倒されます。
本作が面白いのは、容疑者の過去・現在だけではなく、それぞれの登場人物が過去・現在と対峙することで、様々な化学反応が生まれ、深みを増していく点です。
通常は、そこまで広げると話が散漫になりますが、本作では登場人物を多くしていない分、焦点が絞りやすくなっていて、混乱することなく巧みに深い世界へと誘ってくれます。
出だしからラストに至るまで丁寧に作られていて、それぞれの出口が用意されている点も良かったです。
容疑者に憑依したような芳根京子の演技が凄い。脇を固める俳優陣も贅沢。
ベストセラーの完全映画化とはいえ、ヒューマンドラマに鋭利なメスを入れつつ、禁断の真相をじわじわと伝えていくあたりは堤幸彦監督らしい。
本作は、「父親を殺した女子大生の動機」が、二人の女性の「閉じ込めた記憶」から解かれていく心理合戦のような物語。
二人の女性とは、芳根京子が演じる容疑者(聖山環菜)と北川景子が演じる公認心理師(真壁由紀)。
二人の間で、事件の解決に欠かせない弁護士(庵野迦葉)を演じる中村倫也は、真壁由紀の夫(我聞)の弟でもあることから、一見、ストーリーが混乱するように思えたが、そうではない作りに新鮮さすら感じた。
基本的に内容は重い。供述が二転三転する容疑者の生い立ちを裏づける現実に、公認心理師の心の闇がシンクロしていく描写は目を伏せたくなる。そんな心理的サスペンスに絡んでくる「ファーストラヴ」の経緯を確認するためにも、是非とも劇場に足を運んでもらいたい作品。
登場する俳優陣の演技と(主題歌と挿入歌を手掛けた)Uruの曲は、映画化となった本作を十二分に盛り上げている。
芳根京子、素晴らしい爆発力 北川景子&中村倫也のコンビも絶妙な安定感
父親を殺害した女子アナ志望の大学生、拘束後に言い放つ「「動機はそちらで見つけてください」という挑発的な言葉の裏には、一体どんな事実が潜んでいるのか。
とにもかくにも、芳根京子の演技力があってこそ成立する役といえるかもしれない。
「チャンネルはそのまま!」でのおとぼけキャラとの対比には、驚きを禁じ得ない。
そして、北川景子は変わらず美しく、中村倫也とともに真相を追うなかで、芳根演じる女子大生に翻弄され続けるさまは、なかなかに興味深い展開といえる。
「私」を愛してくれる人、を求めてる
観る前から結構期待してたんだけど、期待通りの面白さ。まあ、女子映画であることは認めよう。この映画に共感しない女性はいないんじゃないかな。
表面的なストーリーだけ追うと「特別な父娘の特別な関係性」の話、としか思えないだろうけど、随所に他人事ではない恐ろしさがある。
女性なら誰でも理不尽な恐怖の餌食になったことがある。直接的な被害に遭わなくても、降ってわいた災難に立ち竦んだ経験がある。
どんなに強そうに見えても、どんなにあっけらかんとしていても、ある。
「性的対象として見られたくないときに性的対象として扱われる」恐ろしさ。生物学的に女だから、という理由でオンもオフも関係なく「そこらへんの女」として扱われる。
「私」が「私」という自我から切り離され、肉体に付随する記号として扱われる時、理不尽大王は降臨する。
大王との遭遇がいかにクソゲーかは、遭遇した人にしかわからないだろうな。突然酔っぱらいのオッサンに女性器の名称を連呼される理不尽など、呆然と立ち竦む以外に何が出来るのか(実話です)。
程度の差があるから、普段はすっかり忘れている人(私だ)もいるし、毎日不安に苛まれる人もいる。この映画に登場する由紀と環菜は、不安を抱えて生きている。
以前何かで読んだけど、自己肯定感の低い人は「自分のことを好きと言ってくれる人」をキモチワルイと感じるらしい。こんな最悪の自分を好きになるなんて、こいつはオカシイんじゃなかろうか?という思いが「好意を寄せてくれた人」に向かうらしいのだ。
環菜にもこの感覚は当てはまる気がする。大学時代の恋人と「我慢してつきあっている」という発言がモロだ。環菜にとっては、自分を助けてくれる王子様→体を求めてくる下衆→違う王子様探し…という不幸の連鎖が起こっていたように思う。
由紀も環菜も、父親から直接的な暴行を受けたという描写はない。しかし、「女という記号で見られる恐怖」は彼女たちの心を確実に蝕んでいる。
同じ苦しみを抱える由紀と環菜。
だからある意味この物語はシスターフッド的な連帯と、互いの姿に自分を重ねることで立ち上がる解放の物語なんだと思う。
では男性陣はどうか、というととにかく由紀の夫・我聞が「悟り」の境地みたいなところに到達しちゃってるパーフェクト・ハズバンドである。「ビリーブ未来への大逆転」のレビューにおいて、アーミー・ハマー演じる主人公の夫に「世界に一つだけの理想の夫」という称賛を送ったが、窪塚洋介だって負けてはいない。
寛容さ・懐の深さに関しては我聞の方が圧倒的に「理想の男」かもしれん。
我聞の弟であり弁護士の迦葉は、兄に比べると若干オレ様系だがイケメン・イケボのハイスペ男子でこれまたある種の「理想の男」である。
で、なんで「迦葉」なんていう突飛な名前にしたのかなぁ、なんていうことが気になって調べてみたら、「我聞」も「迦葉」も仏教由来なんだね。
「我聞」は釈尊の説法を聞いたところ、という意味。「迦葉」は釈尊の三番弟子で拈華微笑(言葉にしなくても心が通じる様)の由来となる人物。
由紀にとっては「話したくないけど察してほしい」時期の恋人が迦葉で、「勇気をふりしぼって苦しみを告白する」相手が我聞だったんだなぁ、と妙に納得。
まあ、女側の勝手な都合ですけどね。
ともあれ、由紀の心の整理がついたことで、環菜の苦しみを由紀が引き受けられるようになったことが、環菜の心の解放、言い出せなかった本当の気持ちに繋がっていくのは素晴らしい流れだったと思う。
由紀を演じた北川景子は、本作でキャリア最高の演技を見せたと言って良いと思う。このまま演技派への道を突き進んで欲しい。結構本気で応援してる。
環菜役の芳根京子は鳥肌が立つほど良かった。由紀との接見シーンも良いけど、裁判のシーンは更に凄い。今まさに「環菜の心に触れている」と感じた名シーンだった。
登場人物一人一人がしっかり描かれていて、好きなタイプの映画なんだけど、ちょっと説明過多なのが玉に瑕。何もかもちゃんと説明され過ぎちゃうせいで、余韻がないところだけが残念だったな。
中村倫也の目がこわーい
NHKのドラマを観ているので、内容は知ってたが、配役が違うとまた新鮮な味わい。
北川景子が、複雑な心情を体全体で表現して、熱演だった。また、脇を固める板尾創路、木村佳乃、高岡早紀が不気味で良かった。窪塚洋介は見てすぐは誰だかわからなかったけど、いい役だし、こんなに力の抜けた雰囲気が出せるとは驚き。我聞さん、ほんと人間できすぎ。優しく妻を包む、あたたかーい毛布のような人だね。写真もあったかい。中村倫也演じる迦葉が、由紀にグサッと言われた瞬間、すごい目をした。怒りの衝動を抑えられないくらい、この男は内側にドロドロしたものを抱えている。人間ってほんとにわからないわー。
今この時にも、人知れず辛さを抱えている子達がいると思うと、とても悲しい。何でもない顔しながら、悩み苦しんでいる人の、思いをすくいとるような映画だった。
BSテレ東の放送を録画視聴。
直木賞受賞の原作への疑念のままの鑑賞の結果…
直木賞受賞作ということでの原作を読んだ縁
があり、TV放映を機に鑑賞した。
正直なところ、原作の読後感では
直木賞受賞作とは評価し難い内容だったので
不安な鑑賞ではあった。
俳優陣の好演もあり、基本的には
良く出来ている映画のようには感じた。
この作品が語りたいのは、
親の在り方が成長期の子供に与える影響の
観点や、他人への思い遣りなのだろう。
しかし、何かがそれに対するこの作品からの
享受を阻んでいる。
父親のデッサン会での少女と全裸男性の
組み合せという異質な設定。
確かに、2人の女主人公の少女期の
父親からの耐え難い経験と母親からの
駄目押し的な対応も背景にあるが、
オーバーラップさせて扱うには
異なる質のトラウマに感じること。
どんな事情があったとしても、
感情の起伏が激しい人物だったとしても、
取り調べの段階で、
少女に事故だったとの弁明の発言が
一切なかったことへの違和感。
等々、
話の骨子に無理があり過ぎるような印象が
この物語へはある。
多分に、この映画の出来不出来以前に
その原因が、
ほぼほぼ原作通りに描いた結果、
直木賞受賞小説が原作という前提で
ありながらも、私には納得出来なかった
この作品への質への疑念が、
北川景子、芳根京子、木村佳乃の女優陣の
熱演にも関わらず、
キネマ旬報ベストテンでも
全く評価されなかった一因のようにも
感じてしまったのだが。
原題の意味は何?
様々な群像とコントラストが光る作品
「ファーストラヴ」この題名から想像するのは、通常は初恋という言葉だろう。
作品の中にもそのような感じのものは登場するが、物語の中に初恋を主張するものは何も出てこない。
精神状態がおかしいと思しき女性カンナが犯した父親殺しの罪。
彼女の精神状態がおかしいのは彼女の所為ではないと考えた公認心理師のユキは、彼女の取材をするために接見を申し込む。
その弁護士のカショウがかつての彼女の恋人だった。更に彼の兄が現在のユキの夫という、説明だけで尺が取れそうな設定になっている。
つまり彼らは、それぞれ心に闇を抱えた者で、カンナの事件をきっかけに複雑になって絡んでいた糸を解きほぐすことになってゆくのだ。
「密室 そんな世界 誰も助けてくれなかった」 カンナの心の叫びは、ユキに痛いほどよく分かると同時に、自分自身も夫に告白しなければならないことを突きつけられてゆくのだ。
カンナは社会的に、強制的に自分自身と対峙があり、自分自身の対峙はユキにもカショウにもあったのだ。
そして毒親だと思われたカンナの母もまた、心に深い傷を負った人だった。
立場はそれぞれ違うが、似たように心の傷を抱えながら必死になって生きているのを群像として描きつつ、お互いのコントラストを明確に描いている。
裁判が非常にも実刑を確定させるが、カンナは自分自身と向き合うことができたことは、共感と安堵感を覚えた。
ちなみにこの題名は、この裁判を通してカンナが初めて誰かに助けてもらったその愛情を感じた意味だと思った。
俳優陣の演技に引き込まれました
本作の優しいメガネ男子役は窪塚洋介です。主人公の全てを受け止めてく...
中村倫りんやから観に行ったけど
正直子供のころのトラウマって本人にとっては人生最大の陰なんやろうけど
ここが身に染みるかどうかがハマるかどうかに繋がる。
芳根京子も素晴らしかったし、監督の表現もよかったのだが
拙だけの印象ですが板尾創路が出てくると嘘っぽく映る。
この人どんな変態役でもこなすので重宝されるが
拙には響かない。
50点
イオンシネマ草津 20210214
迫真の演技
なにしろ窪塚先輩が凄い良かった❤️
なんの先入観もなく、下調べもせずに見たら、思っていたイメージと全く違って、なんかサスペンスっぽい?感じ?と思ってしまいました。
ですが、序盤で出てくる窪塚さんの雰囲気で一気にストーリーの流れや、監督さんが言いたいものの形のようなものが見えてきた気がしました。
窪塚さんの醸し出す、大人のいい男感が絶妙で、なおかつ、主人公を大きく抱擁していて、どんな現実にも真っ直ぐ受け入れる度量を持っている。
それが最初の少しのセリフで読み取れるくらい。
本当に素敵な役者さんだなと思った。もっとたくさんの作品で拝見したい!
また木村佳乃の、娘との距離感が分からない美人すぎる母親役が出てくるシーンから、さらに踏み込んだ展開になっていて、そのシーンからジッと見入ってしまった。
ディープな、とても家族と一緒には見れない内容でしたが、最後は全員の気持ちにケリがついて、本当に良かったと思いました。
題名と内容のギャップ
「人」と「自分」と向き合い、共に成長することの大切さを学べる映画です。
「表面的な人との関わりではなく、本当に人を良く見て、人とつながる」
そのことの大切さを体感する映画です。
大人の都合を子供に押し付けていないか?
人権とは何か?を考えさせられるとともに、
理不尽さを受け入れて生きていくリアルに触れた気がします。
人は皆、何かしら課題を抱えているかもしれませんが、
互いに尊重しながら乗り越えて、真の人間関係を育むことの大切さを学ぶことが出来る映画です。
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