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“OP PICTURES+フェス2019”作品群の1作品。
平成の30年間を80分で振り返るという内容の作品で、3組のグループ(夫婦・フリーターの男・先輩後輩関係の女達)がそれぞれ昭和から令和に改元される迄の間で、数多ある流行や進化するテクノロジー、そして光と闇を時系列で紹介するような内容となっている。濡れ場が無ければ某公共放送のスペシャルでやるような作りになっているのではないだろうか。まぁ、実際は若い観客は殆どいないので、ノスタルジーを醸し出す大河エンタメである。
自分が特に共感性を感じたのは、フリーターの男。何の目標もなく、只時勢の上っ面だけを舐めていて、自分の妄想と思い込み、信条のみで塗り固めた薄っぺらさを、影で“テレクラ地蔵”なる仇名がつけられる様は、かなり自分に投影されているような錯覚を覚えてしまう。勿論、隣の芝生は青くみえるが実際はそれぞれが悩みを抱えつつ、それでも何とか生き残る為に必死な様が所々に表現されている。
ただ、今作品、とにかく性交シーンの冗長さがとてつもなくゲンナリする。AVではないから動きもモッサリだし、演出としてのリズムがユルいのである。こういうロングスパンで人生を語るような作品は、一人に絞らないと深みが表現できないと思うのだが、どうだろうか。群像劇、しかもモノローグの多用で説明口調の補助ばかりだと、結局ウワバミだけを掬い取っているような、観客が想像力を働かせる余地が与えて貰っていない感じがする。自分は観ていないが、他作品の『ちゃのまつかのま』が姉妹作品という位置づけということだが、時間軸と世界観が一緒の統合作品で、それを二つに分割して作られたようなイメージを持っているのだが、この姉妹作品をどなたか観た人がいたら、答えを教えて下さい。
それぞれの話に余り思い込みを負わさず、サラッとコンソメスープのように観せて、“平成”という時代の市囲の人達の右往左往を温く演出してみせたピンク映画クオリティの定番といった、好事家に取っては裏切らない内容なのだろうと思う。自分としてはもっと濃いポタージュが欲しいのだが…