「お尋ね者が描く歴史的冤罪事件」オフィサー・アンド・スパイ bionさんの映画レビュー(感想・評価)
お尋ね者が描く歴史的冤罪事件
お尋ね者の身でありながら自由を満喫しているロマン・ポランスキー監督。この監督が、歴史的冤罪事件を描く。メタ的ブラックジョークなのか、新たな視点で人間の醜さを白日の下に晒すのか、興味は尽きない。
大衆桟敷の前で、軍籍を剥奪されるドレフュス大尉。軍人の象徴的なアイテムである軍帽、階級章、サーベルが次々と剥がされたり、折られたり、これ以上ない屈辱を受ける。
この冒頭のシーンだけで、1984年当時のフランス社会が持っていたユダヤ人への偏見と差別が、軍人・民間人ともに根深いものであることがわかる。構図も美術セットも素晴らしく、期待できる滑りだし。
ところが、それ以降は単調で緊迫感がないシーンが続いていくので目がショボショボする。文豪ゾラの裁判が始まるころになって、ようやく緊迫感が出てくる。証人尋問では、原告・被告ともに相手の弱点を抉る攻め方をして、とても見応えがある。
最後のドレフェスが放った最大級の皮肉は、地位も名声も得たポランスキー監督自身への自己批判と解釈したい。
が、ちょっと待てよ。真犯人のエステルアジはイギリスに逃亡して人生を全うしている。このことに触れてないし、エステルアジの生き方は誰かに似てない?
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りあのさんのコメント
2022年6月7日
なるほど、ありがとうございます。
ポランスキー監督をwikiで読んでみました。
母がアウシュビッツなどへ連行され殺されたり、自身は父と共に生き延びたが、アメリカに移り結婚してから人違いで奥さんを殺されたり、性的被害で訴えられたりと、なかなか壮絶ですね。
監督自身をモデルに映画作れそうですね。