「衝撃と感動。良くも悪くも胸を打たれました。」ミッドナイトスワン 燈田さんの映画レビュー(感想・評価)
衝撃と感動。良くも悪くも胸を打たれました。
文春に凪沙として掲載!など、触れ込みが多くて何となく興味がわき、コロナ禍になって以降実に半年ぶり?に映画館に行きました。
特筆すべきはふたつと思っています。
それは描写の生々しさと、息を飲むような演技力。
まずは描写の生々しさ。ロケットマン、窮鼠はチーズの夢を見るなどLGBTを描写した作品は昨今増えてきている印象ですが、これはその中でも随一のものがあると思います。
トランスジェンダーの苦しみ、『落ちたら落ちるだけ落ちる』リアルさからか、ひとつひとつの言葉の重みもずしりと来るものがありました。
正直、展開は生々しいゆえに優しさが少なくとてもハードな気がします。
バレエ描写も素晴らしいです。私はバレエはさっぱりですが、それでも美しい。美しさだけじゃなく、その裏の苦労などもしっかり描かれているのが好印象でした。
そして、演技力。前評判通りだったのは、主演の草なぎ剛さん。
ショーパブで働き、そして母として生きる草彅剛の女性らしさたるや。すごいのはショーパブのシーン以外でも、どんな姿になっても彼が凪沙であることです。立ち振る舞いをここまで女性らしくできるのか…彼の役者としての本気を感じました。
そして、一果役の服部樹咲さん。
ルックスは、誰が見てもすごくかわいいー!!とかでは、ないかもしれません。ですが、いえ、だからこそ一果であり、ルックスなんかではないバレエだけでもない彼女の内面から溢れる魅力のようなものを感じます。
バレエは言語のない世界共通の芸術ですが、そこから培われたのであろう表現力が遺憾無く発揮されているのだと思います。
終盤の展開は、少し物足りない、補完が欲しいという気持ちもあります。ですが結末を観客に投げるより作品としての答えをくれているので、後味が悪いわけではないと思っています。
題材が題材で、かつハードなのであまり万人受けするような話ではないかもしれませんが、私は好きです。