劇場公開日 2019年9月27日

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WEEKEND ウィークエンド : 映画評論・批評

2019年9月10日更新

2019年9月27日よりYEBISU GARDEN CINEMAほかにてロードショー

共感をもって静かに見守る映画のスタンスに、監督らしい深いやさしさが香る

「誰かを本当に知ることの不可能さを探究してみた映画」――と、これは監督アンドリュー・ヘイがその長編映画第3作「さざなみ」を語った言葉(ガーディアン紙15年8月9日)。45年連れ添った夫の過去にまつわる一通の手紙が老妻の心に立てたさざなみ、そのとめどなさを緊密にみつめた快作が人に向けた真摯な眼差しは、11年、インディ作家の登竜門、米サウス・バイサウスウエスト映画祭で観客賞を受賞以来、カルト的人気を集めた彼の第2作「ウィークエンド」にも確かに感知できる。

公営プールの監視員ラッセルとアーティストをめざすグレン。土曜の朝、同じベッドでふたりは目覚める。前夜の出会いからここに至るまでの経緯(映画がこの部分を潔い省略の技で見せずに見せようとしている点も面白い)を自分の言葉で語ってと尻込みするラッセルにグレンは録音機を渡す。そうやって言葉にする作業が自分が何者かをあぶり出すのだと、皮肉屋で攻撃的なグレンはシャイなラッセルに迫る。

「本当の自分、人生で何をしたいのか、あるいは世界にどうやってフィットし、その世界に自分をいかに表明するのかを突きとめようとしている存在、この映画の根底にいるのはそんなふたりなんですね。彼らの向き合っているのはゲイであることの経験に関わるだけでなく誰にも覚えのある問題でしょう」(ニューヨーク・タイムズ11年9月25日)

実際、普遍的なそんな命題を映画は理屈っぽさのかけらもなく描いてみせる。週末に出会ったふたりの2日間。お喋りを続けるふたりの言葉がその人となりをあぶり出す。あるいは金曜の朝、身支度をするラッセルがとっておきのスニーカーを履こうかと箱をあけ、まあいいかとまたしまう。小さな逡巡にその夜に向けたその人のささやかな期待や始まる前に願望に蓋をしてしまうような性格が鮮やかに見て取れる。第4作「荒野にて」の居場所を求めて愛馬とデスパレートな旅を続ける孤独な少年とも通じるラッセルの世界から一歩引いたようなたたずまい。職場の同僚の猥談に腹立たしさを覚えつつも面と向かって非難することはしないひとりの在り方を裁くより、共感をもって静かに見守る映画のスタンスに監督の人柄もまた透けてみえる。そこに昨今の映画には稀有の好ましさ、親密さ、深いやさしさが香る。

二人が過ごしたつかの間の、しかし心に刺さる恋の週末に巻き込まれ、切ないけれど清々しくもあるような後味を噛みしめて、監督ヘイの今後にさらなる期待を募せている。

川口敦子

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