「全編をワンカットでみせる意義が疑問」1917 命をかけた伝令 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
全編をワンカットでみせる意義が疑問
1917年4月のある日。
第一次世界大戦の真っ只中の西部戦線。
膠着を続けていたが、ドイツ軍が撤退を始めた。
前線の英1個大隊はこれを好機とみて進軍の準備を進めるが、空中からの偵察により、この撤退はドイツ軍の罠だと後方の指令本部は気づいた。
大隊指揮官へ進撃中止の命令を届けねばならぬ・・・として選ばれたのが、ふたりの若い兵士だった・・・
というところからはじまる物語で、第一次大戦下の伝令の映画といえば、メル・ギブソンの出世作、ガリポリの戦いを舞台にした『誓い』が思い出される。
まぁ、1981年の作品だから、思い出すひとは少ないだろうが、思い出しちゃったものは仕方がない。
あちらは戦争を背景にした青春映画の趣があった。
本作は、全編ワンカット映像の謳い文句も華々しく、戦争アクション、戦争サスペンス映画。
多少の伝令ふたりの友情は描かれるが、それはやはり多少のスパイスで、戦争アクション娯楽映画。
全編ワンカットと謳っているだけあって、映像から迸る緊張感はものすごい。
(実際は、ロングテイク、長廻し演出を巧みに繋ぎ、エンドロールで示される多数のデジタルアーティストによる合成もあるのだろうと推察されるが)
でも、出だしで観る気持ちがズッコケてしまいました。
というのも、伝令を届ける先は14.5キロ先。
つまり、尺の2時間では到底到着できない。
「尺の」と書いたのには理由がある。
全編ワンカット、と聞いたので、「あ、これはリアルタイム・サスペンスもの(=上映時間と映画の物語の時間の長さが同じもの)だな!」と思っていたから。
(ワンカット映像にチャレンジした作品ではヒッチコックの『ロープ』、リアルタイムサスペンスものではジンネマンの『真昼の決闘』を思い出します)
映画の中の時間が尺を優に超えてしまうのならば、全編ワンカットのシームレスで撮る必要がない。
そう思うし、実際、シームレスにしてしまったが故に、映画内の時間の流れが全然わからなくなり、とにかく目まぐるしいだけ。
(あれれ、知らないうちに夜になっちゃった。いつ時間が進んだんだ? もしかして、さっき目を瞑った瞬間? とか余計な労力を要してしまいました)
これならば、エピソードごとのワンカット長廻しで、ワイプ、ディゾルブ、フェードインなどの一般的な映画文法で描いたほうが、格段よかったのではないかしらん。
と、まぁ、オールドファンとしては乗り切れず。
乗りこなせない荒馬のような映画でした。