劇場公開日 2021年2月11日

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「二律背反」すばらしき世界 ABCDさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0二律背反

2022年5月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

人は結局更生できなくて、また繰り返すっていう落ちじゃなくて良かった。しかし、障害の子に対する悪態を許す選択をせざすをえない現実は複雑。どちらの方が良いという話ではなく、そういう世界の話。

実際に半数がまた刑務所に戻ってくる現実は確かにあり得る。三上は周りの人に恵まれたから良いものの。一歩間違えれば、再びあの独房で過ごすことにもなったかも。
だからこそ、周りの人の優しさが胸に沁みる。

三上が突然感極まって泣くいくつかのシーンが印象的。
一つ目は刑務所をでて保護してくれる夫婦にご飯をご馳走になっているシーン。ここでは彼らの優しさに対する涙か。
二つ目は養護施設で子ども達とサッカーをしていたシーン。ここでは昔の懐かしさと母親に会えない悲しみ。
三つ目は障害を持つ同僚から花を受け取るシーン。このシーンが1番示唆的で、今の生き方が本当に良い生き方なのか、まだ迷いのある気持ちが読み取れる。

最後、重苦しい雰囲気の中、青空に浮かぶタイトルコール『すはらしき世界』はストーリーの空気と二律背反する。まるで視聴者に本当にこの世界は素晴らしいのかというのを問いかけているよう。

ABCD