「【走れ!スコフィールド 危険極まりない戦場を共に走りぬける感覚、半端ない臨場感に全身が包まれる作品。】」1917 命をかけた伝令 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【走れ!スコフィールド 危険極まりない戦場を共に走りぬける感覚、半端ない臨場感に全身が包まれる作品。】
エリンモア将軍(コリン・ファース:ワンシーンだけの登場だが、”あの”声だけで存在感あり)から、撤退すると見せかけたドイツ軍の罠を最前線で戦うマッケンジー大佐(ベネディクト・カンバーバッチ)率いる第2大隊に伝えるべく選ばれた、スコフィールド上等兵(ジョージ・マッケイ:好きな若手俳優、主役に抜擢されて、とても嬉しい。)とブレイク上等兵(ディーン=チャールズ・チャップマン)。
当初、”スコ”は何故自分が?と躊躇っていた。
ブレイクと塹壕を進む際も前線のレスリー中尉(アン・スコ:久しぶりである・・)から、余りの無謀さに、あきれられている。
募る不安・・・。
観ている側も、いつの間にか彼ら二人と塹壕を進む。
ドイツ軍が遺した地下に掘られた基地でネズミに遭遇したかと思ったら、トラップに引っ掛かる二人と椅子から飛び上がる、私・・・。
最前線の激戦地だったため、木々は殆どなくあちらこちらに砲弾の落ちた穴があり、そこに溜まった水の中には、腐乱した死骸が累々としている。
そんな中、”スコ”とブレイクは前へ進んでいく。
”そんな、隠れる場所も殆どないところを・・”と観ているこちらは、掌に汗を滲ませながら画面を食い入るように見つめる。銃弾が飛んでこないように・・と祈りながら・・。
そんな中、ブレイクは空中戦で撃ち落とされたドイツ兵を手当している最中に・・。
呆然とする、”スコ”。
が、ブレイクから託された言葉を胸に、偶々通りかかったスミス大尉(マーク・ストロング)率いる友軍に加わり、周囲から激励され再び一人で前進を始める。
ここから、映画のギアが一段上がる。
漸く、夜に目指す”エクースト”に到着したスコフィールド。
”エクースト”の建物は無残に崩壊し、炎を上げている。その風景は何か夢の中のシーンのように妖しく美しい。
言葉の通じない若い女性と親がいないという赤ん坊に出来るだけの食料を与えつつ(人柄が伝わる)、ドイツ軍の残兵の攻撃を交わしながら夜間更にひたすら駆けるスコフィールド。
川に落ち、濁流の中、木に掴まり流されながら辿り着いた地に流れる美しい歌声。聴き入る兵士達。
彼らはマッケンジー大佐(ベネディクト・カンバーバッチ)率いる第2大隊の最後尾の部隊であった。
スコフィールドはマッケンジー大佐に伝令を届けるために、更に走る、走る。殆ど寝ていないが走る。観ているこちらも心の中で一緒に走りながら、何故か涙が出て来る・・。
漸くマッケンジー大佐に伝令を届けた後、ブレイクの兄、ブレイク中尉(リチャード・マッケン)を探し当て、ブレイクの形見を兄に渡す場面も”ぐっと”くる。
そして、スコフィールドはブレイク中尉に尋ねる。”彼のお母さんに手紙を書いても良いですか?”と。そして、ブレイクがいかに良い男だったか、彼は私の命の恩人ですと伝えたいと。
一人、木の根元に座ったスコフィールドがそっと胸から出したモノ。そして、ソレに書かれていた言葉を読んだ時、涙が溢れてしまった。
ー 今作は、サム・メンデスが拘った撮影方法と、それに応えた撮影監督ディーキンスに話題が集中している感があるが(実際に、映像から伝わる臨場感が半端ないので、”スコフィールドと一緒に走っている”感覚になってしまった)、物語としても見応えがある。(たった一日の出来事を描いているので、複雑さはない。清々しい位シンプルである。が、面白い。)ー
第一次世界大戦だからこそあった”伝令”にスポットを当てた着想も秀逸である。
<今作は、サム・メンデスが実際に祖父から聞いた体験談が基だそうである。戦争の愚かさは時が過ぎても変わらない。
スコフィールドは我々に戦争の愚かしさを伝えるために、懸命に一昼夜走り続けたのかもしれないな、と思いながら劇場を後にした。>