「健全なストーリーだったけど…」フリー・ガイ 哲也さんの映画レビュー(感想・評価)
健全なストーリーだったけど…
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仮想空間と現実世界を行き来する設定は、あまり目新しいものではない。が、主人公のゲームのキャラクター・ガイが、進化したAIプログラムによって自立した意思を持ち、仮想空間の中だけで人間社会に関与する、というのが現代的と言えるかも。
ガイが生きる仮想空間は、悪徳社長がミリーとキーズのプログラムを盗んで制作した、人の命や物を奪って得点を稼ぐ趣味の悪いゲーム・フリーシティ。ガイたち背景キャラたちは、その略奪に何も感じることはない。(現実社会ではキーズも悪徳社長の会社で冴えない仕事をこなしている。)
しかし、あるきっかけでガイは自分の意思に目覚め、自分の境遇に疑問を持ち、自分の住む環境を変えようと努力を始める。典型的な成長物語なのだが、それを可能にしたのは、優れたAIプログラムを作ったミリーとキーズだ。(そしてガイの趣味性格は、キーズの心情が投影されている)盗まれた証拠を掴もうと、ミリーはゲームプレイヤーとしてフリーシティに潜入しガイと出会い協力する。
自分はゲームをやらないが、今や老若男女が、日々ゲームに没頭し現実と仮想の空間を行き来している。この映画の登場人物の感覚を当たり前に理解する人が、今は多いのかもしれない。
象徴的なのは、物語の最後の方でガイがミリーに示唆を与える場面。自律的に進化した仮想空間の存在が、生身の人間の感情を動かす。将棋の世界ではAIが従来の戦術を全く変えるような変化をもたらしていると聞く。人間の感情にも大きな影響を与える時代が、もう到来しているのだろうか?
ストーリー自体は健全な勧善懲悪でスカッとするものだったが、そう考えると不思議な想いも…
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