「青春の過ごし方」アルプススタンドのはしの方 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
青春の過ごし方
脚本がとにかくいい。
それを映像に落とし込んで、鑑賞の機会を増やしてくれた監督に感謝したい。
まだ何者でもなく、何者にでもなれて、無遠慮に無作為にただただ前だけを向いていた季節。ぶち当たっては跳ね返され、転がりながら叫びながら、どれ程の傷を負ってようが走ってる内に治っていくような。そんな季節のあれやこれやが目一杯詰まってた。
同世代で観ると、毛恥ずかしさも抱くのだろうが、この年になると、その時抱いていた苦悩を掬い上げてもらえたような気にもなる。
トップランナーの目線ではなくて、傍観者の目線。
おそらくならば、大多数の人間が共有する視点でドラマは紡がれる。
脱落したわけじゃない。
負けたわけじゃない。
でも、自分はソコに立ててない。
そんな矛盾を解消する呪文ショウガナイジヤャナイ。
実際、この呪文を自発的に発っした覚えがない。
当時は、クソッタレチクショウガーって呪文を唱えてたように思う。その呪文の代わりに大人から教えてもらった呪文がショウガナイジャナイだったように思う。
勝者でも敗者でもなく、ただただ挑戦者だった季節が眩しくて仕方がない。
その当時、抱いていた葛藤が宝物のように思えてくる。
最後の演出も俺は好き。
追い上げはするものの試合には負ける。
勝者にも敗者にも次の試練は待ってはいるのだけれど、負けた事が結果ではないと思えた。
区切り、だ。
その季節、その時間の区切りがついた。
クソッタレな呪文を莫大に吐き出して、立ち上がるHPを稼げばいい。そして走り出せ。
出来る事って、実はそれしかない。
ラストの打球。
それがファールでもホームランでも、その一打はヤノが出した中間報告なのだろう。
安い言葉だとは思うけど「皆、頑張れ!」そんな言葉でこのレビューを締めたいと思う。