「考えさせられました」すばらしき世界 syuntokiさんの映画レビュー(感想・評価)
考えさせられました
始まって、わりとすぐに全裸になるシーンがあるのです(背中側ですけど)。そこまでは「役者さんって大変なお仕事だなぁ……」みたいな感じで観ていたのですが、話が進むにつれ役所広司さん演じる元ヤクザの「三上」という人物に、すっかりと魅入ってしまいました。声色、目つき、表情、しぐさ。刑務所の中で見に着けさせられた整理整頓の習慣、歩くときは手足を大きく振って、返事も大きくはっきりと。
実話に基づくお話とのことで、三上の母親探しは叶うことがありませんでしたが、一度、社会から外れてしまった人が刑務所から社会に戻ること大変さや、社会に適合するために自分を律することの難しさ、葛藤、そして周りの協力も必要なのだということが伝わってきて、とても切なくなりました。終盤、障がいのある人を心無い言葉でバカにする施設職員のシーンが出て来るのですが、元ヤクザだった三上が何とも言えない表情で感情をこらえているのを観ると、犯罪者と言われて肩身の狭い思いをしている人たちよりも、よほどひどい言動をしているな、と、ハッとしました。
心臓を患っていた三上は、最後、畳の上で花を握りしめて絶命します。その命の灯が消えゆく様が、ゆったりとした時間とそよ風で描かれていたのに加え、周りでサポートしてきた人たちの悲しみも丁寧に描かれていて、涙腺崩壊の映画でした。機会があれば、一度は観ていただきたい作品です。