「悉く…」異端の鳥 ケイさんの映画レビュー(感想・評価)
悉く…
クリックして本文を読む
同じ人が受けてる仕打ちなのかと、一つでも嫌だが、惨すぎる。しかも子供。リンチを受け、川に流され、カラスに頭を啄まれ、隣では目をえぐられ、ソ連に売られ、男に犯され、掃き溜めに投げられ、極寒の中、氷の下に落ち、女に慰み者にされ、正に生き地獄。途中、不謹慎だが、ここまでの不幸の連続で笑えてくるほど。人間の所業とは思えない。まるで悪魔だ。そして悪魔は悪魔を生み出しかねない。略奪者達が吊るされる場面では少年は笑みすら浮かべるようになり、本来あるべき人間としての感情が壊れてしまっている。孤児院にいれば平和なものの、いつしかその暮らしにも慣れず抜け出そうとし、銃で人を殺してしまうまでになる。夢であった実の親と再会を果たしても、涙すら流さない。親に疎開させたのはお前のためだったと言われても、想像を絶する体験をしてきた本人にとってみれば、無責任なことを言うなと感情が爆発する。父と共に母の元へ帰る途中、父の腕に刻まれた収容所での番号を見て、父たちも苦労していたことを知ったのか、窓に自分の名前を記す。そう、この映画、ラストに初めて少年の名前がわかる。そんなこと気にならなかったくらい、衝撃的なシーンの連続だったことを思い知る。実話ベースの話がいくつあるだろうか。すぐには、いや一生元の生活のようには暮らせない、普通の感情には戻れないかも知れないが、ラストシーンに一筋の光明が見えた。見てて苦しかったが、バッドエンドとならず良かった
コメントする