痛くない死に方のレビュー・感想・評価
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少し待てば、台風は必ず去ります
前半序盤、入り込めきれず…飽きてたが、中盤移行一気に引き込まれた。
死生観を想う時、誰もが悩む課題。
死が敗北、と云うのは確かになんだかオカシナ捉え方に感じるが…。終末期の理想、と掲げてしまうのも(覚悟が無いからなのか)シックリと受け容れ難く感じる。
勿論正解の無いモノなのは納得している。
それでもいずれは自身じゃなく、周りの誰かででも、必ず直面することとなる事象。ヒトゴトでは無いのだ。
直面をどこまでも回避して、できるだけ遠ざけても、必ず敗北する事は判っている。それでも辛苦を覚悟で逃げる(むしろ無駄に闘う?)より、穏健に受け容れるのが賢明なのか?
選択は自由なのだが………、本人の意思の自由ともならない事も少なくないのが現実……。
当人だけでなく、周りを巻き込むのは必至だから、難しい…。
将来は
尊厳死
家族による終末ケアはどこまで可能?
評論子自身、もちろん自分の「死に方」が分かっている訳ではありませんが。
しかし、多くのレビュアー諸氏が指摘するとおり、病院のベッドに縛り付けられて、挿管だらけの姿で亡くなりたいと思っている向きは、おそらくいないだろうと思います。大方は、本作のように、自宅で家族に看取られながら、静かに亡くなりたいと思っていることでしょう。
しかし、本作の登場人物のように「静かに自然に亡くなる」ことが必ずしもできる訳ではないことも、その一方で動かし難い現実です。
病死であれば、病苦からの断末魔の苦悶の姿ということもあるでしょうし(病院のベッドであれば、そういう姿を家族に見せることは最小限に抑えられる)、痰の吸引くらいてあれば、慣れてしまえば看護師などの医療従事者でなくても可能かも知れませんが、そんなに簡単なケアだけで済むという保証もない、やっぱり病院のベッドサイドでなければ出来ないケアというものもあることでしょう。
けっきょく、本作で言うところの「痛くない死に方」…つまりは誰でもが普通に自宅で最期を迎えることができるようになるためには(本作で中心的に描かれているような)訪問医療のあり方のいかんだけでなく、病苦を充分に緩和できる優れた薬剤の開発、医療知識の乏しい家族でも扱うことのできるケア機器の普及など…。ざっくり言えば「緩和ケアが家族にどこまでできるようになるのか」その点にかかっているように思われました。
その前途は、まだまだ遼遠だなあと思うと、少しばかり気が滅入ってしまいました。評論子は。
死に方の理想とは?
在宅で終末期の家族を看取る。
勉強になる知識がいくつもありました。
前半、在宅医の柄本佑が看取る肺癌末期の患者の死は
壮絶で見ていて苦しくなりました。
そこまで病院を拒絶するには、家族の死で相当に嫌な経験が
あったのでしょう。
柄本佑もショックを受けて先輩の奥田瑛二の指導を受けるようになり、
「人間を好きになれ!!」とアドバイスされて変わって行きます。
後半に出てくる肝臓癌の患者の宇崎竜童。
彼は死もネタにして、川柳をひねるユーモア溢れる人。
グッと画面が明るくなります。
この映画はとても勉強になる知識や教えがたくさんありました。
寝たきり患者への点滴。
……………痰や咳が多くなり、溺れたようになる。
私も母親が急性肺炎で在宅で看取りました。
在宅医の先生は当然のように、有無を言わせず点滴をしました。
そして2〜3日後には当然のように、痰吸引の機械のレンタルです。
ほぼ24時間の点滴の結果が痰が絡むのだ・・・と、はじめて知りました。
そして次々と電動ベッド、酸素吸入器を勧められました。
しかし母親は酸素もベッドも借りる前に闘病5日間で亡くなって
しまったのです。
在宅医療がすべて素晴らしい・・・とばかりは言えないと思います。
在宅医療でも収益を考える医師は多いと思います。
在宅で患者は住み慣れた家と優しい気心の知れた家族に看護される。
患者は確かに良いと思います。
しかし看護する家族は、食事、洗濯、買い物、掃除そしてさらに
入浴の介助と24時間、介護に振り回されるとしたら、
幾ら愛する家族のためでも体力的にキツくて辛いです。
だから入浴サービスや様々な介護サービスを併用する訳ですが、
人間関係や経費含めて簡単な事ではありません。
家族少なくても一人は係りっきりになる必要があります。
義兄は膵臓癌で病院で亡くなりました。
5ヶ月の闘病の最後の2ヶ月はホスピスでした。
身近で見ていてそんなに悪くなかったです。
静かで綺麗な最後の2ヶ月でした。
妻に下の世話を受けることもなく。
チューブにつながれることもなく、
個室で完全看護で至れり尽くせりでした。
もちろん体調は日々悪化していきましたが、痛み止めを少しづつ強めていき
最後は眠るように亡くなりました。
ガン保険に入っていたらホスピスも悪くないと思います。
(私はガン保険に入ってませんけど、)
義兄は良い死に方をしたと思いました。
妻は毎日見舞いに行き、食べられそうな食べ物を運びましたが、
そんなに病院で死ぬことが、悪いとか、不幸だとは思いません。
(義兄は家に帰った時に緊急時の不安を訴えました。)
宇崎竜童さんの死に様は理想的でしたが、医師と良好な関係を築けたのも、
本人と医師(柄本佑)が素晴らしいからです。
木遣りで葬られるなんて格好良過ぎです。
在宅で亡くなっても理想的に行かない場合も当然あると思います。
もう一つ勉強になったのは、
《救急車、在宅看取りの、夢を消す》
この言葉、しっかり肝に銘じて覚えておきます。
枯れる死
柄本佑はいい!
痛い死に方も出てきます。
目黒シネマにて、『けったいな町医者』(長尾和宏先生本人出演)との二本立て。
宇崎竜童さんがひたすらチャーミングでした。
川柳がうまい。あとから高橋伴明監督のインタビューを拝見したのですが、この川柳にこの映画で伝えたい思いを込めていたそうです。「こういう死に方をしたい」という監督自身の思いも根底にあるそうです。
言葉の輝きぶりに、奥さまの阿木 燿子さんも協力してるのかしら?と妄想してたけど違いました。
柄本祐さんのダメ医者っぷり、上手でした。
あのダメさ加減から改心して成長していくのは、ドラマならではかな…とも思いますが、何かのきっかけで人生が大きく変わるってことはあると思います。
前半の典型的に辛い介護。
坂井真紀さん演じる娘が、父に対してとにかく献身的。なかなか身内でもあそこまでできないのでは…旦那さんも協力的だし、かなりの優良家族なはず。
なるべく痛くなくという願いも叶わず、本人も家族も心身共にボロボロに憔悴してしまう。
どれだけの人がこういう状況に置かれているのかと思うと、居た堪れないです。
実際に苦労なさった経験がある方には辛いシーンかもしれません。壮絶な演技でした。
この映画をどう受け止めて、どう変えていくのか…現場は今でも現在進行中なのですよね。。
・・・・・
ここからは超個人的な蛇足レビューなんですが、先月『眠らない街・新宿鮫』(真田広之主演 1993)を観たばかりで、この作品にも奥田瑛二さん、余貴美子さん、田中美奈子さんも出ていて、まさか真田さんは出ないだろ〜と思ったら、役名で「サナダさん」が登場してました。
なんでしょう、こう言う、なんの役にも立たないシンクロニシティ。みなさまの30年前のお姿と、役のギャップも個人的に楽しんでいました。新宿鮫の時の奥田さんの怪演もオススメです。
そういえば、奥田さんの奥様の安藤和津さん(柄本さんのお義母さまですね)に、東京オペラシティで道を聞かれたこともあったな…
あと、ダウンタウンブギウギバンドといえば、15年以上前に、ギタリストの和田静夫さんのお店の外装のことで少し携わりまして、お店がオープンの際は宇崎竜童さんから花輪が届いていたのを思い出しました。
数年後、その静夫さんと、佐世保の山の公園の展望台でバッタリ出会ったのですが、スタッフらしき人たちと大勢でいらしたのと、本人か定かでないので恐縮して声を掛けられず。。
あとからネットで調べたら、長崎ライブの情報が出ていました。
まさか、あんなタイミングであんな場所でお会いするなんて、ひとこと声を掛けておけばよかったなぁ、と後悔しています。
そこから、やった後悔よりやらぬ後悔、を信条?にするようになりました。
映画って、こういう人生の棚卸しみたいなことが出来るのも楽しいなぁー。
カルテじゃなく本人を見ろ
原作未読
監督と脚本は『光の雨』の高橋伴明
在宅医療の患者と家族に向き合う在宅医の話
基本的に淡々と進む人間ドラマ
下元の壮絶な芝居がずば抜けている
マスクを外して目をカッと開いたあの表情はバタリアンやエクソシストを凌駕するド迫力
彼に賞を授与しなきゃ日本アカデミーもブルーリボンも完全にモグリだね
おばあちゃんありがとうは泣けてきた
在宅医・河田仁に柄本佑
河田の先輩医師・長野浩平に奥田瑛二
訪問看護師・中井春菜に余貴美子
肺癌患者の敏夫の娘・井上智美に坂井真紀
智美の夫・直人に大西信満
智美の父で肺癌で亡くなる井上敏夫に下元史朗
末期の肺癌患者・本多彰に宇崎竜童
本多彰の妻・本多しぐれに大谷直子
河田の仕事に反対し離婚を決意する元妻涼子に梅舟惟永
河田に同行していた訪問看護師梅原に藤本泉
在宅医・伊坂唯に大西礼芳
食べる患者に田村泰二郎
見送る付き添いに芳野友美
呼吸器内科医髙山に諏訪太朗
医療ソーシャルワーカー白井に田中美奈子
下元史朗の死に演の壮絶。
ドキュメント版を先に見ました
理想の死に方
同じ「死」なのに、前半で描かれる死はただ苦しみばかりで尊厳も保てず、献身的な家族の心も踏みにじられる。自身の誤診の疑いを後悔し、後半、生まれ変わったような主人公の姿と、シャレがきいてて粋な夫婦の在宅医療が描かれる。この宇崎竜童大谷直子が、きりっとしてかっこいい。死にたいする恐怖が消えるわけではないが、やせ我慢とそれを支える医療の力は、思い残すことなく旅立てる理想の形を示している。
それぞれの登場人物の心情が、台詞ではなく画面を通して切々と伝わってくる。また、この医療を保つために医師の側にはただ事ではない負担がかかっていることも描かれ、綺麗事ではすまないということも語られる。
一つの理想の形を示し、なおかつ見てる側に様々なことを考えさせる、すばらしい映画だと思う。
葬儀の、大工仲間の送る歌のシーンは、その人の生き様がずしんときて、泣かされた。
『年老いた親を持つ人に見てほしい。』
こういうアプローチ、ありだ。
一言「涙は出ないけど、胸熱感満載」。
もっと「御涙頂戴物」「重い話」かな、と思ったんですが、違いました。
家で最後を迎えたい=在宅・訪問看護の話。
「尊厳死」という言葉は、患者さん=相手を尊く厳かに導く。
これがわかっていなかった若い医師の主人公(佑さん!)。
在宅の患者さんが亡くなって初めて、「もっとできることがあったのに」。
と後悔する場面。全然寄り添ってなかったんだよなあ。
その後先輩医師(奥田瑛二さん!)の姿を見て、少しずつ学んでいく。
先輩らしい経験から出るアドバイスが、効いてました。
随所に「患者さんからたくさんのことを学ぶ=医師を育てる」箇所が。
胸に染みました。
後半患者さん(宇崎竜童さん!)と過ごした数ヶ月が、時にクスリと来る場面もあり。
限られた時間だったけど、どこか「ファミリー」って感じで、やっと寄り添えたね。
この宇崎竜童さんが、とってもロック&粋で助演男優賞物だわあ。
歳を重ねれば、家族の死を経験します。
そしていつか自分だって、死ぬ。
避けられないことだからこそ、最後はどうしたいのか。
そしてあとどれだけかはわからないけど。
自分に残されている日々を、毎日きちんと過ごさなきゃって思えた良作でした。
コロナ禍だからこそ
貴方の親がご健在なら見てみるべき映画
良い映画を見た。テーマは非常に重い。けれども笑うこともできる。ラストはボロボロ泣けた。
もう両親は鬼籍に入ってるので映画のようなことは無いと言いたいが、まだ義理の両親は健在している。もし義父母が癌などで、自宅で最後を迎えたいと言われたら果たして映画のような形で最後を迎えさせることは可能だろうか。見守る家族も大変だろうし、良い医者に巡り合えるかどうかは運次第だろう。そういう点からも考えさせられる映画だった。
だからといって重苦しい映画ではなく、笑わせながらエンドロールを迎えた。憧れるような死に方を見せてくれるその患者を演じてたのが、宇崎竜童さんだと知ったのはエンドロールの時だった。
自分の死に方を考えるきっかけになりました
在宅医療の実際を初めて知った。
もちろんこの映画で全てが分かるわけではないが、
入り口として知識を得られたのはありがたかった。
同時上映していた「けったいな町医者」を見逃したことが悔やまれる。
次のチャンスがあれば、ぜひ見てみよう。
入院にしても、在宅にしても、
いい医者に出会えるかが全てか。
ただベットで寝ているだけの病院より、
住み慣れた我が家の方がいいのは確か。
しかし、これには家族の協力かいる。
これが私には難しいので、私には在宅医療はできないだろう。
終末医療のいい施設があればいいのだけれど。
(と思って今調べたら独居でも在宅医療の可能性はあるらしい)
話は逸れたが、自分の死に方について
考えるきっかけになる映画でした。
それにしても在宅医療に関わる医療関係者は、
365日24時間仕事モードで、大変だなぁと思う。
それでも何か信念や確信があってやられているのだろう。
そもそも、主人公は最初は信念がなかったようだが、
なぜ在宅医療に関わったのだろう?
本を読めば書いてあるのかもしれない。
柄本佑さんが相変わらずステキで、
彼が出てれば間違いなしと思えてしまう。
義父子の対話がアットホーム
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