「内省的な映画」1917 命をかけた伝令 posuyumiさんの映画レビュー(感想・評価)
内省的な映画
なんと内省的な映画だろう。
服が重そう、靴も最初からグズ濡れ。空腹で寒そうで喉も水分だって満足にとれない。大勢いる人たちがみんな疲れきっていてだるそうで。もちろん戦場になど居たくなくて家族を恋しく思っていて。
ああ、これが戦場なんだな、前線てこういうことか。鉄鎖が意味を為し、壕に身を隠す。
敵陣の把握が作戦の要にあり、状況把握に一発の信号弾が頼りだったり。
そして士気維持も難しそうなのに指揮系統の確かさたるや。
でも、ここで描かれるのは戦争の愚かさでも非道さでもない。必死の伝令が朝令暮改の一つにすぎない、には虚を突かれましたが。それが主軸ではない。
喪失感を抱えながらもそれに蓋をしていた者が喪失感にやっと向き合えるまでのストーリーだった。
愛する家族、思い焦がれる故郷。それを持つ友人の、友人の思いを引き受けて「代わりに」走る。
空っぽだった心に友人の心を詰め、使命を果たすことで友人の心を家族に返し。自分の心がいかに空っぽで寂しかったのか、やっと寂しいという感情が流れ込んでくる。
ワンカット撮影の効用でいえば
それは幾度も連なる遺体の山を越えることになっても必死で生きていくしかない姿を写し出すことと、
この映画の到達地は伝令を渡す大佐のところでもなく、思いを伝える友人兄のところでもなく、自分の気持ちに向き合うところだと示すことにあるのでしょう。
見終わったときなんだか深い思いにとらわれました。
そして、見始めたとき「え?伝令はともかく場所の説明一発で分かりにく!それに途中のどこそこが目印の何があったらどうしろも覚えきれん!私には無理だー」と次元の低い目線でいたことを恥じます(汗)。