「どこに重点を置いて観るか?」1917 命をかけた伝令 Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
どこに重点を置いて観るか?
やはり全編ワンカットの謳い文句に惹かれて鑑賞
感想としては
悪くなかったです
実績のある制作陣でよくこんな野心作に
挑んだと思います
ただそこだけが強く印象に残りすぎて
果たして映画として観れたかどうかという感じです
終戦後即座に国際連盟を設立するに至るほどの
戦った同士いずれも予想だにしなかった
未曾有の犠牲者を出した第一次世界大戦を舞台に
伝令を任された兵士の決死の作戦を描きます
こうした撮影技法に凝った映画というのは
色々観る前に気になるであろう部分がありました
挙げてみると
①ワンカット撮影ばかり重視されストーリーのボリュームが不足しないか
②時間をどのように進めるのか
③CG合成等をどのくらいの割合で用いるのか
などです
①は撮影技法などに意識が行ってしまい映画としての完成度が
成り立つのかという点
簡単に言うと「ワンカット撮影にしなくても映画として面白いか」
伝令の主人公が先に兄がいる友を途中で失い
伝えるべき事が加わったという形のボリュームで
特別な技法無しだと少し足りない感じになります
ただ美術は非常に頑張っており臨場感や現場の他の兵士の
存在感は際立っていました
②時間の経過は当然リアルタイムでは無理ですから一昼夜
くらいの時間経過を上映時間内で経たせなければいけません
これをどうするかというところが一番気になっていました
その結果…あれ!?これワンカットじゃなくね?という部分
ありましたよね
あそこ暗転する前の撃たれて倒れたアングルのまま
明るくなってからスコに寄っていくなら個人的にはセーフに
するとこですが…
こうやってワンカット警察になっちゃうんですよね
残念ながらこの映画はワンカット「風」です
③はいくらワンカットとか言ってても多用し過ぎれば
撮影技法そのものの価値も揺らいでしまう重要ポイント
ここは可能な限り使用は抑えられていると思いました
川を流れていく様を水面を滑るように撮るシーンも力業
だったようでよーやるわという感じでした
美術はとにかくすごかった
水死体も水を吸って膨らんでいたり
馬の死体もリアルで戦地の悲惨さグチャグチャさを
イヤというほど感じ取れました
で結局のところどうだったかというと
苦労してよく撮ったなあと言う感想が一番強く残り
デキのいい映画を観たという余韻がさほど残りませんでした
実験映画観た後ってこんな感じなんでしょうか
ストーリーの質や泣けるかどうかによらない
映像体験としての映画の存在価値を観る側が考慮できるか
どうかで評価が分かれるのかなと思いました
先日のキャッツやマサラムービーのように
ビジュアルやミュージカルシーンを許容出来るか出来ないかで
変わってきますよね
とはいえこうした野心的な挑戦は今後も期待したいです