「血の繋がりと心の繋がりのお話し」ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密 リオさんの映画レビュー(感想・評価)
血の繋がりと心の繋がりのお話し
王道のミステリーは苦手なほうなのだが、このサイトでの評価が高めだったので思わず鑑賞。結果はなかなかの満足度だった !
最近見たミステリー物だと、 「9人の翻訳家」と「Good Liar」があるけど、総合評価で言うならこの作品が一番よかったかな。 理由は、鑑賞後の余韻として、現実社会への繋がりを感じられたから。 具体的には、「血の繋がりと心の繋がり」の問題。 謎解きとトリックの巧妙さは、3作ともに三者三様の面白さがあって甲乙つけがたいところなのだが( 本作なんかは想定犯人がそのまま犯人だったし、そこに大きな捻りはなかった)、じゃあ何でこの作品がいいのかなって考えてみると、やっぱり金持ち爺さんが最後の最後に心の繋がりを大切にしたから。
あの財産贈与策は、血の繋がった家族を本当に愛した上で、あえて茨の道を提示したものだとも取れるけれど、そうでは無かったんじゃないかな。 強いていえば、家族の長としての責任感からの判断だったんじゃないか。 実際、爺さんの直接の死因は、心の繋がりを重視した結果だったし。
ポップテイストで、かつトリックの種明かしにばかり目が行きがちな作品だけど、本筋としては道徳だとか人間愛だとか、人の本質を突くテーマをちゃんと扱っているあたりに個人的にはグッときてしまうのだ。普段からまじめに働いていれば、体に染み付いた感覚で、直感的に取り間違いはしないというところも好きだったな。
( 本作では重々しく描いてはいないけれど、「血の繋がりと心の繋がり」のテーマについては、是枝裕和監督が 「そして父になる」 や 「万引き家族」 、 最新作の「真実」などで何度も描いてきた深いテーマだよな~って、私の余韻はどこまでも広がってしまうのだった。 )
映画館を出た後に、家へ帰ってからも尾を引く余韻の大きさって、案外いい映画の条件だったりするよなぁと改めて考えたりした。
最後に、大婆さまが遺産相続の結果を聞いた後に、「ケケッ」って笑ったシーンが個人的には好きだった。(笑) あとはやっぱりラストシーン。 爺さん愛用のコップを握りながら、2階から皆を見下ろすシーンが、新たな立場を象徴していて印象的だった。