劇場公開日 2021年2月11日

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「残酷な自分に気がつく」すばらしき世界 ミカさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0残酷な自分に気がつく

2021年6月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

人は純粋すぎると正論を言いすぎると、社会では上手くやっていけない。私達は自分の中にある正義と折り合いをつけながら社会の中で生きていき、いつしかそれは日常となります。

いじめはダメというけれど「仕事ができないくせに俺と給与が同じである」という理由のいじめであれば、なんとなく周りも許してしまう。ムショ帰りや障害者は仕事があるだけマシと思ってしまう。三上の様な生産性のない人間は感動コンテンツとして消費することがいいことだとされてしまう。

本作を鑑賞していて、己の中で気がつかない間に醸成されていた『生産性至上主義』の残酷さに改めて気づかされてしまいました。生産性の無い人はとことん排除する社会。最も象徴的なのは、三上ですらも生活保護を受給したがらないシーンにありました。行政のネガティブキャンペーンが隅々まで行き渡ってますね(嫌味です)。

でもこの構図は恐らく変わらないだろうし、このままの社会だと今後もっと加速するのではないかと思います。

三上の身許引受人やスーパーの店長をはじめとする人情に厚くお節介を焼く人間は、世の中では極少数です。それに、政府が犯罪者を本質的に自立させようと考えれば、普通はIT技術とかを学ばせるのではないでしょうか。今時あの技術を政府が学ばせているのも、利権絡みか、単に受刑者を馬鹿にしているだけかと勘ぐってしまいます。そんな世の中でこのタイトルは、なかなかパンチが効いていると思いました。

ミカ