「長回しに対する観客の耐性向上と特機の進化」1917 命をかけた伝令 ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
長回しに対する観客の耐性向上と特機の進化
長回し映画の歴史は古く、ヒッチコックの『ロープ』や溝口健二や相米慎二の諸作品、1シーン1カットの中に過去と現在が入り交じるテオ・アンゲロプロスの作品だったり、フィルム時代にもいくつも存在する。デジタル時代になりフィルムのワンリールの長さに依存せずにより長時間カメラを回せるようになったため、アレクサンドル・ソクーロフが1映画1カットの『エルミタージュ幻想』のような作品も出てきた。しかし、ハリウッドメジャーの大作でそのような試みはこれまでなかったところにサム・メンデスが娯楽性も損なわずに長回し映画を作ってみせた。
長回しの娯楽映画が成立する背景には、ドローンやクレーンなどの撮影特機のバージョンアップが背景にある。カットを変えずともカメラが役者の前・背後・左右・上下と縦横無尽に入り込めるため、単調にならずとも済むようになったことが大きい。
もう一つの背景には、これは観客側の嗜好の変化だが、SNSで素人の撮った長回し動画を見る機会が格段に増えて、長回し耐性を持った観客が増えたというのもあるだろう。現代人は、YouTubeやTwitterで5分、くらいの1ショット動画は平気で見てしまえる。そして本作に大きな影響を与えているだろう、FPSなどのゲーム映像の存在も観客の嗜好を変化させているだろう。
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