わたしの叔父さんのレビュー・感想・評価
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興味深く観ました
小津安二郎を敬愛している監督だという予備知識を得ていたので、その観点からも興味深く観ることができました。カメラは常に固定されていました。ことさら劇的に描くことはせず、シンプルに淡々と進行しました。さすがにローポジションをとる必要はありませんでしたね。
それは置いておいて、デンマークと言えば酪農王国と地理の授業で習いましたが(何年前のことだ)、小規模農家の後継問題があるのだということが分かりました。主人公の場合は叔父以外に身寄りがなく、さらにその叔父は障害を持っている。非常に厳しい条件のもとにあり、獣医になる夢や恋愛への希望が遠ざけられてしまう。日々思いを抑制することによる心の摩滅が察せられて、観る者を辛くする。
最後に恋愛相手?にお尻を向けたのは何の意思表示だったのか。こんな私でも愛することができますかという問いなのか。私は農業と叔父を選択するので諦めてくださいという意思表示なのか。
予告編からずっと観たかった映画、期待通りの佳作
デンマークの寒村で体の不自由な叔父と一緒に二人で酪農と農作を営む若い女性クリスの話。クリスは小さい頃に家族と死別した後、叔父の家で暮らしてきたことが分かる。クリスは聡明で獣医学校にも通っていたことがあり、乳牛の世話はお手の物。食事を作り、牛の世話をし、農具を修理し、叔父の世話もする。寝る前には叔父とスクラブル(英語の単語ゲーム)を楽しむ寡黙で淡々と過ぎていく毎日。映画の展開も淡々としているのだけれど、クリスや叔父の表情や仕種が多くのことを語っている。獣医になりたい夢があったし、意中の男性もいるのだけれど、クリスは叔父との生活から離れられない。近所に住む獣医は彼女の資質を見抜いてコペンハーゲンに連れて行こうとする。意中の男性とはホテルのレストランで食事に誘われ、めいいっぱいおしゃれをするのだけれど・・・・。こういう映画は監督と俳優も難しいと思うのだけれど、ちゃんと肝心なところで、クリスや叔父の機微が見事に描かれていて素晴らしい。おそらく小津監督の作品が好きな監督なのだろうけれど、それはクリスの履いているアシックスのスニーカーや、コペンハーゲンの回転寿司(らしき店)、食事中にテレビからながれていくワールド・ニュース番組(北朝鮮のミサイル発射など)など、日本が少し描かれているところからも分かる。体調が悪いと、単調で眠くなるかもしれないけれど、我慢してじっと注意深く観る価値のある映画。
何が残るのか?
12年という年月で培った、親子以上の愛情という点は非常に共感できるものの。
病的な依存までいってしまっているような、主人公の行動に「?」。
おそらく叔父さんは生きてあと数年。
娘が自分のやりたいことを放り出して、叔父に対し献身的に生きたとして、その先の人生に何が残るのかが疑問だった。
介護だけで生きてきて、気づけば30代後半とかになってたら、そこからどうするのか?
という考え方をしてしまうのは、私が何も持たない日本人だからか?
想像するに、国土面積の63%、260万haが農地である、「農業王国」「農業先進国」とも呼ばれるデンマークという国の、農業に対する誇りが詰まっているのかもしれないとも思った。
残っている「農場」こそが生き甲斐といえなくもない。
絵だけで観せる映画の力
どうしてだろう、セリフが極端に少ないのに見入ってしまった。描写だけをつないで語るとは、映画の力だと認識した。
欧州の田舎、農業従事者の生活に入り込んでしまう。
こういう映画もいいもんだ。
それにしても、恵比寿ガーデンシネマが休館とは寂しい。結構雰囲気が気に入ってた。この映画と同じ雰囲気です。
これも一つの愛の形・・・なのかな?
デンマーク映画、興味津々で鑑賞。
いやぁー、オープニングからしばらくの間驚きが止まりませんでした。
全くセリフがない。放送事故じゃないか?というくらいに淡々と日常が映し出されるだけ。
でも丁寧に丁寧に、雄弁に語る映像。もう、主人公とおじさんの日常が手にとるようにわかります。
この調子が反復されていくのです。毎日毎日。ほぼ寸分違わず。
その演出があるからこそ、些細なほんの些細な「ありがち」な出来事が大いなる事件になっちゃったりするわけです。その演出があるからこそ、絶妙な笑いを生んだりします。
非常に単調なはずなのに、淡々とした日々を描いているだけなのに全く飽きさせない展開。
この監督の手腕はさすが!と言わざるをえないのではないでしょうか?
些細ではありますが確実に生まれる「ギャップ」をうまく使って、人の心の微妙な部分もうまく描いているのではないでしょうか?緩急が絶妙です。
ストーリーは普遍的な日常を生きるクリスの心のザワザワを描いた良作です。
ザワザワはが前述のように、セリフ少なくも雄弁に映像で語ってくれます。穏やかに心に染み入る物語になっています。年頃のクリスのザワつく日常に、昔からお世話になっている叔父さんがいい具合に絡んでくるんですね。これが本当にユーモラスなんです。
けど、じんわりと伝わってくる叔父さんの親心とクリスの感謝の気持ち。
よくありがちな「選択の葛藤」はないんです。この辺りが面白いです。
色々ありますが、クリスの優先順位は決まっているんだよなぁ。
知り合った男性に「さっさとすませて!」と差し出す姿は
明確にクリスの優先順位を表してるよなー。そんな大事なことより大切なんだもん叔父さんが。
うーむ、けどなぁ恋愛じゃないよなぁ、恩義なのか?自分がいないと駄目なんだと言う勝手な思い違いでもない。使命感?・・・?うーん。
で結局僕はラストのカットでこれか!って思いました。
叔父さんの知らなかった一面を垣間見たクリスの表情。
その絶妙な表情は、「叔父さんと一緒にいると楽しい発見ばかり!あー楽しい!」って言ってるようでした。こんな愛の形があってもいいんじゃないかな?
「好き」がつまった映画
「好き」がつまった、良い映画でした。
意地悪な人がどこにもいない。
毎日が同じようだけれども、少しずつ変化していく、
そのさまが牛と共に素敵に描かれている。
口うるさい姪と素直に聞く叔父さんがかわいかった♪
叔父さん、、、イイぜ♡
【行間/沈黙】
二人の会話の行間のような沈黙の場面には、多くの言葉が詰まっている。
恵比寿ガーデンシネマが、恵比寿三越の閉店に伴うガーデンプレイスの改装で、2月末に一時閉館となる。
その前のロードショーの最後の一本だ。
ピーターゼン監督が寄せた挨拶の映像が映されるのだけれど、「閉館は残念なことだが…」と、いやいや、一時休館なんだから、そんなこと言わないでと😁。
映画に戻ります。
背景にある、クリスの兄弟の死と、後を追う父親の自殺という大きな事件や、クリスが獣医を目指していた事、叔父さんの病気の事なども、ほんの少し会話の中で語られるだけで、過去は遠くに封じ込められている。
二人の沈黙は、会話のない会話だ。
そう考えると、これは、やはり、小津安二郎へのオマージュのような気もしてくる。
そして、この沈黙は、実は饒舌なのではないか。
二人が見せる葛藤や、強い意志、決意…、思いやり、優しさ。
最後の場面、クリスと叔父さんの行く末は、観る側に委ねられているのだ。
自分の人生と照らし合わせて、一人ひとり違う未来が見えているのに違いないのだ。
眠気と戦いながら。
全編を通して音楽もなくセリフも少なく、淡々と日常が描かれている。特に冒頭は眠くて眠くて、、。
叔父さんとクリスとの生活に些細なユーモアやふふっと笑ってしまうような出来事が非常に愛らしく感じる。
他者から見たら縛られていて不自由に思える生活も、クリスにとっては自ら選んだ道であった。叔父さんが何よりも大切で共に暮らすことがクリスにとっての幸せなのだろう。
眠気と戦いながらも、観てよかった。
年月の重み
正直言って、110分もある映画なのに、「これだけ?これで終わり?」だった。
記憶違いかもしれないが、「12年間で寝坊は初めて」という叔父の台詞があったと思う。
その長きにわたって、叔父と暮らしてきた、そして、酪農家として生きてきたという、“年月の重み”が、クリスの選択を決定したということなのだろう。
獣医もマイクも、いや、叔父ですら、クリスの姿に対して否定的に見えるのだが・・・。
単純だが、深いテーマであった。
その他、「酪農王国デンマーク」の実態が、少し垣間見えたのは興味深かった。
また、G20での抗議デモから北朝鮮のミサイルまで、時勢とは無縁な田舎の酪農家が、テレビで世界のニュースを見ているシーンは、なぜか“ほのぼの”していて面白かった。
最優先事項
すデンマークの田舎の農村で、足の不自由な叔父と二人、酪農と麦作の農家を営む20代後半の女性の話。
あらすじには27歳とあるけれど、両親を亡くし14歳で叔父さんに引き取られ15年?言葉を交わさず共ナイスコンビネーションで日常生活を送る二人。
介助をしつつ働き続ける主人公と叔父さんのやり取りは、ちょっと口煩く心配性な娘と、好きな様に生きて貰いたいと願う父親という、本心で互いに想い合う本当の親子の様。
感情表現があまり得意ではなく、極端に感情が振れる主人公が、変化を恐れつつも、思いを行動に起こす方法を模索したり、それを察した叔父さんが背中を押したり、すっ惚けた様なやり取りを時々ぶっ込みつつみせられて笑ったり、もどかしくも胸がほんのり熱くなったり。
フラット、というか振り出しに戻る的な終わり方で、もう少し兆しでもみせてくれたらとは感じたけれど、欧州映画らしいといえばらしいのかな。
牛舎の牧草の上で電話をするシーンがなんだかわからないけれどお気に入り。
そして、モブキャラだけど猫のかわいさが神がかっていて、声が漏れそうになったw
派手さはないが...
最小限に抑えたセリフと音楽。
同じことが繰り返される日々の中、時折変化する生活と主人公の気持ち。地味な主人公がハッとするほど美しくなる瞬間はキャスティングの素晴らしさか。
派手さは全くない映画だが、美しい風景とともにじんわり心に沁みてくる。
ハマスホイの絵画の世界を見たような
凛として生きる女性の日常の、ぴったりとパズルがはまっていくような営みの描写が好きだ。(「シェープオブウオーター」の時もそうだった。あれも地味目な映画だった。)なので、冒頭から惹きつけられた。しかも、その明るくないが美しい寝室の設えのカットを見て、平原と大空と光の静止画を見て、「ああこれは昨年コロナのために展覧会が中断してしまい残念ながら本物を見れなかったデンマークの画家「ハマスホイ」の世界だと自己満足。
北朝鮮の核実験ニュースが聞こえてくるまでは80−90年代の話かと思ってしまった。あまりに時が止まったような生活ぶりに。登場人物も少なくて、小規模酪農とはいえ牛や豚の数の多さが印象的だった。
密室のような村で、特殊な事情を抱えた主人公の周りで起こる話でありながら、テーマや随所のディテールは普遍的。パンにはヌテラ、初デートを申し込まれたときに感じる軽い動機の懐かしさ、コテで作ったカールヘアの華やかさ。そして印象的だったのは体の不自由な叔父を心配する彼女の態度・心情・言葉遣いがまるで「お母さん」のそれになっていたことだ。きっと二人は「親離れ・子離れ」するのだと思う、近い将来。どんな形であれ。
静かで確かな愛情
舞台はデンマークの片田舎、茫洋とした景色が広がる静かで薄暗い町。展開するストーリーも実に静かだけれど、心が温かく締め付けられ、しばらく席を立てなかった。
序盤はクリスと叔父のつつましく単調な日々毎日がサイレント映画のように繰り返され、言葉の少なさから最初はクリスが生活に不満を持っているのかと思ったが、徐々にその生活と、何より叔父を愛していることがひしひしと伝わってくる。
そして、叔父さんもクリスを心から愛していることが静かな画面から溢れるように伝わり、その様子だけでぐっときてしまった。
中古の聴診器やヘアカットのくだりでは、温かく姪の背中を押す叔父さんと複雑ながらはしゃぐ気持ちを隠せないクリスの様子が特に愛おしい。
デートに付いて(連れて)行っちゃうところなんかは、全体的に重め雰囲気な分クスッと笑えてとても良かった。
愛しているからこそ単調な生活から送り出したい叔父(親)と、愛しているからこそ留まりたい姪(子ども)の関係は普遍的なテーマかもしれないが、その心の機微を鮮やかに描き出してくれていたと思う。
誰かの目線というのがあまりなく、常に引き気味のカメラワークも、ドキュメンタリーのようで作品の魅力を見事に閉じ込めていたように感じた。
他のキャラクターを含め、登場人物が皆温かいことがより顛末を切なくさせる。
ちなみに祖父母っ子の私は叔父が愛おしすぎて見るのがつらいまでありました。
ふらりと見た作品だったけど本当に良かった。何度でもじっくり味わいたいです。
とても好きな空間、そしてありがとう恵比寿ガーデンシネマ
主人公のクリスは農場を営む叔父と田舎で生活している。叔父は足が不自由であり半ばクリスは介護も担っている状況である。
なぜ叔父と暮らす事になったのかというとクリスが14歳の時に兄弟を失いそれを追う様に父親が自殺をし独り身になったところ叔父が引き取ってくれたそうだ。
その背景もおそらく作品が始まって30分くらい経ったくらいで叔父の知人の獣医がそのまた知人との会話で知る事となる。
この作品はクリスと叔父が必要以上に会話をしない為中々彼女らの情報が入ってこない。
ただしその描写がこの作品の最大の魅力でもある。
両者とも口数が少ないため、会話が一方通行であったり、時には問いかけに対して返事がない事も多々ある。
ただ次のシーンではその問いかけ通りの行動描写に移っており必要以上の言葉を発しなくても互いに理解し合いそして尊重しあっているのな伝わる。
またクリスの生活は毎日が決められた時間に、同じような行動を淡々と繰り返す日々である。
表情が変わらない為それらも序盤には不満があるようにも勝手に思ってしまったが、ストーリーが進むにつれて彼女自身がその生活を望み、そしてちょっとした変化に不満を覚えたりストレスを感じたりする姿が見受けられる。
もちろん今の生活を送る事で彼女自身他にもやりたい事を犠牲にしているのも見受けられたが、それをひっくるめて彼女は今の生活を望み、そして叔父を愛しているのが伝わる。
叔父も叔父でクリスに事細かくあれこれ言われ行動を制限され、時にはストレスに感じている所もあったがそんな口うるさいクリスの姿もひっくるめてクリスを愛し信頼しているのが伝わる。
この2人は言葉数は非常に少ないが互いに愛し信頼しあってるのがストーリーが進むに連れて感じ取れるのがこの作品の美しさでありとても魅了された。
この"静"なる空間を個人的にもとても好きな空間であり、その空間を大切に美しく描いてくれるこの作品は自然と好きな作品となってしまった。
この"静"なる空間は僕だけではなく日本人が好む空間ではないか。であれば自然と日本人ウケの良い作品になるのではないかと感じた。
クリスがここまで叔父を愛し、自らが犠牲になっても叔母に尽くすのは父親を失った時に、そして引き取られた時に余程親切にしてもらい嬉しい気持ちがあったからなのかな想像しながら観賞しそして作品が終わる。
エンドロールも音がなく静かに終わりとても温かい気持ちで劇場を後にすることができた。
改めて振り返ってもこの2人の関係性は素敵であり、とても憧れる関係である。ただこの関係性は余程の信頼関係がないと成り立たない関係でもある。だからこそ美しくそして魅力ある描写であった事が改めて感じる。
この作品を持って僕がよく利用する恵比寿ガーデンシネマの新作公開は最後となり、2月末にて一旦休館となる。再館の時期は現時点では未定であり、好きな劇場の一つのため寂しく思うが最後にこの様な素敵な作品を観ることができとても感謝の気持ちでいっぱいだ。
画は口ほどにものを言う
まるで絵本のような映画だ。
全編ほぼセリフも音楽もなく、淡々とわたしと叔父さんの日常が繰り返されていく。ドキュメンタリーのよう。普通だったら他人からしたら退屈な映像のはずが、何気ないやりとりからふたりの関係がにじみ出てきて身近で微笑ましくなる。そうだ、本来人間同士が織りなすリアルこそがドラマなのだ。事実は小説よりも奇なり。
それもそのはず。ふたりは実の叔父と姪らしい。そしてその叔父さんが実際に生活している農場で撮影したようで、飾らない現実がそこにはある。
現実と理想、身寄りへの愛情と自由への羨望との間のジレンマを佇まいだけで見事に描いている。
良くも悪くも東京国際映画祭のグランプリらしい作品で、チャレンジングなアプローチで称賛に値するものだとは思う。ただ…こういう系は賛否両論か評価が高くなりやすいが、こういう映画も必要だと思いつつ、素直にやっぱり自分はもっと分かりやすくて純粋に楽しめるエンターテインメントを求めてしまう。
でもどうしてもいつもハリウッドか邦画に落ち着きやすい映画事情に、幅広い可能性という一石を投じてくれる貴重な機会として毎年この映画祭を楽しみにしている。
2019 32nd TIFF
笑いながら泣いた。
このタイトルが示すとおり、名コメディ映画の如く、味わいある笑いを含んだ作品だった。
介護をテーマ?農業問題?恋愛もの?この映画に対してあらゆるレッテルを貼ろうと必死に思いを巡らしたけれど、その思いをすべて優しく包み込みながら、ポイッと捨てられてしまうような面白さ、内容の深さが想像以上で、印象的なエンディングを迎えてなおかつ、頭の中ではその続きを勝手に夢想してしまった。
映像も素晴らしくて、遠景の自然美にはことごとく魅せられたら。
主演の彼女と登場する叔父さんは実際の叔父と姪だという。どうりであの反発しながらも互いを信頼している自然な雰囲気を作り出せているはずだ。あの言い争いや優しさは、恐らく実際の生活において、どこかしらで目にする光景なのではなかろうか。それぐらいナチュラルで、心を揺さぶる。
こんな素晴らしい作品のワールドプレミアを見ることが出来て、大変光栄だ。これはデンマークの一部の問題とかテーマであるかのようで、非常にワールドワイドな事柄だと思うので、世界中で受け入れられていくことを切に願うばかり。
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