シェヘラザード
2018年製作/111分/フランス
原題または英題:Sheherazade
2018年製作/111分/フランス
原題または英題:Sheherazade
ロイ・アンダーソン新作「ホモ・サピエンスの涙」お気に入りシーンを和田ラジヲ、Noritake、大橋裕之らが描き下ろし
2020年11月11日ベネチア国際映画祭で銀獅子賞! ロイ・アンダーソン監督作「ホモ・サピエンスの涙」11月公開
2020年7月30日最初はよくある不良少年少女たちのドン底ストーリーかと思って観はじめた。
ザックはキレやすくて考えることが苦手で行動も短絡的で、コイツ絶対ろくな大人にならないなというタイプ。挙句売春婦の家に転がり込んでヒモ同然のポン引きになり下がる。シェラもそんな彼を叱咤するでも受け入れるでもなく、何となく居心地が良くて一緒にいる。ここまではめちゃくちゃよくある話で、ここからご都合主義的なハッピーエンドか、雰囲気で何となくフワッと終わるかの、どっちかになるかなと思って観てた。
ここで、シェラがレイプされたあたりから様子が変わる。それまで根無草みたいに意思も強さもなかったザックが、売春婦とバカにされても自分の大切なひとのために自らの罪を認め、仲間を裏切り、大勢の前でシェラを愛してると伝えるところでぐっと来てしまった。結果的にそのせいで視力は失うけど、やっと真面目に更生しようと思いはじめるところで終わる。まあ、ご都合主義的といえばそうなんだけど、一応ハッピーエンドで終わる。ただ、こういう展開でありがちな救世主やメンター的なキャラがおらず、主人公が自力で覚醒するところが良い。周りの人間は母親も含めクズばかりで、主人公ものっけから大丈夫かよと思ってしまうほど頭パッパラパーなのに、ちゃんと内省したのが素晴らしい(現実にそういうことが起こりうるかは別として)
主演2人が美男美女でないところ、イスラム系でおそらく貧しい家の出であるところ、2人の家や街並みが本当に汚いところ、BGMも殆ど無いところなどにリアリティがあった。街中でこういう人たちとすれ違ったことがあるような、そしてそういうとき彼らの暮らしや感情について考えたことなんてなかったような、と思い出したりした。
後先考えないで猪突猛進、頼り甲斐も無く自分本位で甘ったれな17才。
不良少年とは名ばかりで、単に真っ当に生きる気がないようにしか思えない。
が、ラストの彼は少しくたびれた表情の中に希望は見え隠れ、でも先に保証はなく彼自身の生き方にも保証が無いが、彼女には希望が見える。
そんな二人が、寄り添える明るい未来も垣間見れ。
変に大袈裟な恋愛モノや破滅するショッキングな描写は避けて、淡々と描いているのは好感が持てる。