劇場公開日 2020年2月14日

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「映像を根幹にすべきだったか」1917 命をかけた伝令 andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5映像を根幹にすべきだったか

2020年2月20日
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鑑賞方法:映画館

まず「全編ワンカット」と喧伝した配給はちょっと宣伝方法を考えるべきだ。観る前からずっと疑問だったのだ...「全編ワンカットなら時間はどこで圧縮してるの?」
...いや、だって、本来なら2時間で収まっちゃおかしいでしょ、ワンカットなら。なのでこの映画にはいちど明らかな暗転がある。
そして、ずっと観ていれば「ひとつひとつのシーンを極めて繊細に、あたかもワンカットのように繋げた」映画だというのは分かる。むしろそれを成し遂げたことが讃えられるべきで、だからこそロジャー・ディーキンスはオスカーを獲ったのだ...。そう思うとつくづく「なんで全編ワンカットという宣伝文句に拘ったんだろ」と思う。ワンカットも凄いが、演出、撮影手法としては十分過ぎるほど凄いと思うんだが...。
ブレイクとスコフィールド、ふたりの上等兵がかなり無茶苦茶な司令を受けてふたりで旅立つ前半は、まだやや牧歌的。とくにブレイク君は非常に牧歌的な上に、単純に優しく素直だ。これが伏線であることは分かりやすい。
そう、この物語は大変に「分かりやすい」。サム・メンデスの祖父の体験をもとにしているということだが、物語は「とにかく走れ」に貫かれている。全くあれだが「走れメロス」を思い出しながら観ていた...。
物語が極めて単純だからこその、あの「繋げた」演出なのだろうな。そうじゃないと、いくら脇に物語を盛り込んでも、マーク・ストロングが格好良く語っても、ラスボスにベネディクト・カンバーバッチが待っていても、「ふーん」となってしまう。レビューを眺めると大体「臨場感がすごい」みたいになるのは、結局私たちはこの物語が極めて単純であることを知ってしまっているからなんだよな...。
観るべき前半の「ふたりのやり取り」が後半の緊迫感に全部喰われちゃうのは少し悲しい。あそこが「戦争に駆り出される若者たち」の根幹だった筈なんだが。
そういえば「キルゴア」っていう名前出てきて、「地獄の黙示録」か?! と一瞬思いました。
あと、第一次世界対戦の背景を勉強して観に行った方が多分こういうのはより深く観られるんだろうな、とは思った。勉強不足が否めない。
あ、あと幾らワンカット「風」とはいえ、それなりに視点はぶれるので若干酔います...。まあほんとうに全部ワンカットで撮ってたらもっと酔ったと思うけど...

andhyphen