劇場公開日 2020年2月14日

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「「西部戦線」のリアル体験。」1917 命をかけた伝令 ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5「西部戦線」のリアル体験。

2020年3月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

若い二人の兵士が「作戦中止」の命令を伝えるために戦場を走り抜ける一日を描いた作品。戦争映画というと、激しい戦闘シーンがあったり、駆け引きや裏切りなど予想できない複雑な展開が見所のものが多いと思う。これは「単純」という意味では今までにない作品かもしれない。伝令の若い兵士はただ前に進むだけである。確かに、彼の視線で戦場を体験できるのはこの映画の一番の魅力である。そのリアリティを生み出すために、長回しのカメラワークや壮大なセットが実に効果的である。「ワンカット」の技法についてはさんざん語られているので触れないが、セットの作り込みには感心した。塹壕や廃墟の町は本物にしか見えない。大勢の兵士の動きも自然で戦場のリアリティがよく伝わった。
さて、戦場のリアル体験は素晴らしいが、それ以外にこの作品には何があるだろう。伝令はなんとか伝わったが、達成感はない。何度も死ぬ思いをしたのに誰もほめてくれないし、戦争はこれからも続いていくだろうという虚しさしかない。映画を見る時は、人間の醜さや美しさを見たいと思うのだが、ここにあるのは戦争の愚かしさだけである。映像的には画期的なものに仕上がったが、ドラマ性が感じられないのは大きなマイナス点である。

ガバチョ