少女は夜明けに夢をみる
劇場公開日 2019年11月2日
解説
イランの少女更生施設を舞台に、強盗、殺人、薬物、売春といった罪を犯した少女たちに光をあて、第66回ベルリン国際映画祭アムネスティ国際映画賞を受賞したドキュメンタリー。クリスマス前、降り積もった雪で無邪気に雪合戦に興じる少女たち。彼女たちは高い塀に囲まれ、厳重な管理下におかれている更正施設で共同生活を送っている。虐待に耐えきれず父親を殺してしまった少女。叔父の性的虐待から逃げるために家出をし、生きていくために犯罪を繰り返す少女。幼くして母となり、夫に強要され、ドラッグの売人となった少女。どこにも居場所がなかった少女たちがなぜこの施設にやってきたか、その背景が彼女たち自身の言葉で静かに語られていく。監督はイランを代表するドキュメンタリー作家、メヘルダード・オスコウイ。
2016年製作/76分/イラン
原題:Royahaye dame sobh
配給:ノンデライコ
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2019年11月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
イランの少女更生施設、要するに少年院のような場所だと思うが、監督が7年かけて交渉して施設内で撮影したドキュメンタリー映画だ。画面に映る少女たちは屈託ない笑顔をカメラに向けている。しかし、聞けば相当に過酷な経験をしている。ここは罪を犯した少女が入る場所だが、彼女たちには生きるためには犯罪以外の道がなかったのだ。社会では居場所を持てなかった少女たちが、社会から隔離された施設の中で笑顔を見せる。社会の中で虐げられる存在だからこそ、社会から隔離されたこの施設は、皮肉にも少女たちにとって居心地のいい場所なのだ。出所が近づくとむしろ笑顔は消えていく。彼女たちにとって施設よりも社会の方が過酷なのだ。
少女たちが無邪気な笑顔を見せるこの映画には悲壮感はない。だが、彼女たちの取り巻く社会を思うとやるせなくなる。施設の少女たちにフォーカスすることで、イラン社会の不条理も間接的に映し出した見事なドキュメンタリーだ。
2020年2月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
英語タイトルは"Starless Dreaming"。「星なき夜に見る夢」あたりが直訳。少女達の口から語られる、重い、重い、重い話の連続に気は滅入るばかり。
娘に売春をさせた金でクスリを買う父親を持つ少女の言葉。私はゴミの中で育てられた少女。あなたの娘は愛情を注がれて育てられた。
大好きだった父親を殺した少女は言う。痛みが四方の壁から溢れて来る。一人では抱えきれない。この身体には入り切らない。
どんな時代であっても。如何なる境遇にあっても。ほんの少しの希望が有れば、人は生きて行ける。生きようと思う。塀の中で、彼女達は痛みを分け合い、絶望を共有することで孤独から救われ、何とか生きている。むしろ塀は、絶望から彼女達を守る防御壁な訳で。そこに希望は無い。夜空に、星なんか見えないよ。
釈放され外に出て行く少女達は、必ずしも幸せそうな顔をしていない事が悲しい。
夢は死ぬ事だと話していた少女は、家族の理解を得て愛情を取り戻して言う。夢は生きること。
星なき夜に、夢などない。私達は、誰かの星になれる者として生きて行かなくては、って思いました。
物凄く刺さってしまって。
良かった。とっっっっても!
2020年2月11日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
確かに罪、かもしれない。でもそうするしか生きられない、そんな事がある。
親には親の、彼女たちには彼女たちの、そうするしかない現実。
そんな現実は、私の日常にも確かに繋がっている。
2019年12月18日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
私は恐らく幸せだ。自分でお金を稼ぎ、食べるものには困らず、映画鑑賞を趣味にしている。嫌な事はあるけれど、生まれなければ良かったと思った事は一度もない。生きることは素晴らしいと言われれば、そうかなと思う。
しかし、私はスクリーン越しに映された少女達に、生きることは素晴らしいなんてもっともらしい事を言えるのだろうか?私が彼女達だったら、そんなもっともらしい事を言われた時に何を思うだろうか?
生まれながらにして暴力と貧困に晒される彼女達は、生まれる場所も環境も選べない。私が生まれてきて良かったと思うことが、単に運が良いだけなのだ。そして、彼女達を取り巻く悪い環境は、明らかにイランの経済に左右されている。イランの経済は、国際政治に左右されている。国際政治を動かしているのは、アメリカを中心とした先進国である。だから、彼女達の劣悪な環境は、紛れもなく先進国が作り出しているとも言える。
74年前の広島と長崎で丸焦げになって死んでいった子供達も、骨と皮だけになって餓死する虐待児も、売春するしか生きる術のない少女達も、地中海で溺れ死ぬシリアの子供達も、国家権力と金持ちの犠牲者だ。そう、全てが繋がっている。
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