「違和感ない時間濃縮がもたらす没入感」1917 命をかけた伝令 LittleTitanさんの映画レビュー(感想・評価)
違和感ない時間濃縮がもたらす没入感
日本公開5日目に鑑賞。
Colin Firth に始まり Cumberbatch で終わる道程に、バッチリ没入できました。
背中を追いながら、時折正面に回り込む映像も愉しい2時間でした。
感想を以下の4つのポイントに分けて、書いてみました。
1. 濃縮された時間に没入
2. 臨場感には経験が必要?
3. 友の死を悼み、敵を撃ち殺すのが戦争
4. Thomas Newman の音楽に揺蕩う
🎞️🎬🎥
1. 濃縮された時間に没入
劇場予告や前評判で散々聞かされた、ワンカット(っぽい)映像は、やはり見どころでした。
町山さんの指摘通り、背中を追う映像は表情の演技が犠牲になりますが、観客が主人公(もしくは背後霊)の視線になれる利点もあります。
時折前に回り込んだり、主人公の周りをぐるぐる回る映像も、照明さんや音声さんは何処?って感じの不思議さがありました。
爆破や気絶、河に飛び込む瞬間など、分かりやすくカットを割れる箇所もありますが、かなり長回ししているのは確か。
水死体役の人など、待ってんの大変やろなと随所で感じました。
ただ自分がそれ以上に感心したのが、自然な時間濃縮。
全体の尺が2時間なので、時の流れをリアルに描くと、実際に2時間で移動できる道程しか描けません。
ところが、冒頭に(正確には覚えてないけど)移動には8時間かかるとの台詞。
この時点で、時間経過をリアルには描かない事が分かります。
おまけに、爆破での生き埋め、戦友の死、気絶、母子との交流などでもタイムロス。
車移動や河流れで、大幅に距離を縮めたのかもしれませんが、映画上は短時間なので、時間は確実に濃縮されていました。
しかし、早すぎる筈の時の流れに全く違和感がありませんでした。
おかげで、主人公の視点で戦争を追体験でき、気づけば映画が終わっちゃったと感じるくらいの没入感がありました。
💣
2. 臨場感には経験が必要?
ただ、臨場感があったかと言われると、先週観た「Fukushima 50」には及ばない気がしました。
それは、映画に責任がではなく、自分の経験の乏しさが原因な気がします。
もちろん、全電源喪失(SBO)した原発の中での経験もありませんが、見えない放射能への恐れは、震災時にたっぷり体感しました。
なので、Fukushima 50 が現場でみせる慄きは、かなり臨場感ともに迫ってきました。
一方で、戦場での経験は皆無です。
銃撃も爆破も、ドラマや映画の中の出来事でしかありません。
近くの米軍燃料タンクが爆発して、小学校の窓ガラスが全壊した経験はありますが、ビックリした程度で、恐怖は感じませんでした。
なので、主人公の痛みや恐れまでは、感じ取れている自信がありません。
戦場に対する経験不足を実感しつつ、幸せを再確認しました。
☠️
3. 友の死を悼み、敵を撃ち殺すのが戦争
戦場は未経験ですが、肉親の命が突然絶たれた経験はあります。
なので、敵兵を助けようとした戦友が刺された場面、その死を兄に伝えるシーンでは、心の痛みがよく伝わってきました。
その一方で、友や自分に刃を向ける敵の命は、迷わず奪う。
地球より命が重いのは味方だけで、敵の命まで慮ると、自分が命を失いかねないのが戦場。
きれいごとを言っていられる平和が、ぬるま湯と言われようが、如何に幸せなのか感じ入りました。
🎶
4. Thomas Newman の音楽に揺蕩う
サントラ好きとしては、エンドロールでも流れたThomas Newman の音楽が、かなり心地よかったです。
席を立つ人が結構いたのが、ちょっと信じられないくらいでした。
曲名としては「The Night Window」と「Come Back to Us」。
Thomas Newman で有名なのは「The Shawshank Redemption」「American Beauty」やPixar作品だと思いますが、個人的には「Little Women」のサントラがハズレ曲なしで、結構愛聴してました。
本作の上記2曲も、是非ともコレクションに加えたい一品でした。