劇場公開日 2021年1月29日

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「ハマスホイの絵画の世界を見たような」わたしの叔父さん kumiko21さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ハマスホイの絵画の世界を見たような

2021年1月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

凛として生きる女性の日常の、ぴったりとパズルがはまっていくような営みの描写が好きだ。(「シェープオブウオーター」の時もそうだった。あれも地味目な映画だった。)なので、冒頭から惹きつけられた。しかも、その明るくないが美しい寝室の設えのカットを見て、平原と大空と光の静止画を見て、「ああこれは昨年コロナのために展覧会が中断してしまい残念ながら本物を見れなかったデンマークの画家「ハマスホイ」の世界だと自己満足。
北朝鮮の核実験ニュースが聞こえてくるまでは80−90年代の話かと思ってしまった。あまりに時が止まったような生活ぶりに。登場人物も少なくて、小規模酪農とはいえ牛や豚の数の多さが印象的だった。
密室のような村で、特殊な事情を抱えた主人公の周りで起こる話でありながら、テーマや随所のディテールは普遍的。パンにはヌテラ、初デートを申し込まれたときに感じる軽い動機の懐かしさ、コテで作ったカールヘアの華やかさ。そして印象的だったのは体の不自由な叔父を心配する彼女の態度・心情・言葉遣いがまるで「お母さん」のそれになっていたことだ。きっと二人は「親離れ・子離れ」するのだと思う、近い将来。どんな形であれ。

Kumiko21