NO SMOKINGのレビュー・感想・評価
全2件を表示
観て良かった
細野晴臣デビュー50周年記念ということで、六本木ヒルズで行われた細野観光にも行ってきた身としては、観て良かったと思える出来です。ほとんど知ってる話と知ってる画像、知ってる動画ばかりでしたが、唯一謎が多かった細野さんの父親について知ることができ、本当に良かったです。細野さんの音楽を知る上で、お茶目さと言うか、ユーモアと言うか、そういう趣向がどこから来ているのか知りたかったのですが、それがお父さんからだったのが良くわかりました。
今年は音楽家の自伝的映画がいくつかありましたが、個人的には、ボヘミアンラプソディーより、ロケットマンより、No smokingの方が面白かったです。
「戦後に生まれて良かった…」
細野晴臣御大のドキュメンタリー映画。確かに現在72歳、人生100年時代の現代に於いてまだまだ動けなくなる歳ではないだろうが、こうして記録を残すということの重要性をきちんと理解している方なのだとつくづく感じる。一時代を作った人なのだから“伝記”は後世の為ににこしらえるべきだし、今現在、その恩恵に預かった全てのファンとミュージシャンにとってもとても有難いものなのだ。
自分は、時代的には“YMO”の細野さんに音楽的に大変影響を受けた。小学校5年の時に始めてこの未来でSFチックな楽曲、しかも歌が入っていないいわゆるインストルメンタルのジャンルというものに、それまでの歌謡曲やジャパニーズポップ等にはない圧倒的な“宇宙感”にセンセーショナルを受けたのだ。劇中でも御大が語っていたように、野球帽を被った小学生が後から付いてきていたというエピソードは、強く合点がいく。それだけあの頃の小学生、しかも思春期を迎え始めた年代に於いて、それ程あの3人はヒーローだったのである。人民服、テクノカット、怪しい風貌、どれをとっても今までには存在しないスタイルやファッションがそこにはあった。そしてそれをプロデュースしていたのが御大という訳である。確かに、“教授”は楽曲、ユキヒロはライブやボーカル、さて、果たして御大は何をしていたのか、シンセベースだけだったようなイメージだったが、総合的に世界観を形成していたということとなれば、その天才的クリエイター振りに今作で振り返って、改めて敬意を表したい。
そして、その前身は日本で始めて日本語でロックを作り上げた“はっぴぃえんど”。これも又、とんでも無い神々なメンバー達との中でその個性同士を上手く融合した手腕なのである。こうして、日本の音楽シーンのシフトチェンジには御大が噛んでいる事実は正に驚愕であろう。
とはいえ、至って本人の“のほほん”“お茶目”振りの人格そのものが、この人の最大の武器なのかもしれない。世に言う“人たらし”の類なのでは思うばかりである。今作に随所に現れる緩めのおふざけシーンにそれが如実に出ていて、垣間見る多幸感を否応なしに感じるのである。
そして、今作に於けるベストシーンは、どこかのツアーでのゲストに、ユキヒロ・小山田圭吾が登場し、演奏途中で背後から急に教授が参加してきた場面。演奏曲はYMOの曲だったと思うのだが、曲名を失念してしまい未だに思い出せずにいる。大好きな楽曲の一つだったのだが、どなたか、今作を鑑賞した人がいるなら是非、ご教示下さい。お願いします。
あの頃に一気に飛ばされるノスタルジーと、御大の功績をしみじみ感じさせる、ファンにとっての垂涎の内容であった。
全2件を表示

