劇場公開日 2021年1月29日

「【淡々とした日常の中、少しの変化、心の機微の変化を的確に捉えた、静的作品。人生における”自立”とは、“共存”とは何かを観る側に静かに問いかけてくる作品でもある。】」わたしの叔父さん NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5【淡々とした日常の中、少しの変化、心の機微の変化を的確に捉えた、静的作品。人生における”自立”とは、“共存”とは何かを観る側に静かに問いかけてくる作品でもある。】

2021年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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ー デンマークの静かな農村地帯で、クリス(イェデ・スナゴー)は、下半身がやや不自由な老いた叔父(ペーダ・ハンセン・テューセン)と牛の世話をする日々。時に、夜中に子牛の出産に立ち会ったりするが、淡々とした生活を送る二人。クリスは、幼い頃に家族を亡くし(父は自死)、それ以来、叔父と暮らして来たのだ。ー

■感想<Caution! 内容に触れています。>

・クリスと叔父さんの毎朝の朝食を繰り返し描いたシーンが印象的である。
 TVから流れてくる世界情勢に耳を傾ける訳でもなく、二人で語り合う訳でもなく、黙々と食事をする二人の姿。
 クリスは、”数独”をしながら、朝食を摂っている・・。
 定点観測のようである・・。
ー 台詞も極小で、派手な音楽が流れる訳でもない。何事もない日常。けれど、豊饒な日常の風景だと、私は思う。ー

・そんなクリスが、教会で出会ったマイクに合唱に誘われる所から、少しだけ、物語は動き始める・・。
マイクにデートに誘われたクリス。
 はにかんだ表情でOKし、クリスは髪を整え、レストランで二人で食事・・、と思ったら、ナント!叔父さんが付いてきている。
 そして、クリスとマイクは差し向かいに座り、叔父さんは同じテーブルの通路側に”無理やり”席を作って座る・・。
ー 何だか、ホンワカとオカシイシーン。初デートについて行かないでしょう、叔父さん!。
 だが、これが違和感がないのである・・。そして、マイクは獣医師になりたいが、親に認めてもらえない・・と愚痴をこぼす。
 そして、3人は別れ際に自然に握手を交わす・・。そして、車から飛び出して来たクリスはマイクにハグする・・。良いシーンだなあ・・。ー

・獣医師、ヨハネスの存在も絶妙である。
マイクの影響で、獣医師に興味を持ったクリスとの関係性が、仄かなユーモラスを交えて描かれる。

<だが、ヨハネスの講演について行ったクリスは定期的な確認の電話に出ない叔父さんの事が心配になり・・。
 人生における”自立”とは、“共存”とは何であるという事を、観る側に静かに問いかけてくる静的で、詩的な作品である。

<2021年4月18日 刈谷日劇にて観賞>

■驚いた事
 ・ペーダ・ハンセン・テューセンは、イェデ・スナゴーの実の叔父さんであるという事。そして、役者ではないという事。
 成程、二人の絶妙なコンビネーションは筋金入りの本物だったのだね。

NOBU
レモンブルーさんのコメント
2021年11月10日

私も実の叔父と姪の共演ということを知って どうして そんな事が実現したのかな?と想像したのですが、この監督がまだ 新人という若さだった事で、もしかしたら 主演女優と元々 恋人であって、彼女が大好きな叔父さんの牧場に 監督を連れて行き、その牧場と叔父さんの雰囲気にインスピレーションを得て、この映画を撮ろうと思い立ったのではないか?と。😅

レモンブルー