劇場公開日 2019年11月1日

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「天才監督の右腕?いや、右腕のみならず、左腕、両脚、内臓・・・」キューブリックに魅せられた男 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5天才監督の右腕?いや、右腕のみならず、左腕、両脚、内臓・・・

2020年2月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 前日に『愛された男』に感動して、もうこれは観ずにはいられない思いになっての鑑賞。エミリオは退職願が受理されたんだけど、こちらのレオン・ビターリ氏は監督が亡くなるまで働き通し、1日24時間、週7日という過酷な労働をやり遂げたのです。いや、完全に労働基準法違反ですがな・・・ダニー少年なんて1時間20分しか働かせてないというのに・・・

 『シャイニング』のダニーをオーディションによってスカウトしたのもレオン。とにかく編集のみならず、キャスティングまで全てを任されるようになってからは、もう彼が直属の部下といった感じだったことがうかがえる。そもそも、俳優としてのオファーも断り、影の仕事であるアシスタントを選んだのか・・・映画作りの面白さ、スタンリーを神だと悟ったからに違いない。

 キューブリック作品のフィルムもかなり使用され、レオン自身のフィルムも挿入され、2本のうち1本を選べと言われるなら、こちらを選ぶのが正解でしょう。作品の裏話だけじゃなく、フィルムメーカーとしてのスタッフがどのように対処していたとか、キューブリックの天才ぶりとスタッフの忠誠心の賜物だったことが描かれ、レオンの心の支えとなっていたこともわかるのだ。裏方に徹する仕事ぶりは彼の死後も続き、きちんと保管して後世に伝えることの重要さまでも訴えてくる。さらに、管理する仕事じゃ食っていけないから息子に経済的援助までしてもらうといった、それこそ人生を賭けてキューブリックを支えている心意気が気に入った。エンドロールの最後も「全てのフィルムメーカーに捧ぐ」といった感じでドーンとロゴがアップになるところが素敵でしたよ。

kossy