劇場公開日 2020年2月14日

  • 予告編を見る

「試写会で」1917 命をかけた伝令 とーりさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0試写会で

2020年3月4日
Androidアプリから投稿

"I know the way." 《生》死と隣り合わせの極限の場所で力強く感じて、突き動かされる、名もなき英雄誕生と希望のバトンにまつわる傑作。あなたは戦場の真っ只中へ放り込まれ、銃声はすぐ近くで響き渡る。シンプルなストーリーラインにキャラクターに感情移入てきる懐の深さがあり、終盤の戦場全力疾走シーンはそんな主人公の"決意"がまるで自分のそれのように感じられて、口ポカーン鳥肌ゾワーーの映画史上屈指の名シーン。心臓ドキドキ鼓動バクバク息することも瞬きすることも忘れそうなほど痺れた。監督サム・メンデス × 撮影監督ロジャー・ディーキンス名コンビ × そして一人でストーリーテラーを担うスコフィールド役ジョージ・マッケイはじめ総力戦全員試合で挑んだのがヒシヒシと伝わってくる役者陣/スタッフは、本作でスピルバーグ御大が『プライベート・ライアン』『シンドラーのリスト』で、クリストファー・ノーランが『ダンケルク』で成し遂げたように、またも戦争映画を更新してみせた。
陰影の撮影美と多彩なロケーション --- 「全編ワンカット」本作を語る際にこの要素を抜きにして語れない。それは例えばヒッチコックが『ロープ』で行ったような"疑似"ワンカットであり(物陰や寄り/パンあるいは爆発等に乗じて...フィルム撮影どうこうは置いといて無論戦場のコチラの方が難しいだろうが)、何なら途中の大幅時間経過でそれすらバサッと捨ててしまう潔さには逆に好感。それでも過酷な長回しであることに変わりはなく、そんな話題の撮影をしたのは変 = 画期的な撮影といったらこの人な名撮影監督ロジャー・ディーキンス御大。彼の撮影は1つの画に100のライン/感情を詰め込めるほど雄大/壮観で本当に見事すぎる素晴らしや。手法以上に技法、場所の使い方にも流れるようなカメラワークにも驚愕。劇伴、音楽も美しいばかりかその時々の感情/状況に寄り添うようにマッチしていて良かった。それに負けず劣らずの熱量/必死さ、どれほど入念な準備/リハーサルがなされたのだろうか。どこまで所謂台本やリハ通りか分からないが、誰かに当たって転ぼうがお構いなし。爆発は続いていく。ただ一枚の手紙を届ける、それだけのために。けど、それこそが希望のバトン。この伝令が次世代まで届くことを願おう。
走れ。スコフィールド成長と友情の記録としてもアツい圧倒的没入感/疑似体験! 彼はどうやら受け身な方の質で優しく、相手兵であろうと無闇やたらに殺したりはしないらしい。それは素晴らしいことなのだけど、本作途中で襲いかかる不幸。それが彼をより使命感という"行動"に向かわせる。だからこそ決断の一つ一つに観客もきっと自分を重ねることができるし、終盤に差し掛かる頃にはもはや他人事とは思えなくなっているかもしれない。抗う術なく降参、それくらい感情的にもよく練られている。このようにして歴史の教科書に載らないような名もなき英雄たちが生まれてたのだ、だからこそ今日の僕たちがある。ガッツポーズに安堵の表情、今日はよく眠れそう。草原にはじまり草原に終わる。「これが実話なんて!」というのはよくあるけど本作はスゴいのに「うん、これは実話だろうな」と納得できてしまう丁寧なドラマツルギーと臨場感。

THE LAST MAN STANDING 《希望のバトン》と表現したのには別の意味もある。要所要所でお助けキャラみたいに出てくる上官キャラ演じる面子が豪華すぎる! と、改めて英国演技界役者の層の分厚さに唸る。
コリン・ファース → アンドリュー・スコット → マーク・ストロング → ベネディクト・カンバーバッチ → リチャード・マッデン

P.S. 結局オリジナルの宣伝とタイトルをそのまま持ってきた方が良い宣伝になるという例?

とぽとぽ