「人はどこまで信じ合えるか」ラーヤと龍の王国 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
人はどこまで信じ合えるか
ディズニーの新作ながら全くのノーマークで、数日前までその存在さえ知らなかった本作ですが、「ディズニー作品にハズレなし」と信じて、予備情報ゼロのまま公開初日に鑑賞してきました。
ストーリーは、龍によって魔物から守られたものの、人々の争いで今は五つに分かれてしまった王国クマンドラを、龍の石の力によって再び平和な一つの国にしようと旅をする、ラーヤの冒険と成長を描くというものです。竜の石のかけらを探し集めるというドラゴンボール的(またはアベンジャーズエンドゲーム的)展開をメインストーリーに、ラーヤとナマーリの関係から「信じることの大切さ」を訴えます。わかりやすい展開とシンプルなメッセージがストレートに響く、大人から子供まで楽しめる、これぞディズニーといった作品です。
ストーリーの大筋は読めてしまいますが、序盤で描かれる幼き日のラーヤとナマーリのエピソードを伏線として、終盤でしっかり回収するあたりはさすがです。それを、無駄なシーンを排除し、流れるようなテンポで淀みなく描きます。ただ、テンポがよすぎて勢いで押し切られた感があるので、ラーヤと仲間たちとナマーリの変容には、もう少し尺を割いて、観客を納得させるシーンがあってもよかったのではないかと思います
映像は言わずもがなの美しさで、水や砂ぼこりまでリアルに描写されていて臨場感たっぷりです。キャラクターも、豊かな表情と滑らかな動きで、実際に生きているのではないかと錯覚するほど、いきいきと描かれています。中でも、前半のお気に入りはトゥクトゥクです。大きな体と愛らしい表情に加え、乗り物になるというアイデアが秀逸でした。そして後半は、なんといっても赤ちゃん詐欺師。赤ちゃんらしからぬ態度とコミカルな動きがたまりませんでした。
本作も大人の事情のためか、行きつけの映画館では吹替版のみの上映でした。字幕版で観たかったのに残念でした。ラーヤ役の吉川愛さんは、十分に及第点の演技なのですが、やはりプロの声優さんに演じてほしかったです。
昨今の自国ファーストの風潮やコロナによる分断が気にかかる、こんな世の中だからこそ、こういうシンプルに訴えかける作品が心に響きます。しかし、「人を信じる」というこんなシンプルなことが、実はとても難しいのも現実。ラーヤのようにまず自分から相手を信じる人でありたいものです。