劇場公開日 2021年2月11日

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「芳根京子の感情表現の振り幅が圧巻」ファーストラヴ 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0芳根京子の感情表現の振り幅が圧巻

2021年2月11日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

昨年10月公開の堤真一主演作「望み」の記憶も新しい堤幸彦監督。それまでは映画にせよテレビドラマにせよケレン味あふれるエンタメの作り手という印象が強かったが、前作そして今作ではそうしたケレンに頼らず、俳優の表情と台詞の演技から感情と心理を的確に表現することでストーリーを紡ぎ良質の劇を成立させる手腕に磨きがかかったと見受けた。

父親を包丁で刺殺した容疑で逮捕、勾留され裁判を控える女子大生・環菜役に芳根京子。環菜を取材し執筆する仕事を依頼された公認心理師(2019年に始まった国家資格で、原作の臨床心理士から変更された)由紀役に北川景子。環菜の母だが検察側の証人に立つ昭菜役に木村佳乃。テレビでもお馴染みの高好感度の人気女優たち3人による、テレビではまず見られない感情むき出しの鬼気迫る表情に引き込まれる。とりわけ芳根の感情表現の振り幅が圧巻で、環菜の心の闇の奥深さや終盤の法廷での“変化”を見事に演じ切っていた。

島本理生による原作小説は2016~2018年に連載されたが、昨今のMeToo運動に通じる問題提起も重い。啓発効果が期待され、特に男性は真摯に受け止めなければならない。

高森 郁哉