「ポアロの経歴って??」ナイル殺人事件 カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
ポアロの経歴って??
ナイル殺人事件はピーター・ユスチノフ版を何度も観るほど大好きな映画であり、本作ケネス・ブラナー版も上映をずっと待ち望んでいた。
しかしながら楽しみにしていた反動もあり、どうしても納得いかないシーンが目についてしかたなかった。
推理映画の見せ場である最後の謎解きシーンがあまりにも早口の説明で簡単に済ませてしまったことは非常に残念に思った。
遺跡で石を落としたことを指摘されただけで犯行を認めてしまい、殺人についても多少の足掻きはあったもののとても決定的とは思えないような証拠であっさりと犯行を認めてしまった。
一つ一つ理詰めで有無を言わせない証拠を突きつける事で、相手を認めざるを得ない状況まで追い詰め、鑑賞者もそれぞれのシーンを思い出しながら劇中登場人物達と一緒に納得していくというこの手の映画の醍醐味が味わえなかった。
またオッタボーン夫人が作家から歌手に設定変更されているが、白人から黒人になっていることもよくわからなかった。
時代設定上、当時の上流階級の結婚式で歌手とはいえ黒人が一緒に同行するというのは、いくら姪が新婦とクラスメイト(これもどうかと・・・)とは言え不自然極まりなく、素直に受け入れる事ができなかった。
先日観たウエストサイドストーリーでもオリジナルでは「男勝りの女の子」が「男性の心を持った女性」に書き換えられていたが、映画の設定でもSDG‘sに配慮しないといけないのかとガッカリさせられた。
ポアロが農家出身で出征し顔に大怪我を負ったというのも初めて知った。
髭程度では隠しきれないような大きな傷を顔に負っていたが、これはオリジナルの設定なのだろうか?
元警官で退任後、第一次大戦時にベルギーからイギリスに移ったというのが自分の記憶だが、何故小説でも書かれていない重大な経歴をこの映画で付け加えたのかは非常に不可解だ。
ケネス・ブラナーの製作、演出意図としてストーリーや謎解きよりも演劇人として人間模様を重点的に描きたかったのかもしれないが、自分には合わなかった。