シード 生命の糧

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シード 生命の糧

解説

野菜の種子が持つ多様性を探っていくドキュメンタリー。気候の変動や、多国籍企業による世界の種子市場独占などにより、20世紀だけで実に94%が消滅してしまった種子。遺伝子組換え作物が市場に登場したことから、農家が種子を保存し翌年にその種子を蒔くことが多くの国々で禁止されるようになった。「種子は私たちの子孫」とトウモロコシの種を守り続けるアメリカの先住民、北極圏に位置するスヴァーバル諸島で人類の終末に備えて最大300万種の貯蔵が可能な貯蔵庫への種子の保存といった種を守るために立ち上がった人たちや、バンダナ・シバ、ジェーン・グドールといった著名な活動家たちを追い、種子の多様性を守る方法を探っていく。

2016年製作/94分/アメリカ
原題:Seed: The Untold Story
配給:ユナイテッドピープル
劇場公開日:2019年6月29日

スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0いきすぎた資本主義と開発競争の果てに

2024年1月22日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

遺伝子組み替え作物を食べるとどうなるのかというより、種の多様性の喪失に焦点を当てた作品。

バイオ化学メーカー『モンサント』(今はバイエル)など大手が改変した種は、なんと、豚などの別の生命の遺伝子が使われているという。

南米や第三国の国々の農家は大手のセールスマンに騙されて、在来種の種と引き替えに育ちやすいGMOに手を出すが、それは罠で、メーカーに特許があるため種を採取することはできず、永遠に種を買わざるを得なくなる。そして作物が病気にならないよう、農薬も買わざるを得ない。企業は各国で政治献金も怠らず、種子の特許が受理されるよう手を回す。この利権の構造たるや。農薬の飛散により、薬害で苦しむハワイの人々の実状や土壌汚染も描かれていました。

この状況に危機を抱き、原種を守ろうとする世界各地の人々の活動に胸を打たれました。
世界各地の種子バンクは『ノアの箱船』そのもの。
(しかし戦争や紛争で、この種子バンクを攻撃するということも起きていたという事実に、愕然としました。民族の口にする物を根絶やしにしかねない恐ろしい行為!)

種の多様性が重要なのは、そもそもその種の絶滅を防ぐことと、一品種の作付けだと病気による全滅リスクが高まること、鳥の糞などで在来種を脅かし、生態系にも影響するから。

アイルランドのジャガイモ飢饉は、100万人もの餓死者を出し民族離散をもたらしましたが、ほぼ一品種のジャガイモしか育てておらず、それが病気になり不作になったことが原因。日本でもかつて大根は800種類ありましたが、今や都市部で流通してるのはほぼ青首大根だけではないでしょうか。

制約により自由な販売や製造ができなくなったのは、野菜だけではありません。日本では1971年に「塩業近代化臨時措置法」が成立し塩田が撤廃。

海外の塩をわざわざ輸入して日本で天日干しして国内製造として販売している時期がありました。現在もコストの面で、伯方の塩は中身はメキシコ産です。
このように複雑に利権が絡み合った不思議な世界に、私たちは生きているのだなと。

いきすぎた資本主義は生物のあり方も変えてしまいます。

果たして遺伝子組み替え作物を食べ続けた人類の数百年後はどのようになってるでしょうか。現在は壮大な人体実験のさなかにいるのだと思います。

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REX

5.0ヴァンダナ・シヴァは食料をコントロールしたければ、種をコントロールせよと。

2023年1月5日
PCから投稿

シンジェンタ、ベアー(Bayer)、アメリカの多国籍のバイオ化学メーカー、モンサント(現在バイエル)などの世界のたねのマーケットの2/3をコントロールしているんだね。モノポリだね。これらが、人間の生命、生態系などを変えていくんだね。

世界中の人々が、私たちの未来にとって種子が重要であることに気づいている。メキシコのオハカではとうもろこしが始まり、南北アメリカに広がっていったんだね。とうもろこしは4700年かけてアメリカの国境まで渡ってきた。どこでも生育しやすいから、どこの大陸でもあるんだね。プエブロの先住民ヘナさんがとうもろこし畑の中にいるが、このとうもろこしは明らかにNON GMOだ。アリゾナのホピ先住民の人の父親が、never, never, let go of the corn だって。とうもろこしがいかに大切かわかる。プエブロ先住民のお父さんが亡くなる前に、たくさんの種を握らせて、『これは命」だと。キンワ・アマラ、インカの失った穀物だと。私の食べている穀物だ。
Tyrone Hayes 教授が『何が正しいか言え」と。教育現場にいて、倫理観をもって、事実を言いなさいということだと思う。私はアイダホ州のシンジェンタにいったことがある。バイオ化学メーカーに興味があったから。厳重に鎖で囲われてるビル。何もないところに大きく立つビル。この中で何をしているのか不思議に思った。

ドキュメンタリーではモンサント反対行進の抗議活動には、 50 か国以上の大都市で何百万人もの人々が種子をバイオ科学メーカーがコントロールすることに反対した。米国のある州で遺伝子組み換え食品にラベルを付ける投票イニシアチブが提案されているが、現在可決されて、特別な緑?のマークが付けられた。しかし、最近はこの表示が不透明になっている。これは、最近の情報だが、(最近じゃないかも)数多くの食品にNON-GMO(遺伝子組み換えじゃない)やORGANIC (有機栽培)がつけられるようになった。でも、遺伝子組み換え食品のラベルが不透明化された。
1998年の事件でキャノラ農家のパーシーさんがモンサントに訴えられた。なぜかというと、隣のGMO農家のキャノラがパーシーさんのキヤノラに飛んで、パーシーさんがGMOキャノラの特許を盗んだと。(映画:Percy vs. Goliath)馬鹿らしいが裁判になった。

日本では、安倍首相の時、種子法の廃止されたが、日本の優良種子を守ることができなくなったので心配している。日本の種子バンクは英語のドキュメンタリーでは紹介されたのを見たことがないが、種子法を廃止によっての対策は?私の気になるのは企業による遺伝子組換え(GMO)種子やF1種子(ハイブリッド種)などがより土地を変え種子がコントロールされ流通することになることだ。問題意識がないとなんでも受け入れることができ、疑問視している人間が馬鹿に思えるかもしれないが食の安全性から考えると重要なことだ。

ヘンリーキッシンジャーが国をコントロールしたければ、オイルをコントロールせよ。人民をコントロールしたければ、食料をコントロールせよと。
ヴァンダナ・シヴァは食料をコントロールしたければ、種をコントロールせよと。

種子バンク(ケアリー・ファウラーさんが永久凍土層に開拓したSvalbard Global Seed Vault と言う名の各国各地から多種の種子を保存する)コミュニティ ガーデン、そして新世代の情熱的な若い農業従事者が、持続可能で主権のある種子を保存して、拡大するようになっている。

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Socialjustice

2.5情緒に訴えるのみで、理解の助けとなる情報に乏しい映画

2019年8月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

最近、「フード・インク」という映画を見たので、「種子洗浄」についてや、農家を訴えたモンサント社の訴訟の詳細など、いろいろ知りたくなった。
また、種子の多様性に関するサイエンスにも興味がわいたので、かなり期待して観た。

しかし、残念ながら本作は、“天然の種子は美しい”といった絵像美や(見栄えのする巨大な種子ばかり映していた)、有機栽培農家や食の安全に関するアクティビストのインタビューばかりで構成されている。
「種子」に特化したドキュメンタリーであるにもかかわらず、訴訟やサイエンスに関する説明は、ほぼ皆無なので、自分は今一つ内容に付いていくことができなかった。

むろん何より、前提となる知識を知らない自分が悪いのであろう。
しかし、一般向けの映画であるならば、やはり理解の助けとなる法律や科学的な背景の説明をきちんと行うべきではないだろうか?

映画「フード・インク」の方が、種子問題や食品の大企業による寡占支配に関しても、多角的で情報量の多いアプローチをしている。
それに対して本作は、遺伝子組み換え作物を攻撃するのみで、ひたすら観る者の情緒に訴えかけようとしているように思われる。
内容的には「フード・インク」よりも薄い。

起承転結のない同じような話が延々と続いて、なんだかアクティビストの“勧誘ビデオ”を見せられている気分になってしまった。

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Imperator

4.0農家から種を奪い、人類の生命と健康を弄ぶ

2019年7月18日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

 去年2018年にアメリカのモンサントがドイツの製薬会社バイエルに買収されたニュースを見て仰天した記憶がある。メルケル首相のドイツの会社がトランプのアメリカの会社、よりによって悪名高きモンサント社を買収する意味がわからなかったからだ。
 モンサントはかなり以前から食の安全の面で世界的に批判されている会社で、害虫駆除用の殺虫剤と、除草剤(ラウンドアップ)、遺伝子組み換え作物(GMO)を生産している。
 害虫に困っている農家は殺虫剤を使うし、雑草を除去したい農家は除草剤を使う。しかし除草剤を使うと作物自体も枯れてしまう恐れがある。そこでモンサントは除草剤に耐性のあるGMOを売りつける。どっちに転んでも損をしない商売である。こんな商売が可能になるためには、食の安全や品質を管理する法律を都合よく捻じ曲げる必要がある。モンサントの巨額の利益の裏側には政治家の暗躍が必須なのだ。
 今年2019年の5月には、モンサントは個人情報を違法に入手していたとフランス当局から疑われており、当局は予備捜査を開始した。ビデオゲームのバイオハザードに出てくる「アンブレラ社」並みの悪徳企業である。そしてアメリカの企業の大半は、こういった悪徳企業であり、政治家を動かして法律を変え、規制を変更させる。その影響力は諸外国にも及んでいる。言うまでもなくトランプはその手先である。ハンバーガーが好物というだけで食の安全など眼中にないことがわかる。
 一方でアメリカの保健衛生局は世界に例を見ないほど厳しい。飲食店の衛生点検を実施し、結果によってABCのランク付けをしてシールを貼っていく。もしCのシールが貼られたら大変だ。その飲食店は不衛生と見做されて客が寄り付かなくなる。しかし衛生の基準に遺伝子組換えに関する決めごとはない。また残留農薬についての決めごともない。
 要するにアメリカの行政はモンサント社に有利なようにしか動いていないのだ。どうしてなのかはみなが知るところで、いわゆるロビー活動であり、寄付金のためなのだ。今だけ、自分だけ、金だけという価値観が社会に蔓延すれば、庶民の健康被害など対岸の火事になる。

 日本はどうかというと、アメリカの事情とあまり違わない。ある製パン会社は中国でさえ食品への使用を禁止している臭素酸カリウムを平気で使用し、製品には残留しないという不確かな理由を盾に材料にも表記しない。これに協力したのは国民の健康を守るのが役割のはずの厚生労働省である。
 ある物質が存在するかどうかについての確からしさは検出装置のスペックに依存する。臭素酸カリウムが製品に残留しているかどうかは、検出限界までしか解らない。そこで厚労省は検出限界に近い値を基準に定め、それ以下をゼロと見做す決まりを作った。製パン会社が臭素酸カリウムは残留していないと主張する根拠となったのだ。食の安全など一顧だにしないやり口である。
 その製パン会社のライバル会社であるPascoの敷島パンは以前、ホームページのトップに臭素酸カリウム不使用を謳っていた。食品メーカーとして誠実な態度だと思う。しかしいまではその表記はトップページからは削除され、「こだわり」の中の「安全・安心の基本」の一項目として臭素酸カリウムの不使用を表示しているだけだ。どこからか何らかの圧力があった可能性は否定できない。
 利益のために政府官僚財界が結託して国民の税金を無駄遣いしたり人権を蹂躙したり健康を蔑ろにしたりする。もはや日常茶飯事である。そしてこの現象は日本とアメリカだけの話ではない。

 さて本作品は種の話である。種は植物の生命の源であると同時に食料でもある。米は稲の種子であり、芽を出して稲になる。ピーナツもコーヒーも全部種だ。分子生物学の福岡伸行さんによると生命とは自己複製のシステムである。種は生命そのものである。なにせそこから同じ種がたくさん実る。一粒の籾から千粒の米ができるとされている。種はそれほどのエネルギーを持っているのだ。そしてそれを食べた生物のエネルギーになる。
 その種が癌や白血病の原因になるとしたら、それは人類の生存の危機である。インドでたくさんの農家が自殺していることは知らなかった。日本で種子法が廃止されたのは昨年の4月のことだ。アメリカの農業大資本が日本の稲作に足を踏み込んでくるのは間違いない。誰がGMOの米を食べたいと思うか。
 核兵器を弄ぶ一方で、農家から種を奪い、人類の生命と健康を弄ぶ。そんな政治家を誕生させて政権を担わせているのは我々有権者である。選挙が機能しなければ民主主義は機能しない。この映画を見て暗澹たる気持ちになったのは当方だけではあるまい。

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耶馬英彦
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