「予算があっても本次第・・」ジェミニマン odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
予算があっても本次第・・
ハイフレーム・レート3D撮影とかCGによる若返り本人との競演とか技術的に凝ったことは分かるがだからどうなの?といった印象。当初ディズニーが映画化しようとしたがCG技術が未熟で見送ったとか多くの俳優、監督に逃げられたとか難産だったようだ。
確かに技術や予算でハードルが高いのはあるだろうが問題は企画そのものでしょう。仲間内の陰謀で狙われるエージェントものなんて掃いて捨てるほど作られているし、クローン問題を絡めて倫理性を問う社会派サスペンス風というのも一般受けは難しいと読んだのでしょう。
確かに自分のクローンに狙われるなんて設定は突飛だが、クローンを過大評価しすぎでしょう。アインシュタインのクローンを作っても全員がノーベル賞をとれるとは限りませんし同一種は免疫の多様性がないので全滅のリスクが高いのは自然の摂理です。有能な兵士のクローンを作って傭兵稼業に活用というのも子供じみた発想でしょう。ただ臓器移植など医療面での体細胞クローン技術は有用と見られているようで「アイランド(2005)」でもプロットに使われている。
アクションシーンは迫力十分、バイク・チェイスは見どころです、「ジョン・ウィック」のアクション・コーディネーター起用でガンフーならぬバイフー(バイク+カンフー)を考案、アクロバティックなバイク操作には恐れ入りました。
助けてくれる女性エージェントのダニー(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)、この手の相棒とは色恋絡みが相場だがそれもなく、品行方正、硬派路線。あまり必然性のないボディチェックの下着シーンは会社に言われたサービスショットなのでしょう、アン・リー監督はB級臭を嫌ったのでしょうサラッと流していましたね。CGでのウィル・スミスの若いクローンづくりには本人のギャラの2倍もかかったとか、主なモーション・キャプチャーはウィル・スミスが買って出たそうです、ですからクレジットは一人二役でした。
ジュニアがヘンリーに蜂毒を撃って体質を探ろうとしたシーンは不可解でした、アナフィラキシーショックは免疫暴走なので遺伝性はありますがクローンの確証にはなりませんよね、監督の奥さんは分子生物学の博士なのですから聞けばよかったのに・・。
興業的にはこけたようですが、アン・リー監督なら余計なところにお金を掛けなくても見応えのある作品が作れたでしょう。