キューブリックに魅せられた男のレビュー・感想・評価
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キューブリック監督の専属アシスタントになった男
まず、キューブリック映画を観て、映画世界にこんなにもどっぷり浸かった男がいたとは!…という驚きと尊敬の念を抱く映画。
もともと俳優として活動していた男が映画『2001年宇宙の旅』や『時計じかけのオレンジ』を観て「この監督と仕事がしたい」と次作『バリー・リンドン』のオーディションを受けて出演することになるが、俳優としてよりもスタンリー・キューブリック監督の専属アシスタントとなって30年にわたってキューブリックのために身を粉にして働いた男=レオン・ヴィターリとキューブリックを描いたドキュメンタリー映画。
キューブリック監督作は(初期短編以外は)すべてスクリーン鑑賞しているので、『バリー・リンドン』も勿論スクリーン鑑賞して、本作公開時に話題となった「実際の室内ロウソクの炎を鮮明に捉えるカメラ」、整然とした兵士たち、当時の貴族の風景などなど印象的な映画だった。主演はライアン・オニールだったが、レオン・ヴィターリも出演。
この映画製作に関する関係者のインタビュー映像(先月亡くなったライアン・オニールも含む)と共に、レオン・ヴィターリ本人の発言も…。
更に、次回作『シャイニング』のダニー役オーディションにもレオンが行かなければ、あの少年にはならなかったかも知れない。
そして『フルメタル・ジャケット』もレオンがいなければ、あの罵詈雑言のハートマン軍曹は生まれなかった。
『アイズワイドシャット』でも……と記載したらキリがないほどキューブリック監督作に貢献した男の生きざまを垣間見られて良かった(^^)d
またキューブリック監督についても「へぇ~」と思わされるエピソードが楽しい。
初期短編以外の『恐怖と欲望』・『非情の罠』……の作品群を、また観たくなってしまった🤗
えげつないものを観てしまった
この映画を観るまで彼の存在を誰も知らないだろう。
キューブリック映画を支えてきた助監督の存在を。
またこの映画、構成が素晴らしくて、
ますレオンがスタンリーに憧れるところから描き、
その後、彼によって狂わされた人生、
最後には、レオンのような人間が何百万といるという事実を知ることになる。
エンドロールの大勢の人はレオンそのもの。
本当に衝撃的だった・・・。
こういう生き方をしてみたいな、でもこんな生き方してはいけないなと
舐めたことを思ってしまった。
というかレオンのような人は、もうそんな考え毛頭なくて、
キューブリックに出会ったときから衝動的に動いてるんだろうな。
エンドロールも秀逸でしたな…。
映画業界で働くすべての人に響くんじゃないでしょうか。
【妥協を許さない完璧主義者スタンリー・キューブリック監督に魅入られ、スタンリーの死後も彼の作品を見守り続ける稀有な男の物語。】
ー「バリー・リンドン」への出演をきっかけにスタンリー・キューブリック監督の専属アシスタントになった若手英国俳優レオン・ビターリのスタンリー愛に溢れた壮絶な生き方を描いたドキュメンタリー作品。ー
・作中語られる、本人や彼の子供たちの証言が凄い。14-16時間労働の日々。ほぼ休みなし。
1時期は体重が30キロにまで落ちたという。
子供たちと接する時間も限られ、時には玄関マットの上で2時間だけ眠ることも・・。
・だが、それ以上にレオンのスタンリーを敬愛する姿に魅入られる。映画会社との交渉。子役の人選(「シャイニング」のあの双子や、ダニー・ロイドも・・)にも関わる。
・「アイズ・ワイド・シャット」では、役者として劇中で演技しながら、スタンリーの右腕として、裏方で働くレオン。
・スタンリーの死後もその死を悼みつつ過酷な日々を懐かしそうに語るレオンの姿。そして、今や彼は、スタンリーの作品維持、発展には(4K作品製作)欠かせない人物になっている・・。
<それにしても、スタンリー・キューブリック監督は神経質で完璧主義でその気難しさばかりが巷間では話されてきたが、今作と「スタンリーが愛した男」を観ると、実は彼が、強力な磁石のように人を引き付ける魅力的な人物であったことが良く分かる。
そして、又、彼が映画製作に如何に命を懸けて取り組んでいたという事も。
その姿を間近で観た、レオンが当然のごとく、スタンリーに引きつけられていったことが良く分かるドキュメンタリー作品である。>
天才監督の右腕?いや、右腕のみならず、左腕、両脚、内臓・・・
前日に『愛された男』に感動して、もうこれは観ずにはいられない思いになっての鑑賞。エミリオは退職願が受理されたんだけど、こちらのレオン・ビターリ氏は監督が亡くなるまで働き通し、1日24時間、週7日という過酷な労働をやり遂げたのです。いや、完全に労働基準法違反ですがな・・・ダニー少年なんて1時間20分しか働かせてないというのに・・・
『シャイニング』のダニーをオーディションによってスカウトしたのもレオン。とにかく編集のみならず、キャスティングまで全てを任されるようになってからは、もう彼が直属の部下といった感じだったことがうかがえる。そもそも、俳優としてのオファーも断り、影の仕事であるアシスタントを選んだのか・・・映画作りの面白さ、スタンリーを神だと悟ったからに違いない。
キューブリック作品のフィルムもかなり使用され、レオン自身のフィルムも挿入され、2本のうち1本を選べと言われるなら、こちらを選ぶのが正解でしょう。作品の裏話だけじゃなく、フィルムメーカーとしてのスタッフがどのように対処していたとか、キューブリックの天才ぶりとスタッフの忠誠心の賜物だったことが描かれ、レオンの心の支えとなっていたこともわかるのだ。裏方に徹する仕事ぶりは彼の死後も続き、きちんと保管して後世に伝えることの重要さまでも訴えてくる。さらに、管理する仕事じゃ食っていけないから息子に経済的援助までしてもらうといった、それこそ人生を賭けてキューブリックを支えている心意気が気に入った。エンドロールの最後も「全てのフィルムメーカーに捧ぐ」といった感じでドーンとロゴがアップになるところが素敵でしたよ。
ファンだといろいろつらいなぁ
何がつらいってレオンの気持ちがわかっちゃうのがつらい。
聞きながら「あなたのおかげでT_T」「ありがとうToT」とかなっちゃうだけに。
誰かどうにかしてあげて〜。(で映画になったのかな。)
こんな生き方もあるんだな、と。
人生って、ほんと、色々だな
と思いました。
ちょっと、やつれてると言いますか、
かなり疲れて見えましたが。。。^^;
でも、本人が納得していることが
一番大切なのだと思います。
今や、唯一無二の大切なポジションで
キューブリック作品に携わられている意味でも
大切だと思うこと、ひとについて
一心で臨むことの大事さを
教わった気がします。
非情の罠
キューブリック監督は「時計じかけのオレンジ」以来のお気に入りだったが、「バリー・リンドン」でブリンドン卿を演じた役者に、その後こんな数奇な運命が訪れていたとはついぞ知らなかった。完全主義者の監督の創る作品は素晴らしいが、巻き込まれるスタッフやキャストはたまったもんじゃないのだろう。同作では荘園領主がイギリス軍を迎えるシーンだけで9日間連続で撮り直したとか。
そんなキューブリックも亡くなってしまった。若い頃好きだった監督や俳優が(仕方のないことなのだが)次々と鬼籍に入っていくのが淋しい。最後にヘンデルの「サラバンド」が流れるのが追悼にふさわしかった。
「シャイニング」の子役ダニー・ロイドの現在の姿がちょっと衝撃的。
全然面白くない
キューブリック映画の内実について、監督の右腕だった人物のレオンが、いろいろと具体的に語ってくれる作品かと期待して観に行った。
詳しいファンなら、マニアックな“小話”を楽しめるのかもしれない。
しかし、キューブリックの代表作は一通り観ている、という程度の自分には、期待に反して、全然面白くなかった。
例えば「フルメタル・ジャケット」の軍曹のキャスティングの経緯なんて聞かされたところで、何か面白いのか? そんなことは、ただの蘊蓄であって、映画の本質とは関係ないことだ。
レオン自身の口から直接出てくるのは、単なる思い出話のレベルだ。監督の右腕ならではの、制作“秘話”には乏しかった。
キューブリックが亡くなる直前になって、ようやく初めて出会った時のような、優しい態度で接してもらったと語るレオン。逆に言えば、人に言えない愛憎半ばする思いを、キューブリックに対して抱えていたはずである。
あるいは、編集室で死にたいと語るレオン。なぜレオンしか、キューブリック映画のきちんとした監修ができないのか。
例えば、そんなところにフォーカスすれば、マニアックな“小話”の羅列よりも、ずっと面白かったはず。
見方を変えれば本作品は、キューブリックは自分で何でもやってしまって、スタッフには“唯々諾々”と尽くしてくれる、“ワーカー”タイプだけが必要だったということを示唆するのかもしれない。
いずれにしても、「魅せられた男」と題して、レオンを前面に出しているが、レオンで映画1本作れるような状態ではない。
企画として無理があるように思う。
バリー・リンドンとFilmworker
スタンリー・キューブリック作品のバリー・リンドンの生涯は壮絶だ。
そして、バリー・リンドンを演じたレオンの生涯も…、自ら臨んだとはいえ壮絶だ。
キューブリック作品には逆説的アプローチが多い。
「時計じかけのオレンジ」のアレックスや、
「2001年宇宙の旅」のコンピュータHAL、
「シャイニング」でジャック・ニコルソンが演じたジャックも、
「フルメタルジャケット」でヘルメットにBorn to kill と書いていたジョーカーも軍曹ハートマンも、
彼ら(HALは人間ではないけど)の置かれた壮絶或いは違和感の強い状況を考えたら、ある意味最も人間的とは言えないだろうか。
こうしたなか、バリー・リンドンは大河ドラマで、主人公のエゴ丸出しと言っても過言ではない生き方は、逆説的ではないにしろ、人間の本質を表しているように思う。
なぜ、レオンはバリー・リンドンをもって、役者を辞めようと考えたのか。
演じたバリー・リンドンの生涯が壮絶過ぎて、人生を生き切ったように感じたのだろうか。
キューブリック作品に関わり、そこで描かれる様々な登場人物の人間の本質に触れ、特異な人間の生涯を更に追体験しようとしたのだろうか。
いや、実は、スタンリー・キューブリックこそが特異で、予測不能だからこそ、キューブリック作品に関わり、スタンリー・キューブリックを同時に体験したいと考えたのではないだろうか。
でも、どうしてあんな過酷な生活に耐えられたのか、それは映画を観終わっても謎のままだ。
だが、その後の多くの作品がレオンなしには生まれなかったとすれば、やはり感謝しかない。
それほど、スタンリー・キューブリックの作品は興味深く面白い。
アイズ・ワイド・シャットの短い場面にレオンを起用したのは、健康を害していたスタンリー・キューブリックの感謝の気持ちの表れだったのかもしれない。
どのようにすれば納得するのかを最も良く理解していたレオンに対する。
バリー・リンドンの壮絶な生涯を演じ、壮絶なスタンリー・キューブリックの右腕として生きる。
昨年IMAXで観た、2001年宇宙の旅のリマスター版にもレオンが関わっていたのだろうか。
映像リマスターの技術も日進月歩であるだろうから、長生きして、貴重な映像を後世に伝えて欲しいと心から思う。
自らをFilmworkerと名乗るレオンのプロフェッショナリズムに感謝だ。
師との出会い
自分が〝師匠〟と惚れ込んだ人のもとで働くことが出来ることはとても幸運なことだと思います。惚れ込んだから過酷な状況にも耐えられるし、ある種の達成感も味わえる。
バリー・リンドンとシャイニングとフルメタル・ジャケットが久し振りに見たくなりました。
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