わたしの叔父さんのレビュー・感想・評価
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反復と変化。そこに浮かび上がるユーモアと人間描写が素晴らしい
また北欧から秀作が届いた。長年二人ぼっちで支え合ってきた叔父と姪。冒頭からしばらく台詞は無く、まるでサイレント映画を見ているかのように、わずかな表情と単調な身のこなしだけで、もう何年も変わりばえのない農場の暮らしが描かれていく。かくも丁寧に刻まれる反復。だが映画における反復とは、やがて生じるズレの予兆でもあることを私たちは知っている。果たして、父娘のような二人に訪れる転機とはーーー。互いの幸せを願うほど身動きが取れなくなっていく、この踏み出したいのに踏み出せない、もどかしい関係性の描写が実に素晴らしい。時に身を切るように切なく胸に迫るものの、かと思えば笑っちゃうくらい辛辣であり、それでいて優しく、愛おしい。この匙加減がなんとも絶妙だ。何より魅力的なのは、深刻なテーマを扱いながらも、仄かなユーモアが作品内に絶えず光を宿し続けるところ。彼らに幸せが訪れますようにと願わずにいられない作品である。
静かな映画です
音楽も無し。
そっけない映画。
主人公は冒頭で脇の手入れくらいするが、それ以外は“女性”としての生活を諦めている。
クリスとの出会いなど小波はあったが、叔父に寄り添う暮らしを結局は選択する。
「ノマドランド」に感じた印象を思い出した。
静かな決意をもって“負ける”事を選択する人々。
幸せは不幸と同じくらい不安なものだ。
クリスと叔父さんは共依存の沼に首までどっぷり浸かっています。
この際叔父さんはどうでもいいですが問題はクリスです。どうすれば抜け出せるか。そもそものきっかけはやはり自分を残して長男の後追い自殺をした父親でしょう。まだ幼かった彼女はこの出来事を理解するにあたり、自分のことを価値のない存在、愛されるに値しない存在だと解釈してしまったようです(マイクの前で下着を下す行為もそのせいでしょう)。きっと彼女には自分のことをかけがえのない存在、他者と交換不可な存在であると認めてくれる誰かが必要だったのでしょう。そうでないと今にも自分が消えてなくなりそうで、バラバラになってしまいそうで怖かったのかもしれません。
彼女は酪農の仕事は好きですが、獣医にも興味があるし教会の合唱もやってみたい、自分に好意をよせてくれるマイクとのデートも楽しみたい。でも優先順位がどうしても下がってしまう。何故なら先ずは自分の存在だから。周りの人がいろいろ応援してくれてるのはわかるが怖くてもう一歩が出ない。この泥沼から脱出する具体的な方法は何だろう?やはり週に一度でも叔父さんから離れて外の世界に触れること、マイクとのデートやDr,の助手もいい。自分の内面ばかり見つめていた目を外の世界に向けること。過去の忌まわしい記憶と未来の不安は念の力で思考の外に追いやって今この瞬間に意識を集中すること、何故なら過去も未来も今この瞬間には関係ないし、そもそも存在すらしないから。
優しいクリスが救われんことを。
自然を映し出すカメラは固定、たった一度だけ、カメラは彼女と一緒に動く。
2021.2.12午前中に武蔵野税務署へ確定申告書類を提出。これで今年も税金の還付が受けられる。午後はUPLINK吉祥寺へ。
デンマーク映画「私の叔父さん」を観る。2019東京国際映画祭東京グランプリ作品。
脚の悪い叔父と27歳の姪が二人でやっているデンマークの乳牛農家の生活を淡々と描く。ただ淡々と描く。
朝5時30分起床。叔父を起こして着替えさせ農作業に着く。多くの牛の世話、搾乳、牧草の刈取り、機械の手入れ。そして食事。TVからは世界のニュースが流れている。叔父に文句を言いながらもどこか楽しい。そんな毎日が続く。デンマークの自然風景が美しい。
彼女の趣味は数独。毎日食事をしながらも数独をやっている。そんな彼女の父が死んでから12年も続く生活に、少しだけ波風が立つ。姪が教会で出会ったマイクにデートに誘われたのだ。しかし、・・。
デンマークの自然を映し出すカメラは固定だ。たった一度だけ、カメラは彼女と一緒に動く、走る。彼女の心の動揺を現す。
結局、いつもの日常生活が戻る。そして、また淡々とした叔父に文句を言いながらもどこか楽しい生活が繰り返される。
叔父さんと姪を演じた二人は、実の叔父と姪だとのこと。自然だった。
クレジットタイトルは無音だった。
大切な人を思う気持ちと過ぎゆく時間
ヌテラをたっぷり塗ったパンを朝食にし、おやつ片手にソファーでまったりするのが好きな叔父さんと、しっかり者の姪っ子クリスが暮らす田舎の酪農家のささやかな日々。
淡々としたやりとりに人間の匂いと温度があふれ本当の親子のような長い歳月、互いを必要とし大切にしてきたことが伺える。
そして避けては通れない老化と成長を実感する積み重ねを眺め、いつしか自分も含めた三角形を行き来すると透けてくるのは家族のなかにある〝自分のための人生〟だ。
クリスを邪魔したくない叔父さんの気持ちと叔父さんをどうしても守りたいクリスの気持ちが苦しくもあるが、この感情に向き合えるのは2人がそれまで幸せな時間にいた証なのかも知れない。
恩返しをやりとげてクリスはきっといつか彼女らしく羽ばたく。
そんな気がする。
近いほどみえにくいが実は限りある時間にある貴さ。
ゆっくりじっくり味わううち切なさや愛しさや感謝が胸を覆い、ふといつかのことを思い出したり、誰かに会いたくなる温かさをもつ作品だった。
夜明け前の二人
一見、高齢の叔父さんと若い姪のほのぼのとした酪農ライフが描かれた 心温まる映画のようだが内容はシビアかと思う。
単調な日々、そのお陰で二人は互いを見なくて済んでいる。
叔父さんは姪のこころの傷を、姪は叔父の身体的、そして姪の幸せのために自分を犠牲にできない という心理的な弱さを。
そんな中、姪に将来性のある仕事と恋愛のチャンスが訪れる。
彼等は互いを、そして自分の弱さを見つめることができるだろうか?
使い古された表現だが夜明け前が一番暗い。
ラストでの姪の視線にわずかな光を感じた。
とても美しく とても静かな作品
テーマとしてはあまりにも地味過ぎてどうかな…と少々不安がありつつも、観始めたとたんとにかく映像がきれいでのっけから引き込まれた。農村の寂しいながらもとても美しい風景はもとより、家屋内やスーパーの店内等々まで独特の美しい雰囲気で撮れている。日常を生々しさをそのままにきれいに撮る技術は神業の域。まったりストーリーなのに終始目が離せない。
会話が少ないのもこのテーマの中ではとても効果的。生活音や自然の音までもクリアに聴こえてくるようだ。最初の10分15分は、字幕がテレビの音声のみで会話が全くなかったくらい徹底した静かな創り込み。
配役的にも知っている出演者はいなかったが、皆本当に印象深い良い演技だと思う。主人公の気になる彼への想いもよく表現できていたし、その彼の少しまごついた仕草も絶妙。それを見守る叔父さんの遠慮がちな姿や、誕生日の聴診器のシーンなんかは、思わず涙してしまうほどだ。
全体を通して非常に評価されるべき作品だと思うが、個人的にはストーリー的にやり場のない寂しさが少なからず残ってしまったことと、なんだかちょっとイージーに感じてしまうタイトルが残念で、満点評価とまではいかなかった。
でもとにかく本作は、映像と音と役者の演技にはとことんこだわった良作であることには違いない。音のないエンドロールも、映像と音にこだわりぬいた最終形と言うべきか。
定点カメラで、ただ、ただ淡々と続く退屈な日常を覗き見する感じ。 残...
定点カメラで、ただ、ただ淡々と続く退屈な日常を覗き見する感じ。
残念ながら、そこに、希望や明るさ、ユーモアを見い出す事は出来ませんでした。むしろ、虚さ、諦念・・。
想像通りに、都合が良い時に倒れないでほしい。
私の感性が鈍いのか、何故、評価が高いのか謎が残った。
叔父さんが、父の死後、自分のことを救ってくれた事に感謝し、恩返しを...
叔父さんが、父の死後、自分のことを救ってくれた事に感謝し、恩返しをしたいことはわかります。叔父さんが、結局この姪に頼ってしまうこともわかります。
でも、この若者の将来を思うことが、一番と、子育てを終えて、この60代になって思います。
若い人の将来を潰さないように、自分たちのことはどうにかしないと、と改めて思いました。
デンマークの映画ですが、どの国にもあり得る、考えさせるストーリーでした。
わたしの叔父さん
のんびりデンマークの田舎の様子を眺めるのに素敵です。
話は半年前に観たのでうろ覚えですが、最後あと15分続きが観たかったと思います。
ちょっとセリフの少なさにヤキモキするかもですがアリかと思います!!!
クリスへの愛が溢れる。
当たり前に同じことを反復。
互いに語らずして成立する平穏。
突然訪れる些細で微かな自分の変化に、不安と戸惑いそして期待と希望が同時に溢れる。そんな演技がとてもチャーミングに感じられたと同時に、クリスを取り巻く叔父さんや獣医からも、その変化に対する喜びを感じられて、とても微笑ましく思った。
もったいない
開始から何分くらいだろう…セリフがないまま、淡々と2人の日常生活が映し出される。
起こして着替えを手伝い、朝食を用意する。
テレビのニュース番組(音声のみなのがまた心憎い)から、時代背景が少し垣間見ることが出来る。
家畜の世話をして、手を洗うクリス。
慣れた手つきで洗剤を移動させる。
そこへ叔父さんがやってくる。
もう全て阿吽の呼吸が清々しいほど。
ヌテラ好きの叔父さんは身体に障害が残っているが、内臓は丈夫らしい。
とにかくよく食べる。
夜はリビングでソファで横になりながらお菓子を食べる。そして咽せる。(叔父さん、それやめなさい)
そしてまた朝が来る。
少し過保護過ぎるかなと思えるクリスの介護。
自分を犠牲にし過ぎるし。
ヘルパーさんが来た時も、寂しそうではあったけど、もう少し行政に頼ってもいいのでは?と思ってしまう。
自分のやりたい事も恋も犠牲にしなくても、もう少し出来ることがあるのでは?と。
獣医さんの善意をもあそこまで無にするのは少し意固地な気もする。
歩み寄れる余地はあるのに、もったいないな、と。
叔父さんも、マイクに自分のやりたい事をやるように言っていたけど、現実問題クリスがいなくなったら困るわけだし。
ブツっと切れたようなエンディングだったが、それぞれの幸せを願わずにはいられなかった。
叔父さんはつらいよ』
『叔父さんはつらいよ』
日本には『PLAN75』があるからね。
2年くらい前に見て、今回が三回目だが、結論よりも、男の本性を見抜く女性の毅然とした態度が良かった。
兎も角、あの日本映画の『男は○ら○よ』が良いと言う方、こんな爺さんいたら、大変でしょ。
この表現だと、ヨーロッパでは賞取れないでしょうね。少なくとも!宗教観からヨーロッパては普通だと思う。先ずは、親族の二人が自殺している事に目を向けなければ駄目だ。そこが分かれば、彼女の行動が分かる。
日本の酪農映画の様に『子牛の誕生』て大団円を迎えるなんて臭い真似はしない。
一昨年のNO1だった。
追記
生き物と車を断捨離しなければ、自由に生きる事が出来ない。勿論、爺さんも。
ブレ無い単調さ・・・
酪農王国デンマーク、両親を亡くし叔父と暮らす若い女性クリスの牧場生活を只管、淡々と描写、セリフも少なくまるでドキュメンタリーのような映画だが、二人を気遣う周りの人々も温かい、ヒューマンドラマと言う点では昔の小津安二郎監督の作風を彷彿とさせるので日本でも東京国際映画祭のグランプリを受賞するなど受けたのでしょう。
感心するのは同じことの繰り返しをブレずに描き続ける作風、映画ならもっとドラスティックな事件とかロマンスを絡めて山谷を付けそうなものだが、迷いはするが芯の強い女性、クリスの生き様にリスペクトの念さえ起こさせるから恐れ入りました。
淡々とした生活の積み重ねが、とても大切な意味を持つという事を教えて...
淡々とした生活の積み重ねが、とても大切な意味を持つという事を教えてくれる作品。
ささやかな出来事や、誰にでも起こりうる事件を織り混ぜながら、日常をひたすら繰り返しているが、観ていて退屈することはなく、静かな映像が心地よい。
デンマークは日本と違い、学齢にはこだわらず、高校を卒業してからすぐに進学しなくてもよい。寄り道をしてからでも就学できる素晴らしい教育システムだ。
今がクリスにとって立ち止まる時間だと思うと映画の見方も違ってくる。獣医学部進学の権利を持つクリス。きっといつの日か、獣医という夢に向かって歩き出すのだろう。
叔父さんとの日常の穏やかなひとコマの終わり方、唐突だが印象的。そこに続く未来を思い描いた。
閉じていく映画 閉じていく人生
夕食時、いつもつけているテレビには、北朝鮮のミサイル、ヨーロッパへ流入する難民を伝えるニュースが流れ、世界に開かれた窓になっている。でも2人の生活には何の影響もない。そして最後にはテレビは壊れて、他の人とのかかわりもすべて拒んで、いよいよ2人の生活は2人だけの世界に閉じていく。
家族を失った生い立ちのクリスと、障害をもち孤独な身の上の叔父さんとの、相互依存的な関係はしょうがないのかもしれないけれど、あまりにクリスが失うものが多すぎる。温かさとか、優しさとか、この映画にそんなものを感じ取るのは違うんじゃないだろうか。
この監督、小津が好きなのだそうだが、小津の映画にも閉じていく何かを感じて、私は好きになれない。
叔父さんタイミング悪すぎるよー
せっかくクリスが単独行動し始めたところだったのにねー。前より叔父さんベッタリになってしまった。多感なときに亡くした父親を投影してんでしょうよね。しかし叔父さんいい人すぎる。ヘアアイロンのくだりが素敵すぎる。周囲の人たちもみんな優しくていいじゃない。なんの事件もない静かな映画だけど、数年後を見たくなる。
素晴らしい映画(ネタバレ)
エンドロールが始まって、ハッと気がつく。
最初から最後まで音は少なめだがエンドロールも一切音は出ない。
そして気がつく。つまり、毎日変わらぬ音の聞こえる日常を営むのが、この映画の結末だったのだと。
獣医への道はクリスが積極的に指向したわけではなく、ヨハネスがキッカケを作った。マイクとの出会いもクリスよりもマイクからの誘いがキッカケに乗ったのだった。
クリスが家を離れたくないのは自分達の牛のためではなく、叔父さんを理由に挙げる。
周りの人達が言うように、クリスの人生は叔父さんに縛られる必要はない。観客の中にもそう思う人は多いと思う。
でも、映画の結末はクリス側だ。
この映画の主題は、高齢化社会を含む現代社会の問題とも言える。昔であれば、ごく自然にマイクの実家のように4代も農家を引き継げる。
しかし、現代社会では難しい。優秀、有能な若者の選択を限定してしまっている。これが良いか悪いかは映画は言っていない。いや、華やかなシーンがないから、クリスも抜けたい気持ちはあるのかもしれない。
クリスがここから抜けない選択を取った事が描かれている。
或いはクリスはその選択に何の不満もないかもしれない。東京やコペンハーゲンのような大都市にいれば、公共交通機関でもみくちゃにされたり、スマホで時間を管理したり、人々と交流したり、身だしなみに気を遣ったりしないといけないが、クリスにはその方が苦痛なのかもしれない。
エンドロールが流れる直前の平和な日常が取り戻されたのを見て、観客は胸を撫で下ろすが、それで良かったのか、と考えさせられるのだろう。
音が情景を物語る作品でもある。
トースターのコイルの音が、タイマーのないトースターである事を物語る。車のシフトチェンジの音がマニュアル車で広大な大地を走る事を物語る。
一方で、マイクと景色を眺める時にも風が吹いたり、水鳥の大群が飛び交うが、風の音や鳥の声はせず、静寂が表現される。
ラジオは、物語が2018年のことである事を伝え、
デンマークの平原が美しいのも印象的だ。
デンマークは北極に近いので、夕食の後でも明るいのは白夜なのだろう。この映画はひと夏の日常であり、冬の厳しさは描かれていないことになる。
デンマークの美しい自然も描かれており、素晴らしい映画だと思う。
説明的セリフがほぼないのが、日常のルーティンを表現している。それに...
説明的セリフがほぼないのが、日常のルーティンを表現している。それにしても、ほぼ会話がない。景色が美しい。
ツンデレ。
デートの手助けをする叔父さん、
聴診器のシーンは美しい。二人の愛が切ない。
病院の中でも繰り返される日常。
ラストシーンは、互いが互いを探り合う視線が、互いに言及できない闇を写していてすごいと思う。
叔父さんは、彼女を縛りたくなかったんだろうけど、デートも邪魔するくらいだから、わざとコケたくらいにしかやはり思えない。3人でデートするあたりから、もう、ちょっと病的ではある。
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