「人と人が心を通わせる唯一の方法」ファーストラヴ Fさんの映画レビュー(感想・評価)
人と人が心を通わせる唯一の方法
◆あらすじ
父親を殺した罪で逮捕された女子大生環菜。彼女は警察の取り調べでは黙秘、担当の弁護士が事件について聞き出そうとするも弁護士の態度が気に入らないのかからかってきたり挑発したりと弁護士も匙を投げかける。
カウンセラーの由紀は事件には裏があると思い面会し近づくも、支離滅裂な事を言っていて手が付けられない。
環菜は面会中情緒不安定で、突然泣き出したり、パニック発作を起こしたり、嘘を言ったり、事件とは関係のない話を持ち出して他人を責めたりします。
どうして環菜はここまで歪んだ人格になってしまったのか?果たしてカウンセラー由紀は彼女の心の奥深くに抱えている何かに辿り着けるのか?
◆人と人が心を通わせる唯一の方法
精神科医樺沢紫苑先生は著書の中で、「人と人が信頼関係を構築するというのはレンガを積み上げるようなもの」と形容されています。相手にばかりレンガを積ませようとするのではなく、こちらがレンガを1つ積めば相手が1つを積んでくれるのです。
弁護士は環菜を厄介者扱いしますが、カウンセラー由紀は真剣に環菜と向き合います。小さな手掛かりを見逃さず、彼女の口にする言葉だけでなく、感情の変化も読み取ろうとします。
そしてようやく環菜がトラウマを抱えている事が明るみになってきます。(このトラウマの原因を探っていく所がまた嫌悪感を催します・・・)
少しでも事件の真相に辿り着く為、出来る事なら環菜の刑を軽くする為とは言えトラウマを探られるのは嫌なものです。環菜の証言からカウンセラー由紀は過去の人物に接触していきます。その事を話すと環菜は激怒します。それはなぜか。環菜には隠し事があったからです。
この隠し事を環菜に話してもらう為にカウンセラー由紀がした事、それは自己開示でした。自らも幼い頃のトラウマを環菜に打ち明ける事で環菜も心を開くようになり過去に起きた事を語り始めるのです。
この留置場にてアクリル板越しに2人が涙を流すシーンには感情が揺さぶられました。映画全体を通しで観た時、この2人のプロセスは人と人が心を通わせる唯一の方法なのではないでしょうか。
◆環菜(芳根京子)の演技の凄さ!
この映画作品は環菜役の芳根京子さんの演技がなければ成立していなかったと思います。弁護士もカウンセラーもお手上げ状態で観ているこちらも「こいつぁもうどうしようもねぇや」「事件の真相とかなくてもうただ以上人格者が起こした事件なんじゃねぇの」と言いたくなります。彼女が泣き出したり、嘘を言ったり、発作を起こしたりするのには全て理由がありました、彼女の抱えているもの、心の奥深くにしまっているものがオープンになった時、観ているこちらも「そういうことだったのか・・・」といったカタルシスがありました。芳根京子さんの演技があったからこそだと思います。途中で匙を投げずに真剣に向き合う事の大切さも知れました。
◆映画の本筋とは関係ないけど良かったシーン
冒頭環菜が血の付いた包丁持って堤防を歩くシーンはなんか中二病心がくすぐられて良かったです。(なんだそりゃ)
◆-0.5点
男性陣の演技力がちょっと・・・。でもそこに目をつむっても鑑賞した甲斐がありました!