「伝えることについての話」1917 命をかけた伝令 ジョニイさんの映画レビュー(感想・評価)
伝えることについての話
ロジャー・ディーキンス撮影の戦場ワンシーン映画ということで、
塹壕を進むショットや砲弾の中を駆け抜けるショットなど、予告編で観た場面はやはり凄い臨場感と没入感が味わえた。
ただストーリーはシンプルで、こんな話だろうなと思っていた以上のことは起こらないため、正直言って最初は映像が凄い・撮影が凄いという以外の感想が浮かばなかった。
でも帰りの道中で、これって何が言いたい話なんだっけと思い直し、命がけで伝える話だったなとあらためて感じた。
この映画の邦題を聞いたとき、「命をかけた伝令」なんてバタ臭い余計なサブタイトルだなと思ったが、この話の本質は第一次世界大戦についてではなく、「伝える」ということの方だったので、今は「1917」よりもこちら方が大事なワードだと思っている。
伝令の使命が与えられたのは、主人公ではなくもう一人の若い兵だった。彼の相棒役に指名され、主人公は最前線へと向かうことになる。
兄が最前線にいるもう一人の兵とは違い、まさかこんな危険な任務だとは思ってもみなかった主人公には、そこまで命がけで付き合う理由はない。
最初は、なぜ自分を選んだんだと相手をなじっていた主人公だが、彼に命を救われ、そして彼が不意に命を落としたことによって、作戦の任務と、彼の死を家族に伝えるという2つの伝令役を背負うことになる。
そこからの主人公は、生き延びるためではなく、伝えるために命がけで前線に突き進んでいく。
ラストに2つの伝令を果たして映画は終わる。
とくに2つ目の伝令である、もう一人の兵の死を兄に伝えた後、彼はオープニングシーン以来の束の間の安息の時間を得る。
ただ伝えるというだけの話。
映画の最後に、
監督の祖父に捧げるというクレジットが出てくる。
この映画は監督のサム・メンデスが、昔英軍で伝令を務めていたおじいさんから聞いた戦地でのエピソードを基に作られた。
サム・メンデスもおじいさんから受け継いだものを、こんな凄い映画にして観客に伝えている。
何かを受け継いで伝えるというのは、どこか生きることの本質に触れるような行為なのかもしれない。
というふうに、
自分も誰に読まれるとも知れないこんな文章を書いて、人に必死で何かを伝えようとしている。