「庵野さんが描きたかったものは描かれている」シン・ウルトラマン kildare1966さんの映画レビュー(感想・評価)
庵野さんが描きたかったものは描かれている
最初のウルトラマンの最終回を今、見直すと自分の記憶に残っていたものよりもチープな映像です。でもそれを見てワクワクしていた訳で、庵野さんが「自分もウルトラマンを描いてみたい。」と思ったなかで、描きたかったものを描き、その上で映画として成立しているだけで十分でしょう。
シン・ゴジラだって会議のシーンや登場人物の会話のシーンを描きたかったわけではなく、多分、東京駅周辺を火の海にした禍々しいゴジラの姿を描けただけで庵野さんは満足なんじゃないかな。在来線爆弾で倒れるゴジラの姿を描きたかったわけじゃないと思いますよ。それは映画として成立させるためのお約束です。他のシーンは映画として成立するためのオマケです。そのオマケすら面白かった。
この映画はコミケで売っている同人誌であって、それを製作者という大人として商業レベルにしている訳で、むしろ自分の欲求を満たしながらもきちんと東宝映画館で全国公開作品にしているだけでも素晴らしいと思いますよ。この映画でもオマケだけで十分に面白かったです。子供がこれを見た時に爆心地から立ち上がる銀色の巨人の姿に心を囚われて、いつか自分もウルトラマンを描いてみたいと思ってもらえればそれだけで十分じゃないですか?
子供の頃にウルトラマン映像に憧れたなかで、映画研で自らウルトラマンを演じて、プロになってここまで実績を十分に残してきたうえで自分がウルトラマンを映画にすることを任せてもらえるようになる。これだけでも奇跡です。エヴァですらこの時のために登ってきた階段のようにも思えます。日本の監督、脚本家のなかでウルトラマンを撮ることを許される人は他にいないですよ。
庵野さんの夢が叶って、私達がそれを見ても面白いという映画にしてくれたことを素直に喜んでもいいのでは?
円谷プロだって自社のアーカイブに残ることを承知のうえで庵野さんに任せたわけです。東宝だって全国の映画館の上映枠を与えたわけです。この作品は円谷プロ、東宝、カラーが共同で制作した映画です。いろんな、多くの人を関わったうえで、自分の夢を叶えたうえで商業映画に仕上げたんです。
あと、総監修ですから樋口監督の映像を切り貼りしたのは庵野さんです。自分が撮らないなかでも樋口さんに任せて、上げてきた映像を編集したわけです。樋口だからダメとかではなく、その前に庵野さんが納得出来ない映像だったら使っていないと思いますよ。自分が夢見た映画を樋口さんに監督を任せたんです。
庵野さんは試写会にすら出ない方です。庵野さんのなかではこの映画は終わっています。次回作のシン・仮面ライダーや噂にあるシン・ウルトラマン2に構想を練っているのでは?
あれがダメ、これがダメと今の時点で色々言うよりもDVDが出たら擦り切れるほど何度も観て、こんな仕掛けがあったのかと驚くほうが楽しめると思うのですが。